最近のコンビニのレジ風景が変化してきました。一昔前のコンビニレジ横に並んでいる商品と言えば、「くしだんご」、「いちご大福」といった和菓子が中心でした。コンビニ店舗では売上を上げるため、日々経営努力をしているのですが、具体的な営業数値向上に向けては「客単価」向上を目指しています。お客さまに一品でも多く買ってもらいたい「買い上げ点数」アップをしたいと商売の努力を行っています。
お客さまがコンビニに入り、店内を動き(動線)目的の商品を選び・購入するため、動線をコントロールすることや、店内の商品展開を工夫することでお客さまに一品でも多く購入してもらうようにしています。店内をお客さまが回り終え、最後に必ず立ち寄る場所が「レジカウンター」となります。
このレジ待ち時間中に最後の一押しを行い買い上げ点数アップを目指しています。和菓子がレジの横にあるのも、そのようなお客さまニーズにマッチしやすい商品だったのです。「安いし、一つぐらい甘い物を買っても良いか……」というニーズです。
不況の影響なのか、過去の動きですと売価100円~150円の商品であれば問題なくプラス購入をしてもらえました。ところが、今年は100円を越えてしまうと急に販売数が減少してしまいます。「プラス購入しよう」というニーズには100円以上だと予算オーバー感が出てしまうようです。
このような不況期に景気良く伸びている商品の一つに「有楽製菓 ブラックサンダー」シリーズがあります。最近のレジ横にちょこんと陳列されている黒いチョコレート菓子です。売価も安くプラス購入しやすい商品のため、レジ横に陳列するには最適な商品となってきました。
コンビニ側としてもお客さまが抵抗感なくプラスで購入していただける商品として認知度が上がっているため、喜んでレジ横に展開しています。メーカー側も勢いに乗り、「ブラックサンダー」⇒「ビッグサンダー」⇒「チビサンダー」と次々新規商品を発売してきました。チロルチョコほど新規商品の開発スピードは速くありませんが、新規商品開発を促進し、コンビニにおける「ポケット菓子定番」の座を狙って動いていることが分かります。
ブラックサンダーの競合商品が「チロルチョコ」になります。チロルチョコの強みは新規商品の開発スピードにあり、お客さまが商品に飽きると、次々に新規商品を出していきコンビニのお客さまの特徴である「新規商品ニーズ」にマッチして一定のブランド力をえています。
対して、ブラックサンダーは「安くて。大きい」を強みとしています。不況前まではポケット菓子はチロルチョコの一人勝ちでしたが、不況になりブラックサンダーの強みが優位に働いてきているのです。
※この記事は、2008年07月30日~2009年12月18日まで日経ビジネスAssocieにて、連載していたものを加筆・修正し掲載しています。
●筆者プロフィール
笠井 清志(かさい・きよし)
船井総合研究所 戦略プロジェクト本部 次長 シニアコンサルタント。
1974年大阪府生まれ。複数の企業にてキャリアを磨き、船井総合研究所の経営コンサルタントとして従事する。コンビニ本部等の多店舗展開チェーン企業へのコンサルティングを中心に活動。クライアント先である「NEWDAYS」の平均日販を日本一に押し上げたことが話題になる。月刊コンビニ(商業界)にて連載を持つほか、著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。
(著:COBS ONLINE編集部)