この日、城南スポーツセンターのメンバー達は相模原ピクニックランドへ行った。
しかし、父を失ったばかりのトオルは他の仲の良い親子を見るのが苦痛でさえある。
目的地に着いた一同はそれぞれ乗馬したり、縄跳びをしたり、バドミントンをしたりと楽しんでいた。
その中にはこんな親子連れもいた。
子供「お母さんありがとう!」
笑顔でカーネーションを渡す子供。
母親「あら、母の日は明後日よ?」
子供「だってカーネーションが枯れちゃうんだもん」
父親「はははっ、プレゼントの先渡しか」
その様子を影から見ているトオル。
カオルが近づいて呼んでも応えない。
その様子に気づく百子とゲンも来る。
百子「カオルちゃーん」
カオル「お姉ちゃん!」
ゲン「トオル君、向こうで縄跳びして遊ぼう」
百子「さぁ、私達も入りましょ。私はカオルちゃんのお母さんよ」
ゲン「よし!僕はトオル君のお父さんだ!」
だが、トオルはそこから動こうとしない。
ゲン「どうしたんだ…?」
トオル「……僕だけの?」
ゲン「ん?」
トオル「僕だけのお父さん?」
ゲン「……ああ、そうだよ。さぁ、行こう!」
その言葉を聞いてはじめてトオルの顔に笑顔が戻った。
これから遊ぼうとした時、マックシーバーが鳴った。
ゲン「はい、こちらおおとり!本部どうぞ!」
白川「エリア30に怪獣です!至急本部に向かって下さい!」
ダン「ゲン、すぐ戻るんだ!」
ゲン「了解!」
大村「おおとり君、すぐ行きなさい」
ゲン「はい……」
その様子を見てトオルは走り出す。
ゲン「トオルくーんっ!」
それを追うゲン、百子、カオル、大村。
百子「トオルちゃん……おおとりさんはね……」
トオル「分かってるよ!おおとりさんはMACの隊員!僕の父さんなんかじゃない!」
カオル「お兄ちゃん、無理言っちゃいけないわ」
トオル「………」
大村「あとは私に任せなさい。MACに急ぐんだ。さぁ!」
無理矢理に後ろ暗さを吹っ切るために、走り出すゲン。
ゲン(許してくれ!トオル君!)
その後姿にトオルの鋭い視線が刺さる。
トオル(お兄ちゃんのばかっ!お兄ちゃんの嘘つきっ!!!)
BGMを真紅の若獅子に飛び立つマッキー2号と3号。
マッキー2号にはダンと黒田隊員が、3号には赤石隊員が乗っている。
怪獣カネドラスが街で暴れている。マッキーは攻撃を開始する。
善戦するMACだが、怪獣は頭の刃を飛ばし、両方とも撃墜してしまう。
だが、怪獣も消耗したらしく空へ飛び立った。
MAC基地。
ダン「それは感傷だ。なるほどトオルに対するお前の気持ちはよく分かる。
しかしお前が遅れたために何百人ものトオルが出来たかもしれんのだ!」
ゲン「………」
その後ろで桃井、白川隊員は怪獣の行方を捜索していた。
桃井「敵影、分かりました!怪獣は月の裏側です!」
ダン「休憩してまた襲ってくるつもりだ。…聞いたとおり、再び怪獣は襲ってくる。
お前は見なかったが容易な相手ではない」
ゲン「………」
城南スポーツセンター。黒胴着のゲン。
その夜おおとりゲンは、ダンが考案し大村の作った奇妙な機械を相手に怪獣カネドラスを攻略すべく特訓を開始した。それはゲンにとって、孤独な真夜中の特訓であった。
特訓は夜通し続き、やがて日がのぼり子供達が来る時間帯になった。
指導をする猛、跳び箱を飛ぶ子供達。しかし、トオルは飛べない。
そんなトオルを複雑なまなざしで見つめるゲン。そこに杖の音が。
ダン「どうした?」
ゲン「隊長……」
ダン「こいつの攻略法はマスターできたか?」
首を横に振るゲン。
ゲン「隊長!こんな事して何になるんですか!」
ダン「何になる!?この美しい第二の故郷(ふるさと)地球を守ってみせると言った男の言葉か、それが!」
ゲン「隊長!僕がいうのは!……たった一人のみなしごに対して何もしてやれないのに地球だとか人類だとかいう……空しさの事なんです……」
トオルを見ながら言うゲン。跳び箱は飛べない。
猛「トオル君、飛べるまでやるんだ!」
ダンはそんなゲンに言い放つ。
ダン「屁理屈はいい。こんな機械一つ攻め炙れていてどうするんだ!?」
その時、ダンのマックシーバーが鳴る。
ダン「モロボシだ。よし分かった。すぐ戻る。……遅かったな。怪獣が月を発ったそうだ。30分後には地球に着く」
ゲン「僕も行きます!」
ダン「ここにいるんだ!身体で覚えこまなければならない事を口や頭を使って逃げ回るような事は足手まといだ!まずこの機械を攻略してみろ!」
ダンはその後来た大村に怪獣の事を話すと去っていった。
大村「何ですって!?おーいみんな!早く帰るんだ!昨日の怪獣がまたおそって来るみたいだぞー!」
帰る、というよりは逃げる子供達。だが、トオルは逃げようとしない。
猛「おい、トオル君、何やってるんだ!早く避難するんだ!」
トオル「出来るまで続けろって言ったでしょ!?」
カオル「お兄ちゃん、そんな事言ったらダメよ!お兄ちゃん!」
だが、トオルは妹の説得でさえ耳を貸そうとはしない。
ゲン「猛、トオルは任せろ。早く避難するんだ!」
カオルを抱えて避難する猛。
カオル「お兄ちゃん!逃げるのよ!お兄ちゃんのばかーっ!おにいちゃーん!」
二人がドアの向こうに消え、ゲンとトオルの長い特訓がはじまった。
曇空を飛ぶマッキー2号と3号。マッキー2号にはダンと青島隊員、3号機には赤石隊員。
ダン「奴の着地予想点はエリア30だ」
青島「エリア30……3号機に告ぐ!怪獣の着地予想点はスポーツセンター近く!」
赤石「了解!」
スポーツセンターで特訓する二人。
大村が来て二人に避難を促す。
大村「おい!おおとり君!怪獣がこの近くに来るそうだぞー!トオル君!早く避難して避難!おい!トオル!……二人とも命令だーっ!!」
だが、二人は逃げようとしない。
大村「ええいっ!どうして言う事聞いてくれないんだ、もうーっ!!!」
ゲン「ええええーーーいっ!!!」
その時、機械の頭の刃物をゲンの蹴りがへし折った!
飛んでゆく刃物。その先には大村が。
ゲン「危なーーーいっ!!!」
だが、次の瞬間。大村は両手で刃を受け止めていた。
ゲン「大村さん、それは!?」
大村「昔剣道やってたんだ。しかしおかしいなぁ、昔は何度稽古やっても取れなかったんだけども……これが真剣白羽取りって言うんだよ」
ゲン「真剣白羽取り……」
その時、外では怪獣とMACとの戦いが始まっていた。
逃げようとした大村は外を見て気づく。
スポーツセンター。
トオル「ばかやろーっ!俺なんか……俺なんか怪獣にやられて死んじまえばいいんだーっ!!」
ゲン「ばかぁっ!!!」
ゲンはトオルの顔をはたく。
瞳を見交わす二人。
そこに大村が戻ってくる。
大村「大変だー!トオルくーん!カオルちゃんが心配して戻ってきたぞー!」
トオル「ええっ!?」
急いで外に走り出すトオル。
怪獣とMACが戦う爆煙の中を走るトオルとカオル。そしてそれを追うゲンと大村。
マッキー3号の赤石がそれに気づく。
赤石「隊長!おおとり隊員が!」
ダン「攻撃中止!」
青島「了解!」
攻撃を止め、撤退してゆくMAC。
怪獣は炎を吐いてあたりを燃やし始める。大村は気絶してしまう。
トオルとカオルは炎の中、再会を果たす。
トオル「カオル、ごめんよ」
トオルはカオルと共に近くの車に逃げ込む。
ゲンは二人の危機に変身する。「レオォォォーーーッ!!!」
車を守るようにして戦うゲン。
ウルトラマンレオは車の中の幼いトオル、カオルの兄妹をその胸の中に庇いながら卑怯な怪獣カネドラスの攻撃に耐えた。がんばれレオ!がんばれトオル、カオル!
身を挺して自分達を庇うレオ。トオルは心の中に父の声を聞いた。
梅田父(トオルはお父さんの子だろ?)
トオル(うん……)
梅田父(ただそれだけかな。カオルのお兄さんじゃなかったのかなぁ。お父さんがいなくて寂しいからといってそれを忘れてはしないかな)
トオル(お父さん……)
梅田父(甘えたり、拗ねたりする前にカオルのお兄ちゃんだって事を思い出してみるんだよ)
トオル「お父さん……」
カオル「どうしたの?お兄ちゃん」
トオル「カオル、ごめんよ。もう心配しなくていいよ。お兄ちゃんがついてるからね」
トオルはレオに呼びかける。
トオル「ウルトラマンレオ……レオーッ!がんばれーっ!」
レオのカラータイマーは赤く点滅していたが立ち上がり、反撃を開始した。
主題歌をBGMに格闘戦が始まった。
追い詰められた怪獣は頭の刃を飛ばしてきたがレオはそれを避けた。
二度目は真剣白羽取りで刃を逆に目に突き刺す。
レオは飛び上がると手にエネルギーを集中させ赤く光らせた。
そして怪獣を手刀で真っ二つ、必殺のハンドスライザーだ!
怪獣を倒したレオは空に飛んでいった。
その後、トオルはゲンとカオルが見守る中、跳び箱の訓練をしていた。
ゲン「よーし!もう一息だ!」
カオル「お兄ちゃん、無理しちゃダメよ?」
トオル「平気さ!」
ゲン「トオル!頑張れよ!」
トオル「お兄ちゃん、捨て身でやれば何だって出来るってレオが教えてくれたって言うの。だから少し張り切りすぎているの。ごめんなさい」
ダンと大村も来て、皆の応援を受け、トオルは遂に飛ぶ事が出来たのだった。