ゲン達、スポーツクラブのメンバー達はみんなでジョギングをしていた。
そこに布一枚まとった男が高台からその様子を見下ろしている。
トオルとカオルはその怪しい風貌に止まって見入ってしまう。
その二人も猛に「コラー、わき見をするな!」などと促され通りすぎていくのだった。
ふと突然地響きが起こった。ゲンはMACシーバーで本部に連絡する。
「怪獣だ!」
百子「落ち着くのよ!」
ゲン「大きい子は小さい子を助けて走るんだ!」
一同は草むらの中に避難する。そこに颯爽とさっきの怪しい男が現れ、槍を地面に突き立て怪しい呪文を唱えながら踊り始めた。呆気にとられる一同。
ゲン「何をしてるんですか!?」
猛「早く逃げないと怪獣にやられちまいますよ!」
ゲン「一体何をしてるんですか!」
男「サイマ族の戦闘の踊りとお祈り」
男はそれを終えると槍を引き抜き、雄叫びを上げて怪獣に向かっていった。
ゲン「危ない!戻れ!」
怪獣と対峙する男はやがて踊り始める。それをみて何故か真似をし始めて踊る怪獣。
怪獣が踊りに夢中になっている隙に男は槍を投げる。槍は怪獣の鼻の穴に見事命中。
しかし男は怪獣の鼻息で吹き飛ばされてしまう。両者一歩も譲らぬ対決だ。
……と思ったら怪獣が地面に潜って退散してしまった。
それを草陰から見ていたゲン達。
ゲン「怪獣が逃げた」
百子「あの人がやっつけたのかしら」
ゲン「とにかくMAC本部に連絡しとこう」
男「報告だったら、もうしときましたぜ」
男はゲンの元に歩み寄り敬礼をした。とっさにそれに応えるゲン。
男「わいは……いやその、わたくしはMAC本部から派遣されてきよりました佐藤三郎です!……まっ、よろしゅうたのんますわ」
ゲン「よろしゅうって君…」
佐藤「任務はおおとりさんについて都内をパトロールすることだそうでっけど、
なんせ三日前なんかアフリカにおった田舎者やさかいに、まっ、足手まといになるでっしゃろうけど一生懸命やりますよってに」
ゲン「アフリカ?」
佐藤「はい、ライオンやチンパンジー相手に往生しました」
しかしこの佐藤三郎なる男、その怪しい風貌からはとてもMACの隊員とは思えない。
思わず猛は訝しげにきく。
猛「あのー、本当にMACの隊員ですか?」
佐藤「あっ、どこ行ってもそう言われますなぁ……ん、そや!」
佐藤は持っていた風呂敷からMACスーツを出す。
佐藤「ほれ見てみい!」
子供たちはそれに大興奮。
子供達「本物だ!本当にMACの隊員だ!」
その後、佐藤はライオンの尻尾を取り出して「これで頭をなでると男の子は強く、女の子はべっぴんさんになるんや」などと言って子供たちと戯れている。
その様子を見て思わず自分の頭を触る猛。
ゲンと佐藤はMACロディーでパトロールに向かう。
佐藤「先輩、ええ日和ですなぁ。やっぱりニッポンはよろしい」
ゲン「佐藤隊員、計器を見て下さい。怪獣の気配があれば右側の計器に出ますから」
佐藤「いやぁ、大丈夫大丈夫。もし怪獣が隠れてりゃあ計器より早くわいの鼻が探し当てますよってからなぁ」
ゲン「鼻?」
佐藤「ジャングルで暮らしてましたやろ。怪獣の気配ならにおいで一発ですわ」
などと言って佐藤は大きなあくびをして寝てしまう。
しばらく走った後、佐藤が目覚める。
佐藤「あら、先輩。もうこんな時間でっか。そろそろお昼にしましょう」
佐藤は風呂敷の中から大きなおむすびを出す。
佐藤「うまそうでっしゃろ?」
ゲン「ああ」
佐藤「ねぇ、あの丘で食べましょう」
ゲン「そうしましょうか」
佐藤「そうしましょう」
二人は丘の上で座っておむすびを食べていたのだが、ふとした拍子におむすびは転がって穴の中に落ちてしまう。
だが、穴の中から強風が吹いてきておむすびが戻ってくる。佐藤は喜んでおむすびを食べるが……。
佐藤「先輩、ちょっと。…この穴、何でっしゃろ?ちょっと調べてきますわ」
そういうが早く佐藤は穴の中に飛び込む。
ゲン「あっ、佐藤隊員!」
しかし、佐藤も風で押し戻されてしまう。
佐藤「なんじゃーっ!?……どこかに通じてるから風が吹いてくるんでしょうなぁ」
佐藤はそういってタバコを吸い始める。ゲンもその穴を覗き込んでいう。
ゲン「うーん、子供が落ちたりすると危ないなぁ……」
佐藤「MACの隊員としてはいつもはちゃんともみ消してから灰皿に捨てるんでっせ」
と、火のついたタバコを穴の中に投げ捨てる。
するとたまらずに怪獣が地面から出てきた。そう、あの穴は怪獣の鼻の穴だったのだ。
ゲン「くそおっ!やられてたまるか!」
MACガンで応戦するゲン。ヘルメットの通信機能でMACに出撃要請をする。
ゲン「MAC本部、MAC本部。こちらおおとり、怪獣が出現しました!」
街を破壊する怪獣。ゲンのMACロディーが駆けつけ応戦する。
やがてマッキー2号、3号もやって来たが怪獣には致命傷は与えられない。
佐藤「憎たらしい奴ですなぁ。わい、ちょっと怪獣をおどかしたりますわ」
ゲン「あっ、佐藤隊員、どこに行くんだ!?佐藤隊員!!」
怪獣を追ってきた二人は遊園地にたどり着いた。
そこで佐藤はアドバルーンに上り、それをタバコの火で爆発させ、怪獣を追い払うことに成功した。
スポーツクラブ前、佐藤はライオンのしっぽを取り出して子供たちと戯れている。
それを見ている猛は「僕もちょっとやってもらおうかな」などといって百子に笑われている。
その時、おおとりのMACシーバーに白川隊員から通信が。
ゲン「はい、こちらおおとり」
白川「B33地区に怪獣が現れました!」
ゲン「何!?」
怪獣は遊園地の近くのコンビナートで暴れまわっている。そこに駆けつけるマッキー2号、3号。
しかし、怪獣はガス球を爆弾代わりにして投げつけ、マッキー2号、3号は黒煙をあげて墜落。
隊員は間一髪、パラシュートで脱出することに成功した。
さらに怪獣は火のついた煙突を手に持ってアドバルーンを割る。
怪獣はさっきの自分の驚きを他人にも味あわせようと、片っ端からアドバルーンを破裂させてまわった。
ゲンと佐藤はマックロディーで駆けつける。
佐藤「あいつ、わいの真似をしおってホンマにー!」
至急その場で作戦を考えることに。
佐藤「おどかし作戦は真似されてもうて、もう使えんやろしなぁ」
ゲン「そうだ!あいつは面白いことなら何でも真似するんだ!」
佐藤「ええ!?」
走り出すゲン。佐藤は慌ててその後を追う。
佐藤「ちょ、ちょっと!ちょっとどこ行くんや!先輩!先輩!」
その先にあったのはアドバルーン用のガスボンベだった。
ゲン「こいつです」
佐藤「アドバルーンは、もう使えんでっしゃろ?」
ゲン「制服は伸縮自在!息を吸って自分の身体を膨らませているように見せかけるんです」
佐藤「わかった!イソップ物語のカエルでんなー?」
ゲン「そう!」
佐藤「わいがやりますわ、先輩はボンベの栓を開けとくんなはれ」
ゲン「よし」
佐藤はマックジャケットの右胸に管をさし入れる。
ゲン「いきますよ」
佐藤「ちょっと待ってくんなはれ。息を吸い込むところをはっきり見せたらなあきまへん」
佐藤はそう言ってタバコの火をつけてくわえた。
ゲン「いいですね?」
ボンベの栓を開けるゲン。佐藤の制服はまるで風船のように膨らんで浮き上がった。
佐藤「こりゃ怪獣!どんなもんじゃ!」
佐藤はタバコの煙を吹いては吸い込んで見せた。
怪獣はそれを見て真似して息を吸い込み始めた。
そうする事によってどんどん怪獣の身体が膨らんでゆく。
ゲン「そうだ!その調子だ!吸い込みすぎて腹をパンクさせてしまえ!」
案の定、怪獣は本当にパンクして腹に穴が開いてしまう。
今度は煙突を引っこ抜いてタバコを吸う真似をするが何しろただの黒煙、咳き込んでしまう。
その咳にあおられて佐藤に繋がっていた管が千切れてしまう。ガスが抜けて落下する佐藤。
それを見たゲンは変身する!「レオォォォォーーーッ!!!」
そして佐藤を間一髪両手で受け止める。
佐藤「へへへ……おおきに」佐藤を地上に下ろすと怪獣と向き合うレオ。
主題歌をバックに格闘で戦うレオ。投げ飛ばしたりキックしたり、さほど苦戦せずに怪獣を追い詰める。
そして、額のビームランプから電流のような光線を出し(ビームランプ光線)、怪獣の足に命中させ動きを止めた。
レオはおもむろに怪獣の尻尾を握り、息を吹き込むようなしぐさを見せる。怪獣はどんどん膨らみ、空に消えていった。
レオは怪獣に特殊ガスを吹き込んだ。そして宇宙の彼方に飛ばせてしまった。
スポーツクラブ前。
佐藤「その時早く、かの時遅く、レオはさっと手を出し、わいの身体をつかまえてこう言った『こりゃ三郎、お前はMACでは充分手柄を立てた。今度はヒマラヤに行って雪男を捕まえて来んかい』そんなわけでわいはこれから雪男探検に出発します」
そこにダン隊長が来て言う。
ダン「やはり行きますか」
佐藤「おっ、隊長!色々お世話になりました!」
ダン「そうか、残念だが仕方がない。雪男を捕まえたら、また帰ってきてくれたまえ」
佐藤「はい!行って来ます!」
そう言って歩き出す佐藤。しかしそれを呼び止める者が。
「佐藤さん!」それは猛だった。
猛「あのぉ……どうも僕は気の弱いところがありましてね…」
佐藤「はぁ?」
猛「その、つまり、しっぽを私に譲ってはいただけませんか?」
それをきいて佐藤は大爆笑。
しっぽを出すと「大事にしてや」と手渡す。しっぽをもらった猛は大喜び。
猛「ありがとう!もうこれさえあれば怪獣だって何だって怖くないぞー!」
ゲンはそのしっぽを見てダンに言う。
ゲン「あれ、本物のライオンのしっぽでしょうか?」
ダン「うーん……この間はイボイノシシのしっぽだなんて言ってたが…」
顔を見合わせて笑う二人。ダンは佐藤を見てしみじみと言う。
ダン「……しかし面白い人だ」
佐藤「ほな、みなさん、またなー!」
こうして皆に見送られながら冒険野郎は新たな旅に出るのだった。