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きょうの社説 2011年6月27日
◎熱中症の季節 「無理な節電」は避けたい
梅雨明け前であるにもかかわらず、石川、富山では早くも真夏日が続いた。そろそろ熱
中症の患者が増えてくる時期だ。今年は電力不足対策として節電が広く呼び掛けられているだけに、警戒レベルを例年より引き上げなければならないだろう。節電となれば、真っ先に目を付けられるのが、消費電力が大きいエアコンだからである。熱中症の予防策の基本は、まず暑さを避けること、そしてこまめに水分を補給すること だ。真夏の日差しが降り注ぐ屋外ではもちろん、屋内でも、この2点には十分に配慮したい。とりわけ、体温調節機能が弱く、脱水症状に陥りやすいお年寄りや子どもを抱えている家庭では、節電と熱中症対策の無理のない両立を心掛ける必要があるだろう。 今夏は、志賀原発の早期再稼働が見込めない北陸でも、電力の供給余力が乏しくなると 予測されている。不測の大規模停電を回避するためには、工場やオフィスなど大口需要家だけではなく、家庭でも電力を意識した生活を送ることが不可欠だが、やみくもにエアコンを切り、蒸し風呂のような部屋で我慢して体調を崩す人が多発するといった事態は、誰も望まないはずだ。 求められているのは無理な節電ではなく、電力需要のピーク時に使用量を抑える「ピー クカット」の取り組みだ。たとえば、エアコンの設定温度をいつもより1、2度上げておき、遮光カーテンやすだれ、扇風機などを併用することによって、効率良く室内を冷やす。日中には洗濯機や掃除機を使うのをやめて、夜8時過ぎに移す。ピーク需要を減らして夜間にシフトする工夫をすることが重要である。 今夏は、電力会社に加え、県や市町村なども例年以上に節電の旗振りに力を注ぐことに なるだろうが、こうしたポイントをしっかりとアピールしてほしい。一人暮らしの高齢者らは、特に要注意である。厚生労働省の人口動態統計によると、記録的な猛暑に見舞われた昨年は、過去最多の1718人が熱中症で死亡している。電力を賢く利用して、昨年の二の舞は何としても防ぎたい。
◎相次ぐ外交課題 内向きの政治ばかりでは
国際情勢の変化に伴い、外交課題が次々と浮上している。国連の潘基文事務総長が、ス
ーダン南部での国連平和維持活動(PKO)に陸上自衛隊施設部隊の参加を期待している。また、オバマ米大統領はアフガニスタン駐留米軍の一部撤退計画を明らかにし、アフガン復興の国際支援を拡充することが求められているが、政府、国会は内政問題と菅直人首相の退陣をめぐる与野党対立に明け暮れており、これらの国際問題に目は向いていない。外交面からも新首相による新たな政権づくりが必要である。スーダン南部は7月に分離独立する。そこで再編成されるPKOに陸自施設部隊を派遣 できないかという国連の打診に対して、政府関係者はいまのところ、東日本大震災の復旧・復興対応や、現地の治安が不安定なことなどから、派遣に否定的な考えを示している。東北の被災地にはなお5万人以上の自衛隊員が出動しており、PKO派遣に積極的に対応できる状況でないことは分かる。それでも、内向きの政治をいつまでも続けていてよいわけでない。 南北の武力衝突が続くスーダンでは、先ごろ南北政府当局が係争地の油田地帯・アビエ イ地区を非武装化し、PKO部隊を受け入れることで正式に合意したと伝えられる。なお予断は許されないが、日本も治安状況をみながら、陸自部隊の派遣を前向きに検討してはどうか。各国の震災支援にこたえるためにも、国際貢献活動をおろそかにしてはなるまい。 スーダンの最大の貿易相手国である中国は北部政府を支援し、石油権益を獲得してきた が、スーダンの油田地帯は南部に集中しており、各国の資源外交の舞台であることも認識しておきたい。 一方、民主党政権は2009年に「5年で総額50億ドル」のアフガニスタン支援方針 を打ち出し、菅政権発足後の昨年夏には内閣官房にアフガン支援室を設置した。しかし、支援室は十分に機能しておらず、先に示された自衛隊医官の派遣構想も進展していない。民主党が強調する民生支援の在り方を再検討する必要もある。
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