連載小説-痴漢冤罪-その1

 地元の大学を卒業後、東京に出てきて、今年で5年目だ。僕の名は並木優作。職業はしがないサラリーマンだ。仕事にも随分慣れてきたが、この無味乾燥とした大都会では、友達一人できない。まあ、正直に言うと欲しいとも思わない。めんどうくさい人間関係は、仕事だけでいい。会社も将来も微妙だし、慎ましく生きていければ、それでいいと思う。

今朝もいつものように、満員電車に揺られて、出勤中だ。電車のダイヤの関係で、朝の時間に座席に座れた事は一度もない。電車が急停車する度に、人の波に押しつぶされそうになっている身としては、座席で涼しげにしている人達がうらやましかった。

女学生「うそぉ、ミカポンとターボウが付き合ってんの? ちょー受けるんだけどぉ。」
若い女性の声が、耳に付いた。チラ見してみると、特等席といえる座席シートの一番端に、女学生が携帯電話を片手に座っているのが見えた。
女学生「ミカポンって、自分の事、かわいいと思ってんじゃん? で、結局、付き合ったのが、あのターボウなんてさ。傑作なんだけど。それでさぁ・・。」
一般的に、電車の中で電話するのは、マナー違反と言われている。しかも、その話が個人の中傷のような内容だったので、僕は、少し気分が悪くなった。



しかし、周りの人間が、誰も注意しないというのは、どういう事であろうか? こうした都会的な無関心が、この街の閉塞的な雰囲気を生み出しているのではないか。 僕は珍しく、ヒーロー的な気分に浸っていた。
優作「君、電車の中で、携帯で話すのはやめなさい。迷惑じゃないか。」
僕は言った。言ってしまった。正直にいって、今日ほど男前だった僕は、いままでになかったのではないか。女学生は、一瞬ムッとした顔をしたが、周りの視線に気付いたようで、しぶしぶ携帯の電源を切った。

それからしばらくして、降車駅に着いた。満員電車という牢獄から開放された僕は、とても晴れやかな気分になっていた。それはもちろん、大人として毅然とした態度を示せた満足感からであったが、それだけが理由ではなかった。女学生を叱った時、彼女の顔をガン見する事が出来たのだが、彼女、とてもかわいかったのだ! 黒くて大きな瞳、若者の特権である白くて瑞々しい肌。彼女は、テレビで見た、どのアイドルや女優よりも、僕の好みをとらえていた。僕は、あの女学生が、これを機に、友達の悪口なんて言わず、優しく生きていって欲しいと思った。

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後記
突如として、始めます。(^^;; 10回くらいに分けて、少しづつアップしていきます。一応、毎回挿絵を付ける予定です。

連載小説-痴漢冤罪-その2
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コメント

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この後,痴漢冤罪と催眠・洗脳・MCが,どう結び付くのか興味深いです。

§

>悪堕ちキッドさん
この小説は、当ブログのテーマに沿って、物語が進んでいきます。
決して、痴漢は良くない等と、教訓めいた話には、ならないでしょう。(^^;;

§

これは楽しみです
更新待っています

§

>tokumeiさん
できれば、週2回の更新を目標にしています。拍手などを頂けると励みになります。
あと、些細なことでも、コメントを頂けると励みになります。
(^^;;

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