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自己位相変調(SPM)の原理 - 非線形屈折率変化

光ファイバで起こる非線形効果の大部分は非線形屈折率変化である。非線形屈折率の変化により引き起こされる現象には、ファイバー中を光が伝播するときに自分自身の光強度により位相がシフトする自己位相変調(SPM: Self Phase Modulation)、別の光強度により位相がシフトする相互位相変調(XPM: Cross Phase Modulation)などがある。

非線形屈折率変化と自己位相変調

非線形屈折とはχ3が存在することから生じる屈折率の強度依存性のことであり、光カー効果とも呼ばれる。光カー効果によりファイバの屈折率は下式のように光の強度に比例して変化する。

n=\left( \omega , \left| E \right|^{2}  \right) =\frac{c \beta}{\omega}=n \left( \omega \right) + n_{2} \left| E \right| ^{2}

n(ω) はガラス固有の屈折率であり、|E|2はファイバ中の光の強度である. n2 は非線形屈折率係数と呼ばれる定数で、石英系光ファイバではn2 = 3.18 × 10−20[m2W] という決まった値を持つ。 上式を見ると、石英系光ファイバ中では強度が高い光に対して屈折率が大きくなるのがわかる(カー効果)。この光カー効果によりSPMが起こる。 SPMは光が光ファイバを伝播するとき、自分自身の強度に起因する屈折率変化により、位相がシフトしてしまう現象である。

ファイバ中を伝搬するパルス

ファイバ中を伝播するパルスを考える。前述した式の光カー効果により、光の強度が高いパルス中心では両裾に比べて屈折率が大きくなる。ファイバ中の光の伝播速度は真空中の光の速度c を用いてc/n で表されるため、パルスの中心にある成分は裾の成分に比べて相対的に高速に伝搬する。その結果パルスの前端では周波数が低下し、後端では周波数が高くなる。この様子を下図(a)に示す。

自己位相変調

図1 SPMの概念図

このように自己位相変調はパルスに新しい周波数成分を生成させ、パルスを広げる効果がある。また位相の観点から考えると、光の位相はΦ= ωt −βz で表されるので,瞬時角周波数ωは位相Φを時間微分して

\omega\left( t \right) = \frac{d\Phi }{dt}  =\omega_{0} - \frac{\omega_{0} n_{0}}{c}z\frac{\partial \left| E \right|^{2} }{\partial t}

で与えられる。この式の第2項がSPMの効果であり、パルスの前端部分では周波数が低くなり後端部分では周波数が高くなる。そしてその程度は光のエネルギーが高ければ高いほど大きくなることが分かる。上図(b)はこの式を図に示したものである。パルスの前端から後端にかけて周波数が変化することをチャープといい、特に周波数が高くなると正のチャープ、低くなると負のチャープを持つという。