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さいたま市80歳男性が発明した「夢のエネルギー製造装置」に迫る

産経新聞 6月26日(日)13時42分配信

さいたま市80歳男性が発明した「夢のエネルギー製造装置」に迫る
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重力と浮力のみを使って発電する装置を開発した阿久津一郎さん。「これがあれば将来、原発はいらなくなる」と話す=15日午後、さいたま市浦和区(写真:産経新聞)
 東日本大震災に伴う福島第1原発事故は、国民に従来のエネルギー政策の見直しを迫っている。直接の被災地ではない埼玉県でも、計画停電が行われたり、自治体がこぞって節電を呼びかけたりしており、電力危機と無関係ではいられない。7月の県知事選でもエネルギー政策のあり方が大きな争点になりそうだ。そんな中、さいたま市在住の男性が水と重力と浮力のみを駆使して電気を発生させる装置を発明し、特許を取ったという情報を得た。太陽光や風力などエコ発電なら現在でもあるが、もし本当なら、時間や天候にも左右されない“究極の自然エネルギー”ではないか。破壊された原子力発電所から飛んだ放射能に怯える日本人にとっての救世主になりうるかもしれない。(安岡一成)

 高校の時は数学や理科が苦手で文系に進んだ私。今回の取材には基礎的な知識が不足しているかもしれないと、以前に取材で知り合った都内の某大学理学部物理学科2年で力学や電磁力などを学ぶA君(20)に同行してもらった。

 今月15日、訪れたのはさいたま市浦和区の閑静な住宅街の中にある豪邸。装置を発明したという会社役員、阿久津一郎さん(80)が出迎えてくれた。リビングルームの壁には、平成22年10月15日付で岩井良行・特許庁長官のサインが入った特許証が額に入れて飾られていた。発明の名称は「球体循環装置」と書いてある。特許を取ったのは確かなようだ。

 でも、「球体循環装置」って一体何だろう…。2人はこう思いをめぐらせながら、強面の阿久津さんにちょっとビビりつつ、装置のある庭に案内してもらった。

 庭にあったのは、高さ2メートルほどのアクリルパイプが3本、容積約10リットルのアクリル製の箱に取り付けられた装置だ。写真とイラストを参照してほしい。左から、歯車と弁が2ついたもの、弁が4つついたもの、何もついていないものの3本だ。それぞれ、「落下管」、「上昇管」「蓄水管」と呼び、蓄水管と上昇管の上部には注水タンクが、落下管の歯車には自転車用くらいのライトがついている。

 「じゃ、始めるよ」

 阿久津さんの合図で、装置に水が注ぎ込まれた。分かりやすいように、水には入浴剤で黄緑色をつけている。まず、落下管の下の方にあるコックを閉め、箱と蓄水管、上昇管は水で満たす。この後、コックを開放すると、落下管には水は入ってこない。タンクからは一定量の水が注入され、箱に取り付けられた栓から放出されている。上昇管と落下管は上部でつながっている。

 ここで阿久津さんはパチンコ玉を中に入れた卓球に使うピンポン球を取り出した。重さは約23グラム。水に入れると、当然、浮力で水面に浮かぶ。阿久津さんはおもむろに落下管の歯車の上にある挿入口から、ピンポン球を20個、次々と投入した。

 落下した球は歯車を回して箱に落ちる。箱に取り付けた誘導板の働きで、球はダイレクトに上昇管に入った後、そのまま浮力で上にあがっていく。4つの逆止弁を経て球は水面にたまっていく。すると、球は上にたまった球を下から押し出していく。押し出された球は、そのまま落下管に入り、2つの弁を経て歯車に衝突、歯車を回して再び箱に入る。入った球はまた上昇管に吸い込まれ、上がっていく…。

 ガタン、と球が歯車に当たる音が一定間隔で繰り返される。上昇する球は、中に入っているパチンコ玉のため小さく震えている。20個の球が滞りなく同じ動きを繰り返している。

 装置に水を出し入れするのは水位を保つためで、その量は球20個の体積分の水という。弁をつけているのも同様に水位を保つため。1つの球が循環するのは約3分で、回った歯車は電力を生み、ライトは微弱ながらも、確かに灯っているのだ!

 「すげえ…」

 息をのんで球の動きを見ている私たち。時間を忘れたように眺めていたら、阿久津さんが不敵に微笑みかけてきた。手には5キロの鉄アレイを2個持っている。何をするのだろう、と思っていると、水を張った桶の中に、直径50センチほどのプラスチック製の半球を浮かべ、その中に鉄アレイを入れてみたら、半球がまだ浮いているのを見せてくれた。

 「浮力って結構すごいでしょ? あの装置はピンポン球だけど、球をこれくらい大きくて重さのあるものに変えて、装置も大きくしたらもっと大きな電力が得られるよ」

 A君に計算してもらったところ、この装置で生み出される電力は1ワットにも満たないという。しかし、装置をもっと大きくして球の大きさを変えると、理論上、電力はそれに比例して大きくなるそうだ。この後、装置は時おり球が詰まるくらいで、管をたたいてやればまた復活していた。

 球の動きに美しさを感じてまたじっと見ていると、「おかあさーん、あれなーに?」と庭の外から指をさす子供の声でふと我に返った。この装置にキャラクターの絵を描いて遊園地に置いておくだけで、からくり時計のように子供にとっては楽しめるものになるかもしれない。

 A君は「これ、高校2年生くらいの物理の学力があれば理解できる仕組みですよ。でもそんな簡単な知識でこんなこと思いつくなんて」と感心しきりのようだった。

 それにしてもなぜこんなものを思いついたのか、阿久津さんに尋ねてみた。

 「東京に行くと高いビルがあるでしょ。あれを眺めながらね、あのてっぺんから物を落とすとすごいエネルギーになると考えたんだ」

 阿久津さんはドクター中松氏と違って発明を本職としているわけではない。ただ以前から環境問題には深い関心があり、石油を使う火力発電にしても、危険と紙一重の原子力発電にしても、いずれはこれらに頼らない発電方法を開発しなければならないと感じていたという。

 物を落とせば確かにエネルギーは生まれる。しかし、落としたものをどうやって持ち上げるか。それに悩む日々だった。ある日、練習用の水に浮くゴルフボールを手にしたとき、ひらめいた。

 「これだ。浮力だ。水を張ったパイプの中ならそれが可能だ」

 その後、装置を作ってくれる工場を探し、700〜800万円を投じ、2年半の試行錯誤の末、開発に成功。「アクツ・エコ・サイクル」と命名した。

 昨年10月には特許を取得。「誰も同じような装置を考えた前例がないと国が認めてくれたときは飛び上がりそうなくらい嬉しかったよ」と振り返る。現在、米国や欧州などにも出願中だ。

 「この装置をね、たとえば店舗に設置したら雨水を使ってネオン用の電力に使える。山の中ではわき水を使って、登山道の灯りになるでしょ」と阿久津さん。「この装置をすべての送電鉄塔やビルを発電所に設置すれば将来、原子力発電はいらなくなるよ」と話していた。

 ピンポン球がともした小さな灯りが、大きな光となって私たちを照らしてくれる日が来るのだろうか。原発関連の暗いニュースばかりの中、少しだけ希望が見えた気がした。

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最終更新:6月26日(日)13時42分

産経新聞

 

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