其の七 シド・サクソンにゲームの世界を案内してもらおう  (下)



●Crossing
「Crossing」はチェッカー盤でできるが、商品版として「Epaminondas」というゲームがある(写真はHexagamesのもの)。商品版との大きな違いは、ボードの大きさと捕獲ルールである。しかし、ここでは元の「Crossing」だけを紹介する。

・用具
8×8のチェッカーボード(あるいはオセロ盤)。白黒(もしくは二色)のコマ、各16個。初期配置は図3の通り。


・プレイ
白から始める。以降は交互に手盤を行う。手盤では自分のコマを動かす。

[移動]
移動はタテ・ヨコ・ナナメのいずれの方向にでもできる。コマを1つ移動させるときは、空いているマスへ、1マス分だけ移動できる。コマを2つ以上、グループとして移動させることもできる。このグループはタテ・ヨコ・ナナメのいずれかの直線上で連続して隣接している味方のコマのことである。ただし、必ずしも隣接しているコマすべてをまとめて移動させなくてはならないわけではない(一部だけをグループとして移動させてもよい)。このとき、そのグループのいる直線上を、1マス以上、最大でグループに含まれるコマと同じ数分だけ、集団で移動させる。また図に頼ってすみませんが、例えば、図3のd1とd2をグループとして移動させるなら、その2つのコマを1つ以上、最大で2マス分、dの列の方向に移動できる。2マス移動させれば、図4のようになる。もちろんd2だけを単独で移動させることもできる。

[捕獲]
移動しているグループが、敵の単独のコマにぶつかったとき、あるいは同一直線上にある自分のグループより少ない数のグループにぶつかったとき、最初にぶつかった敵のコマ1つを捕獲できる。本来はもっと移動できる場合でも、捕獲できるのは1コマだけで、移動もそこで終わりになる。敵のグループが同数、もしくはより多いコマからなっていたら捕獲は起こらない。例えば、図5で白の手番だとすると、d列の黒のコマは4つ連続しているのでひとつのグループと見なされ、同じ列の白いコマ4つのグループは同数なので捕獲できない。しかし、もし黒が矢印の2つのコマのグループ(d8とe7)を1マス、もしくは2マス移動させたとすると、d列の黒のコマは3つに減るので、白は4つのグループでd5の黒いコマ1つを捕獲できる。

・勝利条件
一方のプレーヤーが、自分のコマを盤の向こう側(すなわち、一番遠い行)に到達させたときに、そのプレーヤーは「横断」したという。その次の手番で、相手がただちに「横断」をし返すことができなければ、「横断」したプレーヤーの勝ちである。相手もすぐに「横断」し返したら、お互いの「横断」は相殺され、ゲームは続行する。


 なお、シド・サクソンは「LOA」のヴァリエーションである「Fields of Action」を考案しており、R. W. Schmittbergerの『New Rules For Classic Games』という本に紹介されている。せっかくなので紹介しておく。

●Fields of Action
・用具
8×8のチェッカー盤(もしくはオセロ盤)。コマは「LOA」と同じく一人12個の計24個を用意すればよいが、ただし、それぞれに1〜12までの数字を書くなりシールを貼るなりしておく。初期配置は図6のようになる。



・プレイ
白から始める。以降は交互。

[移動]
手番では自分のコマひとつをタテ・ヨコ・ナナメいずれかの方向に動かす。その際、敵であろうと味方であろうと、いくつでも他のコマを飛び越してよい。移動距離は、動かそうとしているコマにタテ・ヨコ・ナナメで隣接しているコマの総数(敵・味方ともに数える)となる。多く移動してはもちろんダメだし、少なく移動してもダメである。例えば、白の「12」には「1」「5」「11」が隣接しているので移動距離は3となる。したがって、a5、d5、g5のいずれかに移動できる(この場合、盤からはみ出すので後ろには行けない)。
味方のコマのいるマスで移動を終えることはできない。敵のコマのいるマスで移動を終えたら、この敵の駒は捕獲され、盤上から除外される。
隣接しているコマがない孤立したコマは、特別ルールとして好きな方向に好きなだけ移動できる。ただし、その際、捕獲してはいけないし、移動終了時に少なくとも2つのコマに隣接するようにしなければならない(敵味方はどちらでもいい)。

・勝利条件
勝利条件は二つある。どちらかを満たせば勝ちである。
(1)数字順になった5つのコマを捕獲したとき。たとえば、4-5-6-7-8のように。捕獲する順番は数字順でなくともよい。
(2)相手がどんなコマも動かせないような状態にしたとき。

 これだけで創意工夫の楽しさを伝えることは不可能だろうが、『A Gamut of Games』ではチェッカー盤以外にも、トランプやダイス、紙とペンなどで遊べるゲームが紹介されている。ドイツ・ゲームのように凝った用具でにぎやかに楽しむのに慣れてしまうと忘れがちだが、たったこれだけで思ったよりも楽しめるのだ。シド・サクソンの「アクワイア」だって本来は実にシンプルなゲームだ。そして、「アクワイア」がなければ、ひょっとするとクニツィアの「チグリス・ユーフラテス」は誕生していなかったかもしれない。これが伝統ということだろう。それならば、シド・サクソンの昔のゲームで取りざたされることのあまりないものもあるから、今あえてそれらで遊んでみることは現在のゲームについて考えるのにもきっと有益であろう。

 おっと、今回はうちのホームページにあるまじきまとめをしてしまった。珍しく真面目な「孤独の部屋」となったのは反省せねばなるまい。ゲームを楽しむのに、有益かどうかなんてどうでもいいですね、野暮なこといって失礼しました。サブタイトルも結局一貫性が保てずに植草甚一みたいになっちゃったし…。こうやって自分につっこむのも孤独といえば孤独だから、たまにはいいか。

(完)

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美化委員