研 究 論 文


万  里

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目  次

著 書
  1. 「生鮮食料品流通の時系列分析」(単著),農林統計協会(東京),A5判,pp.1-207,2002年9月

  2. 「詳解基礎C言語とフローチャート」(単著),京大出版センター(京都),B5判,pp.1-203,2004年7月

  3. 「基礎統計学」(単著),農林統計協会(東京),B5判,pp.1-172,2007年10月

  4. 「図解Excel統計」(単著),農林統計協会(東京),B5判,pp.1-66,2007年10月

  5. 「コンピュータの理論と実践」(単著),(株)三恵社(名古屋),B5判,pp.1-200,2008年3月

  6. 「新版 酪農用語解説」(分担),(株)デーリィ・ジャパン社(東京),A5判(343ページ),2008年2月

  7. 「音読したい中国語」(共著),(株)朝日出版社(東京),B5判(95ページ,CD付),2009年4月・初版,2010年1月・2版



研究論文

(本人が筆頭著者である論文)

  1. 時系列解析における可変型季節性指数の抽出に関する研究

  2. 連環比率指数移動法による可変型季節変動指数の抽出方法について

  3. 連環比率移動法とEPA法の季節性指数に関するモンテカルロ実験

  4. 実質価格及び名目価格に関する時系列変動分析

  5. 畜産物価格の可変型循環変動の抽出について

  6. 青果物価格変動の特質と市場間の相互関連性について

  7. 新可変型季節性指数とその評価に関する研究

  8. 周期・振幅を可変型とする循環変動の抽出法

  9. 連環比率移動法による可変型季節変動の吟味

  10. 畜肉価格変動の特質と可変型循環変動の分析

  11. 生鮮食料品の生産・流通・消費の構造変化及び今後の課題

  12. 可変型季節変動及び可変型循環変動による時系列予測に関する研究

  13. 農畜産物価格変動の予測に関する研究

  14. ネギ,しいたけの輸入と国内生産・消費に関する分析

  15. 実質価格,名目価格それぞれにおける時系列予測に関する研究

  16. 中国における米生産低迷の原因分析と今後の予測

  17. 外交講座「日中関係と日本政府の対中外交努力」

  18. ピッグ・サイクル変調の原因分析


(その他の共同研究論文)
  1. 笠原浩三・万 里・W. Layne・韓 寛淳:「日中米韓のスイカ生産地の生産流通と品質特性」,『農林業問題研究』(2000年),Vol.35, No.4,pp.149-154

  2. 笠原浩三・糸原義人・金山紀久・仙北谷康・万 里:「荷姿から見た主要国の青果物流通の特質」,『農業経済研究別冊』(2000年),pp.118-123

  3. 笠原浩三・古塚秀夫・万 里:「ファジィ輸送モデルの特性とメンバシップ関数の相互関係」,『農林業問題研究』(2001年),Vol.36, No.4,pp.122-127

  4. 笠原浩三・伊東正一・古塚秀夫・万 里:「日米豪のコメの小売価格の特性と均衡小売価格下の関税率について」,『農業経営研究』(2001年), Vol.39, No.1,pp.141-146

  5. 長谷川伸作・陶山昭彦・井上 仁・万 里:「時系列解析による感染症流行の長期趨勢および周期特性」,『第38回情報科学技術研究集会予稿集』(2001年),pp.109-114

  6. 古塚秀夫・万 里:「中国の生しいたけ事情」,『菌蕈』(2001年), Vol.47,No.9,pp.28-33

  7. 笠原浩三・万 里:「三角型,台形型メンバシップ関数ファジィ輸送モデルにおける反復MODI法による最適解への接近」,『鳥取大学農学部研究報告』(2001年), Vol.54, pp.53-62

  8. 笠原浩三・古塚秀夫・万 里:「線形計画法による反復によるファジィ最適解への接近」,『農業経済研究別冊』(2001年),pp.152-157

  9. 笠原浩三・韓 寛淳・万 里:「日韓農協の協同組合原則と流通事業」,『鳥取大学農学部研究報告』(2002年), Vol.55, pp.39-45

  10. 笠原浩三・万 里:「輸送モデルの非線形輸送費最適解とファジィモデル」,『鳥取大学農学部研究報告』(2003年), Vol.56, pp.27-34

  11. 大知隆志・万 里:「センサス局法と連環比率移動法による可変型季節性指数の比較研究」,『農林業問題研究』(2008年), Vol.44, No.2,pp.76-81

  12. 古塚秀夫・万 里:「乾シイタケ輸出の現状と課題」,『農林業問題研究』(2011年), 投稿中


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時系列解析における可変型季節性指数の抽出に関する研究

万  里・笠原浩三・仙北谷康

(『1996年度・日本農業経済学会論文集』,日本農業経済学会(1996年9月),pp.5〜12)

(要  旨)


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連環比率指数移動法による可変型季節変動指数の抽出方法について

万  里・笠原浩三・仙北谷康

(『鳥取大学農学研究報告』,第49巻,鳥取大学農学部(1996年11月),pp.111〜118)

(要  旨)



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連環比率移動法とEPA法の季節性指数に関するモンテカルロ実験

万  里・笠原浩三・仙北谷康

(『地域農林経済学会大会報告論文集』,第5号,地域農林経済学会(1997年3月),pp.109〜114)

(要  旨)


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実質価格及び名目価格に関する時系列変動分析

万  里・笠原浩三・仙北谷康

(『鳥取大学農学研究報告』,第50巻,鳥取大学農学部(1997年11月),pp.75〜82)

(要  旨)


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畜産物価格の可変型循環変動の抽出について

万  里・笠原浩三・松原茂昌・仙北谷康

(『地域農林経済学会大会報告論文集』,第6号,地域農林経済学会(1998年3月),pp.7〜12)

(要  旨)


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青果物価格変動の特質と市場間の相互関連性について

万  里・笠原浩三・糸原義人・仙北谷康

(『農業経営研究』,第36巻,第1号,日本農業経営学会(1998年6月),pp.137〜142)

(要  旨)


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新可変型季節性指数とその評価に関する研究

万  里・笠原浩三

(『農林業問題研究』,第34巻,第1号,地域農林経済学会(1998年6月),pp.10-18)

(要  旨)


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周期・振幅を可変型とする循環変動の抽出法

万  里・笠原浩三

(『農業経済研究』,第70巻,第3号,日本農業経済学会(1998年12月),pp.148〜156)

(要  旨)

 経済時系列の循環変動を長期的に見れば社会経済,政策,技術進歩等諸条件の移り変わりによりその周期,振幅が可変的である.しかしながら可変型循環変動の研究はこれまで極めて少数を数えるのみである.そこで本研究では新しい可変型の循環変動抽出法を開発提示する.ここでは周期,振幅はそれぞれ不変,増大,減少の組み合わせにより9系列25年間月別合成サンプルデータ,及び実際の経済系列として鳥取市鶏卵小売価格1975年から1996年までの22年間月別データを利用し,可変型循環変動の抽出法を試みた.まず定常化系列による自己相関係数を計測し,仮基本周期を検出した.仮基本周期の3期間分を計算区間とし,この計算区間のデータ系列を用いてパワー・スペクトル解析及びF(1%)検定により基本周期を確定した.調和解析により有意な調和項を残し,フーリエ級数により区間循環変動を算出した.そして1期ずつ移動した.各区間循環変動の算術平均値を予備可変型循環変動とした.区間循環変動の周期,振幅の算術平均系列での回帰分析により時間tの関数式を求め,これらをフーリエ級数に代入し,可変型循環変動を抽出した.

 この方法により抽出した可変型循環変動,従来の方法により抽出した固定型循環変動それぞれと原サンプル系列,または定常化系列との偏差を算出した結果:可変型循環変動での偏差は固定型循環変動での偏差より小さい.つまり,本研究で提示した可変型循環変動の抽出法は実用性があり,抽出した可変型循環変動はより真の変動に近いことが判明した.

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連環比率移動法による可変型季節変動の吟味

万  里・笠原浩三

(『1999年度・日本農業経済学会論文集』,日本農業経済学会(1999年12月),pp.248〜253)

(要  旨)

 本論文では連環比率移動法の計算原理を月別平均法,移動平均法のそれぞれに適用し,その実証分析の結果に基づいて,連環比率移動法の計算原理は連環比率値だけではなく,月別平均値,移動平均値にも応用できることを実証した。
 その分析結果をとりまとめると以下のとおりである。  
  1. 連環比率移動法の計算原理が移動平均法,月別平均法にも適用でき,加法モデル時系列データの可変型季節性指数を有効に解析できる。
  2. 連環比率移動法の計算原理を適用した移動平均法,月別平均法による可変型季節性指数の解析において,移動平均による欠落値の補欠は2回のみである。他の可変型季節性指数抽出法より補欠回数が少ないため,両端の値の信頼性が高いといえる。
  3. 抽出した可変型季節性指数の分散分析により,傾向・循環変動及び不規則変動の影響が除去され,すべての系列の季節性がF検定の1%範囲で有意である。また,連環比率移動法の計算原理を適用した月別平均法による可変型季節性指数と,EPA法の加法モデル計算による可変型季節性指数との共分散分析の結果によると,統計的に両者の差が認められず,連環比率移動法の計算原理は加法モデル時系列での可変型季節性指数の抽出にも適用できることが判明した。

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畜肉価格変動の特質と可変型循環変動の分析

万  里・笠原浩三

(『農林業問題研究』,第35巻,第4号,地域農林経済学会(2000年3月),pp.250〜255)

(要  旨)

 この論文では牛肉を中心とした循環変動の分析でパワー・スペクトル解析の手法により周期を検出し,固定性,可変性の両面から接近することによって,畜肉時系列解析のあり方について検討するものである。さらに牛肉の周期が変調してきたと指摘されていることから,その周期変調の原因を分析した。結果は以下のとおりである。
 
  1. 畜肉の価格変動には季節変動,傾向変動,循環変動が並存し,各変動の全変動に対する寄与率では価格変動の大部分は傾向・循環変動によって占められていることが判明した。
  2. 傾向変動の分析結果,分析対象としたデータ期間の畜産物生産量,卸売価格,小売価格の傾向変動のほとんどは2次回帰曲線の当てはまりがよいことが判明した。これは1970年代初期のオイルショックによる物価の上昇及び1990年代の市場開放による畜肉の輸入自由化の影響が大きいことによるものと思われる。
  3. 固定型季節性指数をみると,牛肉について,年末の生産量が多いことにもかかわらず,年末・年初の卸売価格が高い。これは所得弾力性の高い牛肉では12月がボーナスの支給月であることにより,消費量が多いことが判明した。豚肉は牛肉と代替関係にあり,年末・年初以外では相対的に安価な豚肉の消費量が多いことが分かる。
  4. 可変型季節性指数を分析すると,1990年代には卸売価格の季節変動幅が増大してきたことが確認できる。これは輸入自由化による価格の低下により,年末・年始の需要量はより一層増大してきたことによるものと思われる。
  5. 成牛枝肉卸売価格の周期変動は昔から6年間前後であると指摘されていたが,本研究では40ヶ月(3.3年)の基本周期が検出された。これは1970年代の中期から乳用肥育おす牛枝肉の生産量増加の影響を受け,牛肉卸売価格の循環変動に大きく影響したものと考えられる。
  6. 可変型循環変動の分析により,牛枝肉卸売価格循環変動の振幅が減少し,1985年を境に周期は消滅したことが判明した。これは周期変動の異なる和牛肉,乳用淘汰牛肉及び乳用肥育雄肉それぞれほぼ1/3の割合を占め,お互いに振幅を吸収され,最終的に周期変動を消滅させたものと思われる。

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生鮮食料品の生産・流通・消費の構造変化及び今後の課題

万  里・笠原浩三

(『鳥取大学農学部研究報告』,第53巻,鳥取大学農学部(2000年11月),pp.81〜88)

(要  旨)

 この論文では,最近の市場流通変貌をまとめた。生鮮食料品の卸売市場外流通数量が年々と増加したことにより,販売価格の不透明化,農協の合併等による出荷団体の拡大と卸売市場供給者数の減少,スーパーマーケット等量販店の普及による小売業者の大型化等,これらの変化は市場価格に対する影響を検討考察した。また,生鮮食料品の流通特徴,いわゆる価格の不安定性と非弾力性について説明した。グローバル化情報社会が進む国際社会においては,高品質,低価格による競争力の強化は生鮮食品の自給率を向上させる重要な課題である。

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可変型季節変動及び可変型循環変動による時系列予測に関する研究

万  里・笠原浩三

(『農林業問題研究』,第36巻,第4号,地域農林経済学会(2001年3月),pp.128〜134)

(要  旨)

 
  1. 目  的
     農畜産物は人間の生活,生命維持に不可欠なものであり,その価格変動は直接生産農家の所得変動をもたらすことから大きな農業問題の1つと考えられ,一方,消費者にとっても,安定的な食料品の供給が要求される。従って,この価格変動の解明及び予測は生産者及び消費者にとって非常に重要な課題である。農畜産物価格変動の解析及び予測手法の1つとして時系列解析が挙げられる。時系列解析の大きな目的の1つは,いままでの変動規則を解明した上で,今後の変動方向を予測することである。本研究では連環比率移動法による可変型季節性指数,特に周期・振幅ともに時間tの関数とする可変型循環変動の解析をポイントにして,鳥取青果物卸売市場の山の芋,甘薯卸売価格1975年から1998年までの月別時系列データ,鳥取市鶏卵小売価格1975年から1998までの月別時系列データを分析対象とし,可変型季節変動及び可変型循環変動による農畜産物価格変動予測の可能性について検討したものである。

  2. 解析方法
     まず1975年から1997年までの時系列データを用いて,回帰解析による傾向変動,連環比率移動法による可変型季節性指数,周期・振幅ともに時間tの関数とする可変型循環変動を抽出し,それぞれ未来1ヵ年(つまり1998年の値)の予測推定値を算出する。次に予測推定値を含めた各変動要素系列により,予測合成系列を求める。最後に,原データ系列と予測合成系列との共分散分析及びF検定による比較分析を行い,可変型季節性指数,可変型循環変動を用いたことによる時系列予測の可能性について検討したものである。

  3. 結  論
     季節変動,循環変動について,長期的に見れば自然条件,経済政策,生産環境等諸要素変化の影響を受け,経済時系列の季節変動は可変的であり,季節変動の解析において,可変型季節変動を抽出すべきである。また,循環変動の周期及び振幅は時間の推移により変化し,時間tの関数とする循環変動を解析することが適当であると考えられる。
     原データ系列と予測合成系列との比較検討の結果,解析した3系列ともに原データ系列と予測合成系列との間に差があるものの,非常に相似している。その差は計算誤差及び予測不可能な不規則変動の影響等によるものと考えられる。また,共分散分析の結果,各品目それぞれの原データ系列と予測合成系列との間には有意な差を認めることができない。このことによって可変型季節性指数,可変型循環変動による時系列予測が可能なものであると思われる。

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農畜産物価格変動の予測に関する研究

万  里・笠原浩三

(『鳥取大学農学部研究報告』,第54巻,鳥取大学農学部(2001年11月),pp.63〜70)

(要  旨)

 本研究は農畜産物の時系列データを解析材料とし,その価格変動について,回帰解析による回帰傾向線,連環比率移動法による可変型季節性指数,周期・振幅をともに時間tの関数とする可変型循環変動の解析方法で,数理解析による価格変動の予測を検討したものである。予測合成系列と原データ系列との共分散分析により,両系列間には有意な差を認めることができない結果となっている。よってこの方法による時系列予測は可能であると思われる。
 また,鶏卵小売価格について,政策面・実態面を踏まえ,その価格変化を長期的に分析した。傾向変動では,大規模養鶏によるコスト低減等要素の影響により,鶏卵価格は低下してきた。季節変動では,お正月と夏季の消費低迷で,鶏卵価格は年間に渡って,2つのピークとなる複峰形である。循環変動では,政府が価格形成に介入し,いわゆる最低価格保証制度により経営者所得の保証を行い,加える大規模養鶏等を原因に,養鶏農家は市場の価格変動に対する反応が慎重となり,鶏卵価格循環変動の周期を増長している。

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ネギ,しいたけの輸入と国内生産・消費に関する分析

万  里

(『農林業問題研究』,第37巻,第4号,地域農林経済学会(2002年3月),pp.359〜364)

(要  旨)

 2001年4月23日に日本初の一般セーフガードの暫定措置が発動され,対中国の輸入ネギ,生しいたけ,畳表を200日にわたって関税率の増加により制限したものである。本論文は市場情報を用いて,ネギ,しいたけの輸入と国内生産・消費の関係を解析した。結果として,輸入の増加による国内小売価格が下落し,価格への影響は中央卸売市場所在地の大都市が受けやすい。クロス・スペクトル分析により,ネギの場合,小売価格が輸入量より約1ヶ月前後先行し,つまり,小売価格の昇降によって1ヶ月前後のタイム・ラグを経て輸入量が増減する。生しいたけの場合,輸入量は小売価格より先行し,輸入量の増加により,早い場合,11日後に小売価格が下落する等ことを明らかにした。

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実質価格,名目価格それぞれにおける時系列予測に関する研究

万  里・笠原浩三

(『農林業問題研究』,第40巻,第1号,地域農林経済学会(2004年6月),pp.64〜69)

(要  旨)

1.緒 論
 農畜産物の市場価格は常に変動していることは周知のとおりである。この中で,特に市場取引に鮮度が要求され,長期保蔵に効かない生鮮食料品について,その価格は毎日変化し,価格不安定の性質を持っている。このような価格の乱高下は,ときには社会の不安定が引き起こされる。一方,生産農家にとってはより安定的な収益を得るために,価格の安定が要求され,消費者にとっても安定的な供給が望まれる。生鮮食料品の価格を安定させるために,価格予測は1つの手段である。その方法の1つには時系列解析による価格予測の方法がある。ところで,価格データの中で名目価格,実質価格の2種類があり,いままで多くの経済分析には実質価格が利用されている。時系列解析による価格予測を行う場合,どの種類の価格を利用すればより現実的な結果が得られるかは重要な課題である。
 そこで,本論文では卸売価格,小売価格の10品目,27年間の月別時系列データを利用し,名目価格,実質価格それぞれを用いて価格予測を行い,予測結果系列と解析時に用いた価格系列との平均差によって,時系列解析による価格予測を行う場合,名目価格,実質価格のどちらを利用すべきかの解明を試みたものである。
2.研究方法
 分析データとして,東京都中央卸売市場におけるゴボウ,ネギ,カンショ,里芋,長芋,タマネギ,ニンニク,根しょうがの月別平均卸売価格,鳥取市における鶏卵,タマネギの月別平均小売価格,計10品目1976年〜2002年の27年間の時系列データを用いた。実質価格の算出において,卸売価格には,日本銀行が発表した国内農林水産物卸売物価指数を適用し,小売価格には,総務省が公表した食料品消費者物価指数を利用した。
 分析方法として,まず名目価格,実質価格それぞれの1976年〜2001年の時系列データを利用して傾向変動,季節変動,循環変動を算出し,2002年度の予測値を算出した。次に算出した傾向変動,季節変動,循環変動による系列合成を行い,予測系列を算定した。予測系列と解析系列の共分散分析により有意性を検討した。最後に予測系列と解析系列との平均差を算出し,名目価格,実質価格それぞれによる時系列予測の適合性を検討した。
3.結 論
 名目価格による時系列予測を行ったの場合,予測系列と名目価格系列との平均差,10品目の平均値は50.47あり,実質価格の場合,予測系列と実質価格系列との平均差,10品目の平均値は54.38であった。結論として,名目価格による時系列予測の結果はより現実の値に近く,時系列解析による価格予測を行う場合,名目価格を採用すべきである。

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中国における米生産低迷の原因分析と今後の予測

万  里

(『第10回 世界のコメ・国際学術調査研究報告会・シンポジウム』(2005年3月),pp.121〜128)

(要  旨)

 本研究では1949年から2003年までにおける中国の米生産面積,総生産量,及び1992年から2003年までの市場価格データを用いて,近年の中国における米生産低迷の原因を分析し,今後の変化について予測を試みた。その結果として,1997年から米の市場価格が下落したが,これは備蓄米の大量市場投入によることである。しかし,1998年から連続6年間の収穫量減少により,備蓄が大幅に減少し,米の市場価格が再び上昇すると予想される。ただ,急速な経済発展に伴う工業開発,住宅地及び娯楽施設の建設などにより,耕地面積が年々と減少し,加えて水資源の不足により,米生産面積の大幅な拡大は期待できない。また,生活水準の向上による肉類消費の増加に伴い,1人当たりの年平均穀物消費量が減少し,今後では中国国内の米消費量が減少すると予想される。

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外交講座「日中関係と日本政府の対中外交努力」

万  里・崎原麗霞・韓 燕麗

(『鳥取大学教育研究年報』,第15号,鳥取大学教育センター(2010年3月),pp.43〜46)

(要  旨)

 2009年6月13日に,外務省大臣官房審議官を招いて鳥取大学で外交講座を行い,受講者193名にアンケートを配布し,回収した184枚(回収率95.3%)の結果を分析したものである。その結果,学生の多くは現在の国際情勢に関心があるといえる。また,外交講座を通して,あまり知らされていない日中間における認識の違い,外務省の中国外交への努力などを知り,外交政策の重要性及び外交への関心を持たせることができた。

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ピッグ・サイクル変調の原因分析

万  里

(『農林業問題研究』,第46巻,第1号,地域農林経済学会(2010年6月),pp.120〜125)

(要  旨)

 日本の豚肉市場は,1971年から豚肉の輸入が自由化され,80年代初頭から循環変動が徐々に変調し始めた。本研究では中央卸売市場豚枝肉卸売価格などを用いて,センサス局法X-12-ARIMAによる季節調整,パワースペクトルによる周期解析,重回帰分析などの手法で,近年におけるピッグ・サイクル変調の原因解明を試みた。その結果,@ 周期解析では,豚枝肉卸売価格の循環周期は62ヵ月であり,従来の3〜4年間より増長した。A 大規模経営により,市場価格変動に伴う経営規模の変化が難しいことはピッグ・サイクル周期変調の1因として考えられる。B 配合飼料価格はピッグ・サイクルに影響を与える。配合飼料価格の上昇により,一定のタイム・ラグを経て豚枝肉卸売価格が上昇する。

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