「阪神4-2巨人」(25日、甲子園)
いよいよ、阪神の反攻の夏本番だ。クレイグ・ブラゼル内野手(31)の決勝アーチで巨人に連勝。日本全国が熱狂した天覧試合から52年目のメモリアルデー、伝統の一戦で3位に浮上した。スタンドを埋めた虎党はヒートアップ。でも忘れたらアカンでぇ〜まだ5もある借金、一気に返してや!
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宿敵左腕を砕き、ブラゼルがチームを3位に押し上げた。同点の四回。B砲が、内海のチェンジアップを捉え、左中間席へ放り込んだ。低めの難しい球。最後は右腕1本でねじ伏せた。興奮に身をよじる大観衆の叫び、一体感が心地よかった。
「左中間へああいう打球がいくのは、調子がいい証拠。これまではあの方向へ飛んでも、フェンスを越えなかった。風の影響を受けずにあそこまで飛ばせたことは、今やろうとしていることができた結果だと思う」
5月28日の楽天戦以来、17戦64打席ぶりのブラゼルの5号ソロが決勝弾。今季初となる左方向へのアーチで7連勝中だった内海に土をつけた。
開幕から交流戦中盤まで打撃の状態が安定せず、迷路をさまよった。和田打撃コーチと二人三脚で不振脱出を図り、ロングティー打撃を日課に、インパクト時のポイント修正に励んだ。「技術的なものは深刻じゃない」と話す同コーチ指導の下、昨季47発男の本領が発揮されつつある。
2度目の公約アーチだった。試合前、室内練習場で自身が招いた47組の親子と約束を交わした。 「皆も一生懸命、絵を描いたのと同じくらい勉強すれば、いい成績が出せると思う。皆さんのために、きょうはホームランを打ちたい」
昨オフ、ブラゼルはファンへの還元企画を望み、周囲と相談を重ねた。思いついたのは“似顔絵コンテスト”。小学生以下の子供たちから自身の似顔絵を募集し、昨季47本塁打にちなみ、47組の親子を甲子園に招待するプランを発案した。この日、入選者がスタンド観戦。親子でブラゼルの公約アーチに酔いしれた。
「約束と言えば、あのときも2本ホームランを打った記憶があるんだ」。昨季、開幕カードの対横浜3戦目の試合後に真弓監督の母・志津恵さんが病気で他界。次カード、敵地での広島戦を前に指揮官から「ホームランを頼む」と懇願された。広島・青木高から放った2打席連続アーチが弔い弾となり、チームを勢いに乗せた。今季は、采配批判を浴びることも多い将への援護弾。孝行の気持ちを形に変えた。
「練習していることが徐々に実を結び始めている。まだまだ、結果には満足していない。これから毎日良くなるように、頑張っていくよ」
走者をためて巡った五回と七回、2度の好機で凡退した。追加点を奪えず、バットを投げ捨て、苦虫をかみつぶした。まだ52試合。残り92試合の長丁場で上昇曲線を描けば、前半戦の不振は帳消しになる。再起を期すB砲の1発で3連勝。チームは5月12日以来の3位に浮上。反攻のキーマンは誰か。ブラゼル自身が一番、理解している。
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