【高橋乗宣の日本経済一歩先の真相】
国民を「第2の戦後」に引っ張り込んだ小泉・竹中コンビ
【政治・経済】
2011年5月13日 掲載
●震災前から暮らしはどん底
大震災の発生以前から、日本は“第2の戦後”に突入していたらしい。厚労省は、2月末の時点で、生活保護受給者が200万人を突破していたとの見方を明らかにした。速報値は199万人近くだが、報告が間に合わなかった福島県の1万5000人前後を加えると、200万人の大台超えは確実なのだそうだ。これほど受給者が増えたのは、戦後の混乱期で受給者が多かった1952年以来、およそ60年ぶり。多くの国民が、大地震の影響を受ける前から、どん底の暮らしを強いられていた格好だ。
GDPでみれば、日本経済は、わずかながらであるが成長を続けている。しかし、一人一人の生活は、決して豊かになっていない。その元凶は、雇用が失われていることだ。新卒者の就職内定率は最低レベルで、大学を出ても安定的な生活を望めない人たちは急激に増えている。内閣府の調査によると、男性が結婚できるかどうか分岐点となる年収は300万円だ。派遣社員やアルバイトといった非正規雇用の身では、これを超える年収を得るのは難しいだろう。1人で食べていくのがやっとだし、そもそも仕事にありつけないケースだってめずらしくない。失業保険だけでは間に合わず、結局、生活保護に頼らざるを得なくなっているのだ。
経済政策の基本は、いかにこうした人たちを減らすかにある。国民の雇用をどれだけ満たしていけるか。それを第一に考えなければならないが、バブル経済の崩壊以降、日本の政治はまったく機能してこなかった。むしろ、大企業や富裕層を優遇し、雇用を置き去りにする政策を実行してきたのだ。
その代表は、小泉―竹中コンビである。彼らは、生活保護受給者200万人という貧困拡大社会に引っ張り込んだ張本人だ。聞こえのいい民営化と規制緩和を看板に掲げ、「自由競争が何より大事」と訴えた。何はともあれ市場に任せる。この無責任路線には、いかにして日本らしい豊かさを実現するかという視点はない。文化も伝統も違う米国の猿まねにより、日本にも格差社会を定着させたのだ。
おかげで、95年度に88万人だった生活保護受給者数はどんどん膨張し、いまでは毎月1、2万人のペースで増え続けている。震災の影響が上積みされるこれからは、さらに受給者が増えるだろう。「1に雇用、2に雇用」と強調した菅首相も、具体的な政策となると何もないのだから頼りない。一日も早く小泉―竹中路線を修正しなければ、この国は持たないのだ。
【高橋乗宣】
大震災の発生以前から、日本は“第2の戦後”に突入していたらしい。厚労省は、2月末の時点で、生活保護受給者が200万人を突破していたとの見方を明らかにした。速報値は199万人近くだが、報告が間に合わなかった福島県の1万5000人前後を加えると、200万人の大台超えは確実なのだそうだ。これほど受給者が増えたのは、戦後の混乱期で受給者が多かった1952年以来、およそ60年ぶり。多くの国民が、大地震の影響を受ける前から、どん底の暮らしを強いられていた格好だ。
GDPでみれば、日本経済は、わずかながらであるが成長を続けている。しかし、一人一人の生活は、決して豊かになっていない。その元凶は、雇用が失われていることだ。新卒者の就職内定率は最低レベルで、大学を出ても安定的な生活を望めない人たちは急激に増えている。内閣府の調査によると、男性が結婚できるかどうか分岐点となる年収は300万円だ。派遣社員やアルバイトといった非正規雇用の身では、これを超える年収を得るのは難しいだろう。1人で食べていくのがやっとだし、そもそも仕事にありつけないケースだってめずらしくない。失業保険だけでは間に合わず、結局、生活保護に頼らざるを得なくなっているのだ。
経済政策の基本は、いかにこうした人たちを減らすかにある。国民の雇用をどれだけ満たしていけるか。それを第一に考えなければならないが、バブル経済の崩壊以降、日本の政治はまったく機能してこなかった。むしろ、大企業や富裕層を優遇し、雇用を置き去りにする政策を実行してきたのだ。
その代表は、小泉―竹中コンビである。彼らは、生活保護受給者200万人という貧困拡大社会に引っ張り込んだ張本人だ。聞こえのいい民営化と規制緩和を看板に掲げ、「自由競争が何より大事」と訴えた。何はともあれ市場に任せる。この無責任路線には、いかにして日本らしい豊かさを実現するかという視点はない。文化も伝統も違う米国の猿まねにより、日本にも格差社会を定着させたのだ。
おかげで、95年度に88万人だった生活保護受給者数はどんどん膨張し、いまでは毎月1、2万人のペースで増え続けている。震災の影響が上積みされるこれからは、さらに受給者が増えるだろう。「1に雇用、2に雇用」と強調した菅首相も、具体的な政策となると何もないのだから頼りない。一日も早く小泉―竹中路線を修正しなければ、この国は持たないのだ。
【高橋乗宣】