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諫早湾干拓訴訟:開門認められず、漁民「不当判決だ」

判決内容を報告する馬奈木弁護団長(右端)=長崎市で2011年6月27日、蒔田備憲撮影
判決内容を報告する馬奈木弁護団長(右端)=長崎市で2011年6月27日、蒔田備憲撮影

 「不当判決だ」「裁判所は被害の実態を理解してない」--。国営諫早湾干拓事業を巡る潮受け堤防の開門請求を退けた27日の長崎地裁判決。5年間の常時開門を命じた福岡高裁判決(確定)を真っ向から否定する内容に、原告の漁民からは一斉に非難し、開門反対派は歓迎の声を上げた。

 「信じられない。こんな判決を出すなら、長崎地裁なんて必要ない」。判決後に長崎市で開かれた集会で、諫早湾内で漁業を営む原告団長、松永秀則さん(57)=長崎県諫早市小長井町=は声を荒らげた。

 松永さんは、夏はアサリ養殖、冬は高級二枚貝のタイラギ漁で生計を立ててきた。しかし着工後、収入は激減。93年以降は収入の柱だったタイラギがほとんど収穫できず、アサリも赤潮による死滅が続いた。

 現在は妻のアルバイトや国、県の補助事業収入に頼るが、不安は尽きない。後を継ぐはずだった長男も転職を迫られた。

 3年前のこの日、佐賀地裁は漁業被害を認め、昨年12月には高裁判決が確定。「ようやく有明海の再生がかなう」と期待し、今回の裁判で早期開門の後押しになると考えていた。そのさなか、被害を否定する内容の判決を突き付けられた。

 「事業による悪影響を肌で感じている私たちがこれだけ被害を訴えてきたのに、どうして理解してくれないのか」。松永さんは体を震わせた。

 佐賀県太良町でタイラギ漁を営む原告団副団長、平方宣清さん(58)も判決にぼうぜんとした表情。佐賀地裁判決に従っていれば、猶予3年の期限で、この日には開門がかなっているはずだった。「有明海の環境は刻一刻と悪化している。これ以上、先延ばしは許されない。私たちがほしいのは金じゃない。宝の海を守ることなんだ」と強調した。

 一方、開門に反対する干拓地の入植者や後背地の住民は判決を歓迎した。長崎県島原市から入植し約30ヘクタールの畑でネギやダイコンを作っている松尾公春さん(54)は「いい判決。長崎地裁は本当の地域の声を聞いていたのだろう。判決のねじれは、高裁判決の上告を断念した菅直人首相の責任だ。今後も開門阻止に向けて声を上げていく」と話した。【蒔田備憲、古賀亮至】

毎日新聞 2011年6月27日 23時19分(最終更新 6月28日 2時22分)

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