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映画「新・あつい壁」の普及を期して
「新・あつい壁」の試写を観る機会をあたえられ、船の進水式に立ちあうようなわくわくする気持ちで出かけた。試写会は調布市の東京現像所内で行われた。中山監督をはじめ、映画制作にかかわったごく内輪の関係者だけが試写室に集まっていた。
約2時間の上映時間は、あっという間に過ぎた。終わってから、時間の観念も、客観的視点も忘れて、映画に引き込まれていた自分に気がついた。涙があふれた。
それは、ふる里の家族とともに、いまなお社会の偏見と差別に苦しみ続けなければならない不条理に、いい知れぬ憤懣を覚えたことと、私たちと家族はそれを社会に向かって訴える術もなく忍耐をしいられている悲しみが、画面をとおして再び胸中によみがえってきたからである。
ハンセン病問題は、まだ多くの課題を残している。しかし、市民からすでに忘れ去られようとしており、社会には新たな差別が横行している。人権や人間の尊厳は、従来になく、けたたましく社会で叫ばれるようになってはいるが、上すべりしているとしか思えない。
この映画は、人の傲慢さを問い、社会の構造的差別の問題を再現して見せ、そして一人ひとりに深く本質的に問いかけている点で、私は深い感銘を受けた。
ぜひ多くの市民に観てほしいと思う。
全国ハンセン病療養所入所者協議会 事務局長 神 美 知 宏
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