2011年6月27日 2時32分 更新:6月27日 2時48分
身近な場所の放射線量を測定したり、放射性物質の特性を研究する活動を福島県立福島高校(福島市)の生徒9人が行っている。公表された放射線量の結果に一喜一憂するのではなく、自分たちの手で現状を知り、正確な知識を身につけることで、被ばくリスクの低減などに役立てようとしている。
26日午前9時。福島市中心街にある14階建てマンションで、同校独自のカリキュラム「探求クラス」に参加している2年生5人が教師の指導を受け、放射線量の測定を始めた。
長さ4メートルのさおの先に結びつけられた簡易放射線測定器のデータが、ウェブカメラを通してパソコンに表示される。マンション管理組合の許可を得て、各階の通路から、それぞれの高さの放射線量がどのような値を示すか計測した。これまでに、校庭で採取した土を真水や食塩水などに混ぜ、ろ過した後、自然に乾燥させると放射線量はどうなるかといった実験も行っている。
活動のきっかけは4月中旬、県が学校など県内全域で実施したモニタリング調査だった。同校は屋外活動制限値を下回ったが、いつ誰がどのように測ったのか分からないまま安全だとされたことに疑問を持った生徒たちが、自ら測ることを希望したという。
校内の放射線量を詳細に把握しようと5月、700カ所以上を測定し、放射線マップを作製。側溝の線量が高いことを早い段階で突き止め、除染などの対策に役立ててきた。
生徒が放射線量の測定に携わることについては批判もあるが、原尚志教諭(52)は「生徒が自分たちの生活の場で起きている状況を自ら把握することで線量の高い場所を避けるなど正しく行動できる」と指摘。2年生の佐藤萌さん(16)は「あらゆるケースを調べて地域の人たちにも知識を還元したい」と話した。
福島高校は、理系教育に重点を置く文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されており、研究成果は8月に開かれる「SSH生徒研究発表会」で披露する。【金寿英】