鶏肉の生食は衛生基準なし 食中毒が毎年500件
2011/05/16 21:01更新
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焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件で、にわかにクローズアップされた「肉の生食」の危険性。形骸化した国の衛生基準の実態も浮かび上がったが、同じ生食でも「鶏肉」には基準すらない。食中毒が相次いでも「自己責任」で食べるしかない現状に、専門家は「鶏肉にも生食の基準を設けたほうがいい」と指摘している。(長谷川陽子)
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記事本文の続き 鶏の生肉を刺し身にした「鶏刺し」が郷土料理として親しまれている鹿児島県。生の鶏肉を「鶏刺し用」として販売している店も少なくない。
ただ、生肉をネット販売しているある鶏刺し専門店は、ホームページに「鶏の生食が原因の食中毒は、当店は責任を負いかねます」と告知している。
「昔は地元の人間しか食べなかったし、あたる人も少なかったけど、ネット販売は全国だから」と店の担当者。衛生面に気を配り処理しているが、まれに購入者から食中毒になったという連絡が来る。「そもそも生食は危ないもの。自分の判断で食べたということで納得してもらっている」
生の鶏肉による食中毒の多くは「カンピロバクター」という食中毒菌が原因。O(オー)157などの腸管出血性大腸菌に比べ毒性は弱く、死亡することはほとんどないが、感染すると発熱や下痢、嘔吐(おうと)などの症状を起こす。鶏の生食は近年全国に広がっており、それに伴って食中毒も毎年500件前後発生している。
ただ、厚生労働省が平成10年に通知した「生食用食肉の衛生基準」は、牛と馬のみが対象。鶏肉に基準はなく、飲食店が独自の判断で提供しているのが現状だ。
厚労省は「牛や馬と違い鶏は肉が小さく、表面を削り取る『トリミング』ができない」と、あくまでも加熱が前提と説明。「処理場の消毒を徹底しても汚染は一定の割合で出る」として生食用の基準作りにも消極的だ。ある厚労省幹部は「危険性は常に伝えている。あとは自己責任で食べてもらうしかない」と話す。
鹿児島県や宮崎県では、独自の衛生基準があるが、違反に罰則はない。宮崎県衛生管理課は「規制をかけると全て引っかかってしまう可能性もあり、生食をやめろということになってしまう。鶏の生肉で生計を立てている人も多い。厳しい規制には反発があるだろう」と明かす。
畜産生物科学安全研究所の中村政幸参与は、「鶏肉は新鮮でも菌が付着していることがある。基本的に生食は避けるべきだ」と指摘。そのうえで「鶏肉の生食は全国的に広がっており、罰則は設けないまでも何らかの生食用衛生基準があったほうがいい」と話している。
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