遊園地。ゲンと百子、カオル、そしてトオル。
この日、ゲンは久しぶりの休日を楽しんでいた。
MAC隊員として緊張した毎日を送っている彼は、今一時休務によって平和な雰囲気に浸っていたのである。
トオルは一人先に行き、怪獣ショーを見ていた。
その中へ紛れているギロ星獣。トオルと目を合わせた。
星獣の目が光る。会話か催眠術かトオルと星獣は分かり合った。
ギロはトオルに向かってジェスチャーをする。
トオル「これ?はい」
トオルは手に持ったアイスをギロに渡す。ギロはおいしそうにそれを食べる。
トオル「うまいかい?君、何怪獣?あっ、僕トオル!君の名前は?」
ギロ「ギロ!ボクギロ!」
トオル「ふーん、ギロか……君、そんなにアイスクリーム好きなの」
そこにゲン達が来る。
百子はアイスクリームを食べているギロに気づく。
百子「おおとりさん、あれ……あれはぬいぐるみかしら?」
ゲン「………」
ゲンは宇宙人の超能力で見抜く。
ゲン「……怪獣だ!」
百子「トオルちゃん!離れなさい!」
ゲン「トオル危ないぞ、離れろ!」
ギロと分かり合ったトオルはギロの手を引いて走り出す。
トオル「ギロ、逃げよう!」
ゲン「トオル!待つんだ!」
ゲンはその辺の車に乗り込み、トオルとギロを追う。
ゲン「トオル!離れろー!」
トオル「おおとりさーん!何でもないよー!こいつはいい奴だよー!」
ゲン「トオル!離れるんだー!」
トオル「ダメだ!やめろーっ!」
ゲンはギロに向かって車を突っ込ませる。
ギロは角から泡を出して車を動かなくした。車から放り出されるゲン。
いつの間にか巨大化したギロ。
遊園地は大パニック。逃げる人達。
アナウンス「ただいま本物の怪獣が現れました!急いで避難して下さい!急いで下さい!」
ギロはゲンに泡で攻撃をしかけ、トオルを手にもつ。
カオル「お兄ちゃーん!」
ゲンは飛び上がって変身する!
ゲン「トオル!……レオォォォーーーッ!!!」
何故か手をクロスするだけで拳を前に出す動作は無く、変身時のSEもない。
主題歌インストゥルメンタルと共に登場し、格闘戦を挑むレオ。
遊園地での対決は何かファンタジック。
レオがとび蹴りをしようとしたら、ギロは瞬間移動でどこかへ消えてしまった。
MAC基地。ゲンとダン。
ダン「はっきりとした作戦もないままに変身する事は厳重に禁止してあるはずだ!」
ゲン「いやしかし、今度の事件はトオルの命が!」
ダン「その通り!トオルの命がかかっていた。それでお前、人質を救う事が出来たのか?
ゲン、この俺が変身を禁止したのはこういう事態を恐れていたからだ!お前が変身すれば怪獣も絶対に勝とうと思いはじめるんだ。
ゲン、怪獣の手でトオルが宇宙に連れ出されたらどうなるか、お前はそこまで考えたのか?」
ゲン「………」
マックロディーでパトロールするゲン。
マックシーバーに連絡が。
白川「星獣が現れました!場所はB地区105、昼間の遊園地です!各隊員は直ちに出動、各隊員は直ちに出動!」
深夜、メリーゴーランドで遊ぶ二人。その付近だけ、異世界のようだ。
MAC隊員達が走って来る。平山、青島、赤石、桃井。
平山「そこだっ!」
ダン「待てっ!」
そこにゲンもマックロディーで駆けつける。
ゲン「隊長!」
ダン「あれを見ろ」
ゲン「あれは……?」
ダン「ギロの世界にいる」
トオルはMACの姿を見つけると言う。
トオル「おーい、MACの皆さーん、こっちへきて一緒に遊びませんかー?」
ダン「行け、ゲン。トオル君を離すんだ」
ゲン「はい」
ゲンはトオルのもとに歩み寄っていく。
ダン「他の者は円形に解散。私が命令するまで攻撃するな」
隊員達「はい!」
ゲン「トオルー、わかるかい?おおとりだ。僕も仲間にいれてくれないかなー?」
トオル「おおとりさーん!おいでよー、楽しいよー。ギロはいいやつなんだー」
ゲン「よーし、分かった。今行くからなー。その木馬を一度とめてくれないかなー?」
ゲンはマックガンに手をかけながら言う。
トオル「ちょっと待っててー」
だんだんとメリーゴーランドが速度を落としてゆく。
ゲン「よし、今だ!」
ゲンをはじめとした、MAC隊員のマックガンの弾丸がギロを襲う。
トオル「やめろ!撃つのはやめてくれ!うわぁーっ!」
ギロは瞬間移動をして消え、トオルは木馬から落ちてしまう。ギロの世界も消えた。
ゲン「トオル!しっかりしろ!トオル!」
しかしトオルは目を覚まさない。
トオルの精神はギロの世界にいた。
トオル「わぁーっ、すっげぇー!お菓子の国だぁー!」
病院。トオルは目を覚まさない。ゲンとダンがそばにいる。
ゲン「トオル。質問に答えてくれ。昼間、星獣と君はどこに隠れていたんだ?」
トオル「ギロが笑っている……ふふふ……」
ゲン「……隊長、ギロ星獣の影響で脳がやられてしまったんじゃないでしょうか?」
ダン「脳波の異常はない。脈拍数値も正常だそうだ」
トオル「殺しちゃだめだ……ギロを殺しちゃだめだ……僕はギロと仲良く出来るんだよ……
ギロはただ、アイスクリームやお菓子が好きなだけなんだ……」
病室から出る二人。廊下にて。
ゲン「隊長……ギロ星獣は僕が変身しなければ何もしなかったし、何か特別な星獣じゃないでしょうか?」
ダン「いや、今にきっと破壊を始める。ギロ星獣も決して例外ではない。
奴の武器は二本の触手から出す白い液だ。その液を跳ね返すんだ!すぐ特訓に入れ!」
ゲン「しかし隊長!」
ダン「星獣の犠牲者がここにいるんだ。相手は必ずまたやってくる。
新しい犠牲者が出た時、お前は指をくわえて見ているのか?この地球は、お菓子で出来た夢の国ではないんだ!」
ゲン「………」
病室で寝ているトオル。
ギロ「トオルクーン!トオルクーン!」
トオル「……ギロの声だ。ギロが僕を呼んでいる。呼んでいるんだ」
トオルは目を覚ます。
トオル「おーい!僕だよー!ギロー!」
気密室。泡まみれになって攻略法を見出そうとしているゲン。
ダン「相手は液体だ。今のお前のスピードでは奴の吐く息には勝てん。
奴の息は一瞬で固まる。そうなったらお前は助からん。固まる前にはじき返さなけばならん。
回転するスピードを上げるには空気の抵抗を出来るだけ少なくする事だ」
ゲン「空気の抵抗……そうか、身体を出来るだけ丸くすればいいんですね?」
ダン「そうだ。円盤のように丸くする事だ。そして全身をバネにして遠心力で弾き飛ばすんだ!
いいか、星獣を倒す時間はほんの一瞬しかない。その一瞬が勝負だ」
ゲン「しかし隊長。そのギロ星獣はまだ地球を破壊していません」
ダン「落ち着け!星獣を倒す事だけ考えればいいんだ!」
ゲン「隊長……」
その時、部屋に百子が入ってくる。
百子「おおとりさん!トオルちゃんが病院からいなくなったんです!」
ゲン「何だって!?」
ダン「……ギロだ!奴に連れ出されたんだ」
トオル(おおとりさん、ギロは平和な怪獣です。地球の人間が攻撃しなければ決して暴れません。
いつまでも人間と仲良く出来るのです。今夜もギロが僕を呼んでいます。僕は今日からギロの仲間に入るつもりです)
MAC基地。ブザーが鳴り響く。
白川「こちらMAC本部。こちらMAC本部。レーダーが星獣をとらえました。場所は再びB地区105の遊園地です」
MACのテーマと共にマッキー2号とマッキー3号が基地から飛び立つ。
ダンのマックロディーも地を駆け巨大化した星獣を迎え撃つ。
マッキー2号と3号が夜の闇の中、星獣を攻撃する。
星獣に乗ったトオルは叫ぶ。
トオル「やめろー!ちくちょー!ギロが何をしたっていうんだー!」
白川「隊長!星獣が移動しました!場所はC地区302!激しく暴れています!まだトオル君は救出出来ません」
ダン「そうか、よし分かった!」
身体を丸める特訓中のゲン。
高く飛び上がり、猛回転をするゲン。すると泡が散ってシャボン玉になったのだ。
攻略法が出来た!
ゲンは体育館のような所に走っていき、変身する!「レオォォォーーーッ!!!」
(何故かセンターのジャージからMACスーツに着替えていて、かつ変身方法が手を高く上げるバージョン)
星獣の前に主題歌をBGMにしたレオが飛んできて格闘戦を挑む。
トオル「レオーっ!やめてくれー!レオーっ!」
ギロは泡で攻撃する。がマッキー3号の援護で何とか抜け出し反撃する。
その拍子にトオルはギロの身体から弾き飛ばされてしまうがレオがキャッチして地上におく。
そしてレオが高く飛び回転すると辺りにシャボン玉が舞う。
オルゴールをBGMにまるでお伽の世界のような雰囲気で戦いが続く。
両手をクロスするようにして角を折って星獣を倒すレオ。
星獣は泡と共に小さくなり息絶えた。
ギロの亡骸にすがるトオル。
そこにゲンやダン、カオルと百子、青島、赤石、平山、白川、桃井、そして大村が来る。
大村「トオル、泣くのはよせ。君だってMACの隊員の仕事の意味が分かってたはずじゃないか」
トオル「分からないよ!隊長は、どんな怪獣だって全部敵だと思ってるじゃないか!」
百子「トオルちゃん……」
トオル「ギロは地球じゃ何も悪い事はしなかった。攻撃をしたのはMACの方がいつも先だったじゃないか!僕はもうMACなんか要らない!レオも要らないよぉっ!!!」
大村「トオル、君は確かに星獣と仲良くできた。そして広い宇宙で平和に優しい怪獣がいる事を知った。それだけでも大発見じゃないか!我々大人もね、君から大事な事を教わったと思ってるんだよ」
トオル「だけど、だけどギロは死んじゃったじゃないか!やっぱり僕はギロと一緒に宇宙へ行けばよかったんだ!」
誰一人口を開くものはいなかった。
その時、ダンはゲンと目配せをして言った。
ダン「トオル君、私からのお願いだ。ギロを生き返らせたらMACを許してくれるか?」
トオル「えっ?生き返る!?本当にギロは生き返るの!?」
ダン「ただし一つだけ条件がある。たとえ生き返っても怪獣を地球に置く事は許されない。ギロ星獣には宇宙へ帰ってもらうが、いいか?」
ゲンは皆からひっそりと離れて崖の上から両手を広げて変身する。「レオォォォーーーッ!!!」
そして目からリング状の不思議な光線、リライブ光線を当てて星獣の角を再生させた。
オルゴールのネジを巻いたが如く、ギロ星獣は生き返った。
トオルと握手をすると星獣はレオの手の中に。
そして輝き、テレパシーでレオと会話(?)をする。
トオル「ギロが笑った……おーい!降りてこーい!おーい!もう一度僕と遊ぼ……」
ダン「トオル君!……私は君とギロ星獣の友情に打たれた。君は怪獣を愛し、怪獣もまた人間を愛する事を覚えた。トオル君、ギロにこの美しい気持ちを持って宇宙へ帰ってもらおうじゃないか」
百子「トオルちゃん、ギロにお別れを言うのよ」
トオル「………。ギロー!さようならー!また来てねー!ギロー!さようならー!」
ギロを手に乗せたレオは飛び立ち、空へ消えていった。