アリランやキムチを韓国で文化財に指定できないワケ(上)

無形文化財の指定に「技能保有者」が必要な法律がネックに

中国はアリランや韓服を「朝鮮族の文化」として文化遺産に指定

 宗廟祭礼楽、京畿民謡、民俗芸能のパンソリ、仮面劇の固城五広大、朝鮮王朝の宮中料理は韓国政府が指定した重要無形文化財だ。だが、韓民族を象徴する朝鮮民謡のアリラン、韓国人が昔から日常的に食べているキムチは無形文化財ではない。

 中国がこのほど、アリランを「朝鮮族の音楽」として自国の国家無形文化遺産に指定した。これを受け、文化財庁はようやく「韓国各地域のアリランをひとまとめにし、来年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に登録を申請する」と表明した。だが、遅きに失したとの指摘も多い。ユネスコ世界無形文化遺産への登録を申請するには、重要無形文化財、地方文化財など自国の文化財目録への登録が必須となるが、現時点ではユネスコ登録を申請する資格条件も満たしていない上に、中国がアリランを「先占」した形だ。朝鮮民謡のアリランは、なぜ韓国の重要無形文化財に指定されていないのか。

■無形文化財の指定には「技能保有者」が必要

 アリランのうち「公認」を受けているのは、1971年に地方文化財の江原道無形文化財第1号に指定された「旌善アリラン」のみ。文化財庁のキム・サムギ無形文化財課長は「現行の文化財保護法では、重要無形文化財を指定する際にその技能・芸能の保有者や保有団体を指定するよう定めている。しかし、アリランは保有者を特定できないため(指定が)不可能だった」と説明した。「アリランは全国民が愛する民謡であり、上手に歌う特定の人物がいるわけではない」ということだ。同様に、キムチも韓国を象徴する食品ではあるが「キムチの技能保有者」を特定できないため、無形文化財に指定できない状況だ。

 その一方で、技能の保有者や履修者を特定できる宗廟祭礼楽(重要無形文化財第1号)、京畿民謡(同第57号)、パンソリ(同第5号)、固城五広大(同大7号)などは重要無形文化財に指定されている。キムチは文化財ではないが、朝鮮王朝の宮中料理は重要無形文化財第38号で、韓福麗(ハン・ボクリョ)さんが宮中料理、鄭吉子(チョン・ギルジャ)さんが宮中餅菓の技能保有者に指定されている。このような「規定」のため、少数集団が技能を有しているものは文化財になる一方で、全国民が共有するものは文化財に指定できないという皮肉な状況となっている。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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