中心窩移動術

手術は先ず眼内レンズである水晶体を外してから硝子体切除術に移ります。これはかなり高度な技術を必要とする手術で特殊な機器を必要としますので,よほど大きい病院でないとできません。まず白目である結膜に3ヶ所小さい穴を開けます。一ヶ所からはライトを入れて眼内照明をし,手術用顕微鏡で眼の中を見ながら,硝子体を切除して剥離を起こさせます。中心窩移動術の場合は,その後,網膜側から意図的に網膜裂孔(もうまくれっこう)を作り,そこから網膜下に人工硝子体液(balanced salt solution)を注入して,これまた意図的に網膜剥離を起こさせます。それから,強膜の一部を切って縫合し簡単に言えば眼球を少し小さくします。その状態で網膜下の液を吸引しますと,当然網膜の一部が余分になりますのでソフトニードルチップで中心窩の位置を調整して網膜を完全に復位させ,意図的に作った網膜裂孔をレーザーを用いて光凝固させます。そして外した水晶体の代わりにプラスチックの眼内レンズを挿入します。これは白内障の場合と同じです。

人為的に作った網膜剥離を治療するにはガスタンポナーデという方法がとられます。これは眼球内の硝子体の代わりにガスを入れてその浮力で網膜を押しつけるのです。いろんな場合にこの方法は用いられます。簡単な場合は空気を使いますが,空気ではすぐ抜けてしまうので,移動術の場合には C3F8 と呼ばれる気体を使います。

実はこれが患者にとっては大変な苦痛です。ガスを有効に作用させるためには,軽いガスを眼球の後部の網膜に絶えず当てる必要がありますから,患者は術後から,うつ伏せ(prone) の体位を取らなければなりません。そのための特殊な枕が用意されています。

うつ伏せ用の枕

大学で設計して業者に特注したそうです。材質は何でしょう?硬いプラスチックが網状になったものです。これにカバーをつけて使います。

ベッドに置いた状態

胸が圧迫されるので小さい布団を二つに折って敷き,どうしても肘で支えるようになるので,両肘の所には肘パッドを置いて保護します。
眼を圧迫しないように特殊な眼帯をします。

特殊な眼帯

小さい穴がいくつも空いたアルミの眼帯で,眼を圧迫しないようにクッションがついています。

うつ伏せ状態

夜も昼もこれで通すことになります。とても苦しくてなかなか眠れません。 しかし,この姿勢が大事なのです。食事の時もトイレに歩くときも頭を下げていなければなりません。これが2週間以上続きます。


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