いま私達が使っているのはアメリカから無償提供されたiRobot。 多くはネットで情報が出ているので、もう紹介しても問題なかろう。 無償提供されているのは本体とコントローラー関係の一式だけです。 私達のニーズに合わせて、カスタマイズ(改造)を施してあります。 カスタムパーツは有償です。 ちなみにグラップルの先端部分だけで約10万円だそうです。 2台を2社共同作業で行っています。 必ず2台で対となり、万一1台に何か問題があれば、もう1台でサポートするのです。 以前搭載カメラは2台と書きましたが、1台は5台、1台は4台搭載しています。 それぞれ搭載している装置も違います。 カメラを5台搭載している物には、線量計×4台を搭載しています。 カメラを4台搭載している物には、線量計×1台・ダストサンプラー(汚染濃度を測る)・赤外線サーモカメラ・ガス検知器(酸素濃度・有機ガス濃度・可燃性ガス濃度)を搭載しています。 本体重量は1台約40kg。 一人で何とか持てますが、基本的には二人で持ち運びします。 でも、何だカンだ、この有事の際は2社共同作業です。 この際、会社の垣根は関係有りません!(現場はね… バッテリーがフル充電だと、概ね4時間は余裕を持って作業が出来ます。 防水・防爆構造なので、有線にすれば水深3mまでは潜水出来るそうですが、今のところ潜水はさせていません。 本体内部や駆動部は防爆構造なのですが、アームやシャーシは金属なので、完全防爆仕様ではありませんから、可燃性ガス(水素)が検知されれば作業は中止です。 可燃性ガスは、そのガスの性質によって爆発限界値があるので、薄くても濃すぎても爆発しない…つまり、すぐには爆発しません。 要は燃焼を助長させる酸素との濃度割合によるのです。 GPSとジャイロシステムを搭載しており、東西南北の方位(実際には英語表示なのでNWSE表示)や本体の姿勢をPC画面に表示できます。 GPS電波が届く屋外で本体の電源を入れて建屋内に運び込みますが、建屋内をあっちこっち動き回っている内に、方位は狂ってしまいます。 方位はアテに出来ませんが、ジャイロによる姿勢表示は凄く役に立ちます。 ちょっとでもいずれかに斜めになれば、その傾斜の大きさに比例して姿勢が3DでPC画面に表示されます。 3Dと言っても、飛び出す3Dではなく… 仮にひっくり返れば、ひっくり返って表示されます。 また、各パーツ(装備)が、今どの様になっているのかも3Dで表示されています。 現在採用しているアメリカ製ロボットは、他にもう1台有りますが、大きくて狭い建屋内には入れないので、使用していません(QinetQ社製のTalon)。 あまり小さ過ぎても、重い防護扉(鉄扉)を開ける事が出来ないので、小さくて軽いのも意味が有りません。 鉄扉の重量に負けない自重が、ある程度は必要なのです。 瓦礫も研究室の様な整った物ではないので、クローラー(キャタピラ)が浮いて亀の子状態になってしまう事もあります。 そんな時は、フリッパー(補助クローラー)を下げて、四輪みたいにして脱出します。 その点に関しては、千葉工業大学で開発した国産ロボット(Quince)の方が走破性が良いとされています。 ただ、カスタムパーツの搭載性や、自重の面でどうなんでしょうね…。 搭載カメラの映像を見ながら操作します。 電力会社の社員は本店の方達なので、現場の構造を良く知りません。 閉ざされた場所ですので、現場慣れしていない人は、東西南北さえ見失ってしまいます。 しかし、私達オペレーター(私と放射線管理担当者を含めて2社で8〜10名)は、現場の構造は全て頭に入っています。 無数にある配管類も、だいたい場所を把握しています。 平面図だけで話をする時も、概ね現場の構造が頭に浮かびます。 電力会社の社員が、 「こういう感じの…」 と言っても、私達作業員は、 「ああ、○○ね」 と専門的に分かります。 (時に、それで臍を曲げられる事もある…) オペレーターの後輩は、4月23日に挙式予定でした。 私も彼が入社した時からのOJT担当だったので、呼ばれていたのですが…。 雑談の中でそれを知った電力会社社員(本店勤務者)は、驚いていました。 私達は私情は話しませんが、10名全員が警戒区域の中に家が有り、私の様に津波で家を流失した者もいます。 「津波で家が全壊・流失した」 「身内の者が行方不明で見付かっていない」 等と話せば、驚かれるかも知れませんね。 住んでいる地域が違うと、それだけ今回の震災に対する個人的な受け留め方が違うのです。 (だから、せめて命令口調はやめて欲しいんだけどな…) 搭載カメラも、線量が1,000mSv/h(1.0Sv/h)に達すると、チラチラと電気的ノイズが入ります。 放射線も電離作用が有りますからね。 これはカメラが拾っているのです。 日頃の仕事(炉内作業)で水中作業で用いる水中カメラでも同様のノイズが出るので、何ら珍しい事ではありませんし、驚く事もないですね。 当然、無線操縦の電波も減衰します。 PC画面に、通信状態を示すレベルが表示されています。 通信が途切れるとロボットが戻って来れなくなるので、安全サイドで作業をします(無理をしない)。 1,000mSv/h超えも、実は通常の業務外で偶然見付けたのです。 本来の業務が終了、ロボットを戻す際でした。 当日のオペだった後輩(4月23日に挙式予定だった後輩)が、 「SHさん、この先は何があるんですか?」 と聞くので、 「シャットダウンポンプ室だよ」 と教えてあげました。 シャットダウンポンプ…正式にはシャットダウンクーリングポンプ(通称SHCポンプ)です。 日本語で書けば、原子炉停止時冷却系。 1号機は原子炉の型式が古くて他号機とは違うので、残留熱除去系(RHR・RHRS)が無いのです。 SHCは、RHRと同じシステムです。 「バッテリー容量も有るし、電波状況も良いし、作業時間にも余裕が有るから、行ってみるか?せまいけどね…」 と私。 他のオペ達も、 「んだな。狭め〜けど、腕試しに行ってみ!」 と。 行ったら、 「SHさん、線量がどんどん上がっています。3桁になりました。700…800…900…1.2???。あ!単位が変わりました。ミリが消えました!」 と後輩が叫ぶ。 「何だ!?お化けがいんだかなぁ〜???」 と私。 他のオペ達も、 「何かあんだべか…???」 と。 そう、私達は高線量の事をお化けと昔っから呼ぶのです。 だって、目に見えないんですもん… 「あそこはお化けが居るから注意しろよ」 とか、 「お化けが移動した」 とか。 SHCポンプ室の鉄扉を開けましたが、本来は90°開くところが45°ぐらいしか開きません。 カメラで覗いてみると、何かが倒れている(落ちている?)ので、開かない様でした。 カメラの角度が入らず、何なのか???は良く見えませんでした。 無理をすればロボットは入れましたが、無理は禁物! バックした所で撮影した静止画がテレビに出た訳です。 SHCポンプ室の奥は、MSIV外弁室(タービン側に行っている主蒸気隔離弁の外弁室)がありますが、そこまではロボットが行けません。 29日も同じ場所を探査しましたが、線量は変わりませんでした。 見える範囲では、水漏れ等は見当たりませんでした。 そんな偶然から、お化け屋敷を見付けたんですよ ちなみに、テレビで公開される動画。 原画がYouTubeに出ていますね。 音声は消されていますが。 当社や、もう1社の人がアップしているとは考えられないので(事実上不可能です)、電力会社の方でアップしているのかなぁ〜??? 私もチラホラテレビに映っています。 足だけとか、全面マスクの一部とか… 撮影しているのは、電力会社ではなくて、もう1社のオペの方(作業員)です。 データーはそのまま電力会社へ渡していますが。 |
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