(cache) 『関西散財』

歯が悪いため、やわらかいものしか食べられない。
また、胃の調子もよくなく、ちょっと重たいものを食べると、食後、必ず吐き気を催し、同行者に不愉快な思いをさせる。
このため、食べられるものが非常に限られる。
ここ最近は、そばしか食べていない。
かつてはラーメンも喜んで食べていたのだが、最近は恵比寿界隈の塩ラーメンの店と、とんこつラーメンの店のラーメンしか食べる気にならず、たまに間違って入った店で食べると例の吐き気を催すため、只今禁麺中。
ただ、時折、回転寿司くらいは入って食べることもある。

そんな食生活の中で、久々にどうしても食べたい、というものが出現した。
―――明石焼。
出し汁につけて食べる、玉子を多く含んだたこ焼きの仲間である。
どうしても食べたい。今すぐに食べたい。あたたかくてうまそうだ。

季節は冬、食べものに関してこんな気持ちになるのは非常に稀なので、下北沢界隈でも出す店があるのはわかってはいたが、関西に向かった。

まずはうまいものがありそうな気がしたので神戸へ。
しかし、くしくも、ルミナリエというイベントが開催中で、市街地においては人波にのまれて全くもって身動きが取れなくなり、探すどころではなくなった。

そこで、大阪に戻る。電話帳でそれらしき店を調べ、やはりミナミだ、と出向くも、ただ、地下鉄で行くと道すがらに店があった場合、見落としてしまうこととなるため、タクシーで。
しかし、街道沿いにそれらしき店はなかった。

ミナミで界隈を徘徊。
ようやく、千日前界隈のアーケードのはずれで店を二軒ほど見つけたのだが、明石焼の店は６時くらいに閉まる店が多いらしく、閉店しており、ありつけず。
さらに、南下して探すも、たこ焼きとお好み焼きばかりで、ここでもありつけず。

新世界界隈まで日本橋を経由してトロトロ歩き、空腹の腹いせに、串カツを買い食いし、そんなこんなで食欲は満たされてしまった。

ただ、なんとしてでも探さねばならない。
深夜も、レンタカーで移動。
難波に２４時間営業している店を見つけ、手続きを段取り、ピックアップ。
よくわからない道を東へ走るも、案外すぐに灯りが途絶え、人気もなくなり、明石焼の店などあるはずもなく、それでも赤い灯りを求めて大阪中をぐるぐる回り､その日は、かつて原付で襲来した際にお世話になった知人のお宅に突如襲来し、なだれ込む。

しかし、久々なので歓迎してくれるだろうと踏んだ当方の期待は完全な思い過ごしで、４時ごろ訪ねた私に彼は、「明日早いから勝手に寝てて」と告げ、毛布一枚を投げられ、ただこちらは仕事で会議テーブルやパイプイスの上で倒れるのは得意なので、タウンページを枕に、板間に寝た。

それにしても背骨がゴリゴリする。そして、真冬だから当然寒い。
そこで、枕にしていたタウンページを、朝焼けの光を頼りに開くと､界隈の駅前にビジネスホテルがあることが判明。
知人には黙って徒歩で移動。安眠を得る。

しかし、翌日、起きたら午後２時で、料金は当然加算されて請求され、さらにあわてて駐車場へ行くと、料金は５８００円。
こんなことなら役にも立たないレンタカーなど借りるのではなかったと、ＦＭ８０２を聴きながらのんきに走っていると、梅田新道界隈でスピードの出しすぎで捕えられ、罰金。
明石焼どころではなくなった。

結局、レンタカー返却の際に、ここでも延滞金を取られ、またガソリンを入れてなかったため怒られ、このため、明石焼などどうでもよくなり、ただ、それではいけないと、須磨浦公園でおもしろい乗り物に乗ったり、あまりにもホームから望む海が美しかったため飛び降りた滝の茶屋という駅を徘徊したりて明石まで出向き、なんとか、魚の棚という場所で板の上に鎮座するありがたき明石焼にありつき、目標を達成した。

それにしても、明石焼一つ食うのに１０万近くかかり、とんだ散財だった。

しばらく関西には行かない方がいいと考えている。