駅構内にある「東電の本日の電力使用状況」。使用率が1時間ごとに更新される。冷暖房が不要の5月の涼しい日でも80%を超える日があり不自然だった
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Yahooや東電のホームページ、駅の電子掲示板などで表示されている「電力使用状況グラフ」の使用率数値が、水増しされていることが分かった。「ピーク時供給力」を、稼働可能な設備のフルの容量ではなく、そのつど東電が恣意的に決めた「供給目安」の数字とすることで分母を減らすのがその手口で、実際より15%も上乗せされている日もあった。この指摘に対して東電は「確かに『本日のピーク時供給力』というのは分かりにくいですね。それとは別に本当の『最大供給能力』というのがあるのは事実です」と認めたが、「今後7~8月と需給がひっ迫してくればおのずと本当の上限値に近づきます」と、恣意的な目安に過ぎない数字をピークだと偽り続けている責任など、知らぬ顔だ。
【Digest】
◇電力使用率100%を超えたら大停電の可能性
◇東電の「ピーク時供給力」は恣意的に操作されている
◇「確かに最大供給能力ではありません」と東電
◇過度な節電は子供、高齢者の熱中症の危険性が
◇東電・政府の電力不足キャンペーンに公正中立な検証を
◇電力使用率100%を超えたら大停電の可能性
いまや福島原発の処理をめぐる問題について、東京電力の言うことをそのまま信じる人はいないだろうが、夏の電力需給の情報については鵜呑みにしている人が多いのではないだろうか。
駅などの電子掲示板では、常時「電力使用状況グラフ」で電力使用率80%などと表示されている。いわゆる「見える化」で、国民の節電努力の目安として使われている。
電力使用率が100%を超えた場合、大停電になるため、それを防ぐために計画停電が再開されると言われ、グラフ表示で注意喚起すること自体に異論はない。
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電力の需給バランスについて経済産業省資源エネルギー庁の説明資料 |
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3月の計画停電の時の経済産業省の資源エネルギー庁の説明(左図)でも、「電力会社は需要(消費)に対して供給(発電)を瞬時瞬時に合わせている。しかし電力会社の供給能力を超えて供給することはできない。需要が供給能力を超えてしまった場合、予測不能な大規模停電を招く可能性あり」と説明されている。
2008年の中越沖地震で柏崎刈羽原発がすべて運転中止をした際に節電を求めた東電の説明でも
「Q.電力需要が供給力を上回るとどうなるのですか? A.電気はためることができないという性質をもつため、供給力に対し需要が上回ると、周波数が徐々に低下していき、最悪の場合、停電に至ることになります」と説明されている。
◇東電のピーク供給量は恣意的に操作されている?
しかしその前提は、公開されている情報がホンモノである場合だ。
東電の「電力使用状況グラフ」の中で表示されている「ピーク時供給力」には、いろいろ疑わしい部分がある。
3月の震災で福島第一原発を含め多くの発電施設が損傷し、東電の発電能力は著しく減少した。それを徐々に復旧させることで供給能力を高めてきている。
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東京電力の電力供給見通し |
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過去の
記者発表をみると3月24日の供給力は3650万キロワットで、その段階での7月末での供給力予測が4650万キロワットだった。それが
4月15日発表では7月末までに5200万キロワット、
5月13日発表では5520万キロワットまで供給力を上げる目処が立ったと発表されている。
6月6日のプレスリリースでは、6月1週目で4350万キロワット、2週目4710万キロワット、3週目で4870万キロワット、4週目4960万キロワットと、確実に積み上げられている。(上図)
供給力があがるのと連動して、毎日発表される「本日のピーク時供給力」も右肩上がりに上昇するはずだ。
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東電HPで毎日更新される「本日のピーク供給力」の推移 |
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しかし、
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6月14日午前10時台の電力使用状況の表示。東京メトロ丸ノ内線新宿三丁目駅構内の表示板。実際の最大供給能力を分母にしたものと比べ、5~15.7%も数字が上乗せされている。 |
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