岩手県陸前高田市は25日、東日本大震災で行方不明になっている住民の死亡届の受け付けを開始した。
国が死亡届受理の要件を緩和したことによる対応で、多数の届け出が予想されたため、仮設庁舎での窓口業務のほとんどを死亡届の受け付けに充てた。
午前8時半から窓口に並んだ同市米崎町の吉田裕子さん(54)は、市職員で行方が分からない長男大介さん(26)の死亡届を提出した。書類をめくる職員の手を見て、涙が抑えられなかった。
吉田さんは「昨日も町を歩いて捜して『何でこの子が私より先に……』と思うと書類が書けなくて。母子家庭で育てて優しい子だったから、このままじゃ心配して行くべきところに行けないだろうと、死亡届の提出を決めました。供養が私の最後の仕事。私たちも、出発しなきゃと思うのです」と話した。
母親が行方不明という同町の高橋加代子さん(52)は夫と関係書類を提出し「気持ちを整理し、前に進むために届け出を決めました」。父親が行方不明になった同市気仙町の菅野渉さん(43)は「これでやっと葬式を出してやれる」と話した。
市によると、行方不明者の家族らは被災時に本人がいた場所や連絡状況などの質問に答える「申述書」の提出が必要。届け出は早ければ週明けにも受理される。被災時の目撃者の申述書や警察署などの証明書の添付があれば、手続きは早く進むという。【市川明代、蒲原明佳】
毎日新聞 2011年6月25日 11時27分(最終更新 6月25日 12時44分)