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[28546] 【習作・ネタ】ほむらがディバイダーを持ちました【魔法少女まどか☆マギカ×??? ほむら魔改造】
Name: Mr.Pt◆70344895 ID:2d95f0e0
Date: 2011/06/25 18:53
前書き

 どうも、はじめてSSを書くものです。なんとなくほむらを魔改造してみたくなりましたので書いてしまいました。
 初めてSSを書きますので指摘とかあればお願いいたします。

 雑談とかではネタ多数にする予定。

2011/06/25 第0話投稿

 ではでは、はじまりはじまり。



[28546] 第0話
Name: Mr.Pt◆70344895 ID:2d95f0e0
Date: 2011/06/26 04:08
 時間を流れていた。時計の潮流とも見える空間。それは私が時間を巻き戻すたびに絶望して何としても次の希望へと繋げようとするために絶望と希望の表裏一体の時間の川と表現すべき流れる空間だった。そこを流れるのは当然、人ではありえない。流れるのは魂を魂の宝石という物体へと押し込められて人間でなくなってしまった長い黒髪の魔法少女の魂――。

――私は繰り返す。永遠の迷路に囚われても、必ずあなたを助けるために。
 またここかと思った。いつも通りかつ失敗し再び始めることを意味する嫌な場所。だが、なんの失敗をしたのか思い出すことができない。いつもと違うと思い、嫌な意味で慣れてしまったいつもどおりの流れの中、ありえない三つの物を目にした。それは少女と銃と本だった。
 今までここは魂とそれに伴う物、即ち自分以外のモノなど見たことは無かった。薄い髪の色をした少女はさしずめ美術の授業で見る有名な石像かのように美しく生きている鼓動こそは伝わるものの、一糸纏わぬ裸身の状態で目覚めぬかのように流れていた。もう一つの銃は自分の既存の知識とも全く違う銃だった。大口径のリボルバー拳銃にワイヤーカッターとサバイバルナイフを一体化させた大型のブレードを金具で強引に接合させたような歪な大型拳銃だった。製造ナンバーなのか刃には「997」と刻印されている。最後にあったのは灰色の本だ。分厚いハードカバーの上には銀十字の装飾が表裏共に付けられている。
 そのあまりにもちぐはぐな組み合わせに目を奪われていた。しかも魂だけの状態の自分とは違って確固とした実体を持っている“未知”だ。
 “未知”というものはおぼろげな記憶の中ではイレギュラーかつ利用するものだった。ならばこの“未知”を利用してやる。自分のたった一人の友達を救う希望への道筋として。
 そして私は少女を手に取った。
 少女は目をゆっくりと開く、それは琥珀色の瞳をしていた。
「あなたは……どうして私を見つけれたの?」
「それを言うならこちらも同じ。この時間潮流は私以外、通ったことはない。そのはずだった」
 お互いにとって、これはイレギュラーな事象なのだろう。でも、きっとこの出会いには意味がある。
「多分お互いの理由は全く関係ないんだろうね。でも、偶然というのは必然だと思う。あなたの名前は?」
「暁美……暁見ほむら」
 薄い髪の少女にほむらと名乗った少女はありえないと思う自分の心に驚愕した。もう誰にも頼らないと決めて、守りたかった少女以外には本心を決して露にすることは無かったはずの自分がだ。
「ほむら……ほむらって言うんだ。私はミリィ……ミリィ・シュトロゼック。どうしようもなく失敗続きだったからこのディバイダーと銀十字と一緒にここへと流された」
 『ディバイダー』、『銀十字』という言葉と同時に向けた視線の先にあるのは歪な銃と本。ただの銃と本ではないことは明らかだ。
「そう……一緒に行かない?」
「行くよ……ここで何もしないよりはずっといいと思う」
「じゃあ……決まりね。それらも一緒に持っていける?」
「持っていけるよ……でも、持って行くのだったらこれを扱うための誓約……あなたが人間じゃなく兵器になる必要になるけど……大丈夫?」
 兵器と聞いたが今更それがなんだ。この身は既に魂だけの存在、もうすぐ至る体を操縦するだけのただのリモコン同然なのだ。兵器も糞もない。受け入れてやる。
「ええ」
「私は……私と一緒に歩んでくれる人を探していた。あなたは一緒に歩んでくれる?」
 あと十分も経てば、この時間遡行は終わってしまう。その前に何かを決断する必要があった。これまで何度も失敗を続けた、その度に悲しみと絶望を目にした。今更人を一人一緒に連れて行くのがなんだ。だからどうした。私はこのミリィと共に歩んで彼女の未来を掴み取ってやる。
「ええ、歩むわ」
「じゃあ……しようか私との誓約。私と離れられなくなる毒にして力、そして世界を殺す猛毒」
 物騒な言葉を口にした。だが、そこにはあのインキュベーターにはない感情というものが明確にある。この少女はインキュベーターとは違う。利用価値じゃなく、ただ自分と共に歩む者としての誓約を望んでいるだということがわかった。猛毒と聞こえたがそれが何だ。今更この身は人間ではない魔法少女だ。リスクなんて受け入れてやる。
「じゃあ、誓約だね」
 そう言ったミリィは私と目を合わせた。肉体を伴っているのではなく、魂を観念的に表しているような精神体の状態のはずなのに目から情報の奔流が叩きつけられてくる。
――エ■リプ■ウ■ポン
――■クリ■スウィ■ス
――E■因■適合者
――ゼ■因子
 それに伴う痛みなのか血の涙が流れる。
「うっ……!」
 そしてミリィは苦痛にうめく私の手を取り、囁いた。
――誓約
 その声が聞こえると同時に精神体の内部が書き換えられるかのようにたぎっていく。体の中を何かがうごめき続け、マグマがたぎるように熱くなる。
「がっ……!」
 それの過程なのか、自分が……その本体であるソウルジェムが粒子状に分解されていくのが見えた。だが分解されても生きている。つまり魔法少女ではなくなったのだ。その代わりもっと別のモノへと自分が変貌していくのがわかる。ミリィから叩きつけられた情報でおぼろげにわかったこととして、おもむろに手を上げる。
「EC……ディバイダー」
 頭に刻まれていた言葉を呟き、ミリィの側にあったディバイダーがその右手に現れ、銀十字が側へと出現する。同時にそれまで魔法少女だったものから別のモノへと変貌したからか、セーラー服を改造したかのような紫色を帯びた魔法少女の服装ではなく、黒衣へと服装が切り替わる。
 それで驚いているのに注意を奪われていたからかミスを犯してしまった。十字架、いや……拘束台が視界の端に現れていたことに気づけなかった。
「は?」
 ようやく気がついた時には予想外の事態に思考停止してしまって思わずアホみたいな声を上げていた。
 その拘束台がミリィへと衝突し、その勢いのまま引き離されていった。
「どうして……こんな……」
「私、あなたを見つける!だから力に呑まれないで!!」
 時間潮流の彼方でミリィが叫ぶのが聞こえたと共に意識を失った。

 病室のベッドで“彼女”は目覚めた。
「……っ!」
 いつも通りの絶望を目にし、時間遡行でまた戻ってきたのかと内心毒づく。だが、違和感がある。違和感がある右手へと視線を向ける。“暁美ほむら”の右手には見慣れない銀色の腕輪があった。別にあの希望という釣り餌を出して少女たちを絶望に叩き落すインキュベーターやその同業とはさらに“契約した覚え”なんてない。死んでもあの地球外生命体どもとは関わりたくはない。そもそも奴らと二重の契約なんてできはしない。それが違和感だった。
「何?」
 一人ごちた時、“ほむら”の右手が銀色の腕輪を中心に内部から蠢いていた。あまりにもの異常な状況に思考が停止してしまう。普段だったら思考は停止しない。思考の停止は即座に死に繋がるような戦いをしてきたのだ。
 だが、あまりにも異質な光景に固まったままだった。
 蠢いた果てに蠢いた部分が銀色の腕輪を中心に肉塊として分離した。そして分離した肉塊は今まで闘い見てきた魔女……あの人間を家畜扱いする地球外生命体と契約をしてしまった自分のような魔法少女たちの絶望の成れの果ての怪物とは違う異形だった。
 一言で言うなら、脳みそらしき肉塊だ。それは脳みそを突き破るかのように骨が獣の爪の先端かのように飛び出ている異形だった。
「何?」
 改めて分離した肉塊があった右手をよく見てみる。先ほどまで肉が蠢いていた場所とは思えないほどに綺麗なままの腕だった。右腕にはめられていた腕輪が無くなっている。異形の跡に残るのが正常……その気味の悪さに戦慄した。
 肉塊を観察するが、それはふよふよと浮いているだけで魔女のように呪いを振りまいているわけでも殺意を抱いているわけでもない。むしろそれとは別の感情を感じる。希望の感情を抱いているように感じられた。こんな異形が、ありえないはずなのに。
 そんな思考を切り裂くかのように、突如として肉塊の側に銀十字の装飾を表紙と裏に装飾された黒い本と銀色の歪な大型銃剣が出現した。
『自己対滅との酷似症状あり……診断、EC因子保有者の肉体は復元可能。EC因子保有者の肉体復元を優先。成分の補充を行うべく転移開始』
 本が電子的な女性の音声で喋る。『EC因子保有者』というワードがちらついた。あの肉塊は私の腕が……あの銀の腕輪を中心として何かに取り憑かれたりしたから切り離されたのか?それともあの本が切り離させたのか?わからないことだらけだった。仮定を重ねても意味は無い。
 観察を続けていたが、本と銃と肉塊から発せられる銀色の光が私の目を妬く。
それに目がくらみ、目を再び開けた時には本と肉塊は消えていた。転移と言う言葉の通りだった。

 すっかり肉塊のことでドタバタして遅れていたが、“ほむら”はループをした後に必ずやる作業を行うことにした。ソウルジェムを目の前に取り出し、眼鏡をかけることが必要だった低い視力を矯正させ、お下げの三つ編みだった髪をほどいていき、元が心臓病で運動をしてなかったために低かった身体能力を今の限界である一般人よりもやや上程度に底上げする。魂=ソウルジェムが肉体とは離れているが故にこういったことは簡単だった。つくづく人間をやめてしまったと思うが、その思考を切り捨てた。
 ループの開始日は心臓の病気で通院していた病院から退院する日だ。だから、いつもどおり病院から出ることとなった。
 黒と灰色のワンピースの私服に着替えて、病室から携帯電話や私物等の荷物を持ち出す。もう何度も繰り返してるために半ば日常も同然だ。
 肉塊と本と銃剣についての考えをめぐらせる。アレは自分の右手にはめた覚えの無い銀の腕輪を中心にして出てきた。ならばアレは何らかの事情で自分に関係があるのだろう。それが希望をもたらすのかと期待を抱いて、自動ドアの向こうの夕方の空の景色を眺めた。病院で医者たちがドタバタと騒いでいるのを尻目にして。
 “ほむら”はふと疑問に思った。着替えてから病院で医者たちがドタバタしていたのがおかしいと。今までのループの中では決して病院の中で騒ぎが置きたことなんて無かったのだ。
 退院日までに世話になり、見送りにきた女性看護師に別れの挨拶がてら聞くことにした。
「今までお世話になりました。一ついいですか……」
「なに?“ほむら”ちゃん」
「夕方ごろにお医者さんたちがうるさかったですけど、何が……あったんですか……?」
 気弱だった頃の自分の口調はこの病院にいた頃から知られている。だから、今の感情を削ぎ落とした口調ではなく、昔の頃の自分へと演出しての演技で話す。側にいる人の声ぐらいなら当時は眼鏡をかけなくてもわかったので眼鏡を外した状態で会話をすることは別に違和感は抱かれない。
「いやねえ、医薬品保管庫やサンプル保管庫からいろんな物が盗まれた……というより消失したから、それのことでドタバタしたのよ。それと患者の家族さんの方々が近隣のATMを破壊されたとかでお金を更に遠距離に取りに行ってたとか」
 ATM破壊についてはある程度は心当たりがある。そんなことをするのは小学校の頃に家族を亡くしたために天涯孤独で生活費とかを魔法少女の力で盗んだりしてた佐倉杏子ぐらいだ。しかし、彼女がこの町に来るのはランダム的な割合が高い。ループしたばかりのこの時期に来るのは経験上あり得なかった。これは考えても仕方の無いことだとして、前者の話題を看護師に促した。
「消……失?」
「ええ、泥棒だったら普通は金品とかを取っていくのに、無くなったものがものすごくちぐはぐなのよ」
「ちぐはぐ?」
「そう、盗まれたのは患者さんたちの尿に生理食塩水、それにリン、蒸留水ほか……金品が盗まれてないのがおかしくて、その……まるでどこかのマンガみたいだと思わない?魂の観念は死んだ後に僅かに無くなる質量だけでしか未だにほとんどが理解できない今では人間なんてそれだけでは復活なんてできないのに」
 それには内心同意した。入院生活をしていた頃の“自分”はかつて動けない間の暇つぶしとしてマンガを読んでいたりした。その中でお気に入りだったあるコミックは体の各部位を無くした兄弟が無くした物を取り戻すための旅をするというダークファンタジーだ。確か、それで主人公兄弟が体を無くした原因は亡くなってしまった母親を錬金術で生き返らそうというものだった。子供でもお金をちょっと出せば用意できる成分を集めてきてそれを元に母親を復活させようとするものだった。だが、そんな神をも恐れぬ行為は結果として罰が当たった。女性看護師が言ったのは常識ならば当然だろう。だが、“ほむら”は非常識というものを知っていた。魔法、願い、インキュベーター。インキュベーターに願いすれば確かに成分だけでできるかもしれないだろう。だがその果てに待つのは自我を消失して周囲の存在を無差別に呪い祟り殺す怪物……魔女と化してしまう末路だ。
 魂の質量というのは魔法少女の闇を全て知ってから考えたことはある。人間が認識している限り、魂というのは過去に米国が、人間が死んだら22.4gが肉体から無くなる事で魂が抜けたと言う実験で導き出した重さというものしかない。もし、魔法少女のソウルジェムが本当にその消失する分の魂の分だけならばたった22.4gしかないことになる。しかし、現実には質量と重さが増している。これについてはインキュベーターが少女の魂をソウルジェムへと加工するときに感情のエネルギー化=魔法という技術を使用するための追加措置なのだろうと思う。そうでなければ、魂だけであんなことが起こせるわけが無い。何もかも破壊してつき進み多くの“まどか”たちを死ぬ要因へと導くあの“舞台装置の魔女”が対戦車ミサイルの雨に耐えうる頑強さを持ち合わせたり、現代技術では治せない状態を治したりと。あの肉塊も魂そのものがインキュベーターによって感情のエネルギー化技術……いや、アレはもっと別な気がする。
 そこでふと思い出した。待て……今まで自分の頭の中を支配していたあの肉塊と本……あの本は何かいわなかったか?
 確か……
――EC因子保有者の肉体復元を優先。成分の補充を行うべく転移開始
 “ほむら”の中で事件とそれらが結びついた。ならば、あの肉塊は何を復元させるのだ?自分の腕から現れたから同じ自分と考えようとするとあまりにもタチが悪い。
 そのことに内心毒づいた。そこに別の女性看護師が声をかけてきた。受話器を持っている。
「あのー、暁美さーん!」
「な……なんでしょうか?」
「あなたの親戚を名乗る人からお電話が……向こうは名前を言わなかったけど、符丁としてまどかって言えばわかるって」
――!?
 内心、戦慄した。自分とまどかの繋がりを知る者は今の状態では時間遡行して一日目のこの世界には自分以外一人もいない。そのはずだった。
「で……出ます」
 電話を持ってきた看護師から電話の子機を受け取り、耳を当てた。

『奴を殺す場所に今夜2時に一人で』

 そう一方的に告げられた後、切れた。無機質なトーン音だけが受話器から鳴り響く。
 今のは何だ!?アレは聞き覚えがありすぎて逆にありえない声だった。なぜインキュベーターを必ず最初に殺害するポイントとそれと前後した時刻……つまり自分の親友であるこの時間軸ではまだ会っていない鹿目まどかの家の前で必ず行う時刻を指定してきている!?
 とにもかくにもあの声をした人物と会わないと始まらない。女性看護師がこちらを心配してきている声に対して当たり障りのないように接して、病院から出て行った。

AM02:00――
 そして“ほむら”は病院を退院して自分のアパートの一室へと帰り、自分の魔法少女としての武器、円形の盾の形をした時を操る砂時計の中に納まれている武器を一通り確認して指定された場所へと来た。
 そこは彼女の親友……そして毎回の世界で惨劇の最後を迎えてしまう少女の生家だった。すぐに戦闘へと移行できるように魔法少女としての姿に変化している。インキュベーターを殺害する際にいつも世話になっているベレッタM92F自動拳銃は袖の内に仕込んでいていつでも発射できる状態だった。
 時間遡行はあくまで魔法少女としての“自分”が1ヶ月前の病院にいる気弱だった頃の暁美ほむらの魂を“上書き”することでループをする。魔法少女としての“自分”は魔法少女としての能力の要である円状の盾に見える砂時計と魂そのものであるソウルジェムごと転移をする。そこには魔法少女としての経験も積み重なっており、一つ前の世界の決戦で使われずに終わった重火器が保存されている。その残存の重火器ならば病院で“上書き”した直後でもすぐに武器を取り出せた。
 道路に指すのは人影……まどかの家の屋根に腰掛けて座っている。その人影の左手には首を切り落とされた白い小動物が握られているがそれは紛れも無く忌まわしい地球外生命体インキュベーターの死体で、インキュベーターだったモノには恨みつらみのごとく無数に銃創が空けられ無造作に晒し者にされるかのように握られている。そしてそのシルエットには見覚えがあり過ぎた。
 その人影は……自分だった。
 そのほむらが振り向く、それは“自分”が認識している“自分”とは姿がかけ離れていた。背格好や体型はうり二つでも灰色の長髪に真紅の瞳に露出している肌の各所には紅の羽の模様が描かれてるかのような赤い刺青。魔法少女としての服装とおぼしきものは“ほむら”とはかけ離れていた。ノースリーブの黒シャツにズボンの黒衣だった。その黒衣のほむらが口を開く。
「自分自身と話をするのは変な気分にはなるけど……こうして対面をするのは初めてなのかしら、“私”」
 あり得はしない二人の……ほむらと“ほむら”、二人は邂逅した。親友を死よりもひどいことに合わせ続けるインキュベーターによって作られた惨劇の舞台装置を止めるために。

 ミリィは一人思う。離れてしまっても自分と彼女は誓約した身だ。ある程度ならわかる。しかし、自分と共に歩むために文字通りの毒に感染させた。世界を殺す毒に。このままではいけない。早く彼女と再びめぐり合わなければならない。
 そして時間潮流の先には別の空間が開いていた。切り絵や落書きをいくつも組み合わせたかのようなサイケデリックな空間。感染者を生体兵器へと変化させるウイルス感染元として作られた自分の知識には一切無かった空間だ。
 そこにかつて失敗作扱いしていた自分を拘束していた拘束台と共に落下した。
「うっ……」
 その空間の地面へと激突し、走る激痛。打ち身や内出血であちこちが痛み、うめく。自己診断、骨折なし。
 そこに人の声が聞こえる、自分にかけられた声だった。
「なんでこんなところでまともじゃない物と一緒に……一般人とは思えねーおめーはなんだ?」
 自分に声をかけた赤髪のポニーテールをした修道騎士に見える少女のことを眼中から外してミリィは一人呟いた。
「ほむら……どこ?」

「変わった……」
『何がだい?美国織莉子?』
 そのくせっ毛な白髪をした魔法少女、美国織莉子は一人呟いた。それに聴覚ではなく頭に聞こえる少年のようなテレパシーの声で応えるのは猫と兎を組み合わせたような四つの耳を持った頭部に赤いガラス玉のような何の感情も宿さない目をした白い四足歩行の生物……魔法少女たちの前ではフェイクのためにキュゥべえと名乗るインキュベーター……魔法少女というものの闇を知る織莉子とここにはいないほむらにとっては忌々しい地球外生命体だった。最も、織莉子自身はそのことを表には出してないためにまだ悟られてはいないが。
 昨日まで自分の能力で見た絶望の象徴である“黒い山”の存在は消失していた。未来は変わった。
 だから、それを生み出す元となる少女を殺そうと暗躍をしてきたのがご破算になった。
 だが……むしろもっと危険な存在が二つも見えてしまった。血の海に溺れる魔法少女でも魔女でもない異質な少女、そして……。
 自分が危惧した“黒い山”はもう生まれることはないことがこれで確定された。しかし、ある意味“黒い山”以上の危険さを持つ異質な少女と“黒い山”以上の危険さを盛る“アレ”がいる。
 この二つは既に生まれてしまっている、前者は成長速度が驚異的だがそこまでの力へ至ってないうちに殺せるかもしれない、だが後者は生まれた元すら見えずまるで伝説的な魔女、“舞台装置の魔女”通称:ワルプルギスの夜みたいに突然降って沸いて出てくる。後者が来るカウントダウンはもう織莉子が能力で見たものの範囲の中では始まってしまっている。
 自分の計画は大幅に変更しなければならない、自分たちの世界を守るためならば。だが、二つも強大な存在がいるのでは……待て、二つ?思わず名案が閃いた、だったらこうすればいいではないか。
「ねえ、キュゥべえ」
『なんだい?』
―――未来を作るための新しい計画は決まった。

End...

あとがき

 はい、というわけで魔改造元はリリカルなのはForceでした。なんとなく書いたのがいつの間にか範囲が拡大してこんなことに。
 最初はディバイダーを持ったほむら無双のネタを書き溜めてたら二人のほむらになっちゃいました。
 とにかく書き続けれるなら書き続けたいと思います。

 このSSでの二人のほむらは文章上ではこういう風に区別を付けます。

 ディバイダーを持ったほむら:ほむら
 本編と同じく時間操作の魔法少女であるほむら:"ほむら"

元ネタ解説

『体の各部位を無くした兄弟が無くした物を取り戻すための旅をするというダークファンタジー』:鋼の錬金術師

ディバイダー997:元ネタはForceのディバイダー996の元ネタがポルシェ996のように、ポルシェ997。もしForce本編で997が出てしまったらごめんなさい。


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