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[28503] 遊戯王OCG 実際にあった出来事を小説風してみた話。
Name: レギオン◆7da8aaa7 ID:748bbc6e
Date: 2011/06/23 19:27
注意書き

これは一話読み切りの小説です。実際に起きた事を元にして書いたノンフィクションです。原作やアニメのようにハイテンションな作風にしております。
この作品を見ても実際の遊戯王プレイヤーたちはこんなにハイテンションなプレイングをしないので誤解なさらないでください。
物語の大まかなあらすじ事態はノンフィクションではありますが、人物、団体、施設などは架空のものです。
知り合いにそっくり――――なんて場合もございましょうが、誰がなんと言おうとも架空にモノです。














俺の名前はヤクモ。普通の大学2年生。大学2年となると、学校にも慣れて、友達も出来て、4年間のキャンパスライフの中で最も楽しい時期である。この時期になると、サークルや部活動に精を出す者もいれば、大学生活と言う時間がとても取れる身分を利用して、自分探し等と言う名目で旅行三昧という者もいる。
まあ、それは個人の勝手だし、人がとやかく言う事は無い。確かに楽しい期間には間違いないのだが、現実を直視していないわけでもないし、3年4年になれば就職活動であちこちに飛び回らなければならなくなるのだから。だから、4年のうち1年くらいは遊んでいたって誰も文句は言わないだろう。


ちなみに俺はとても楽しい趣味を見つけている。



それが『遊戯王OCG』である。



遊戯王とは世界で最も売られているカードゲームの名前。その売上数はギネスにも乗るくらい半端じゃなく売れまくっている。
ルールは知らないけど、遊戯王というカードゲームは知っていると言う者は非常に多いのではないだろうか?
と言うか遊戯王を知らない人間はほとんどいないと言っていいほどメジャーなカードゲームなのだ。


カードゲームだけでは無く、それを題材にしたアニメもあるし、つい1年ほど前には『超融合・時を超えた絆』とか言う映画も上映した。そう言えばつい最近、DVDになったらしい。今度買うとしよう。
まあ、遊戯王に関しては知らない人間はほとんどいないと先に言ったのでこれ以上の遊戯王に関する紹介は意味をなさないのでさっさと話を進めようと思う。


遊戯王OCGを始めたきっかけは、ドラマティックでもなんでもない。たぶん誰でもそうじゃないか?なんて思えるほどつまらない理由である。
『友達がやっていたから、自分もやってみた。そしたらいつの間にかその友達以上にのめりこんでいた。』
実につまらない理由ではあるが、大概の人もそうだろう。まあ、その友達にこんな中毒性の高い資金ゲームをハマらせられ、多少の恨みはあるものの、教えてくれた事に関する恩義の方が大きかったりする訳で…………。


とにかく楽しいのだ。『遊戯王OCG』が。


大学生と言う身分のためにバイトや仕送りもしていて自由にできる個人資金に関しては中学生、高校生なんかよりも十分に潤っている。だから流行のデッキとかの試せるし、何回もデュエルしていたためにプレイングセンスも格段に上がったりで………


いつの間にかCSと呼ばれる大型非公認大会でも何回かベスト8以内に入り、デッキレシピと名前をネット内に晒す事が出来たりで………

まあ、自慢話はもういいや。

とにかく俺はそこら辺のプレイヤーなんかよりもずっとずっと強いって事を自負できる位のプレイヤーなのだ。
前書きが長くなってしまったが、これはそんな俺が味わった屈辱のデュエルである。
  






…………………………………………






……………………







……





日曜日のとあるカードショップ

そこは毎週日曜日には遊戯王OCGの公認大会が始まる。まあどこのカードショップでも同じであろう。別段珍しくもなんともない。それに出場した。
ちなみに遊戯王OCGの大会には、トーナメント式とスイスドロー式の二つのタイプが存在する。トーナメント式はその名の通り、勝ちあがって最後の一人になるまで試合をする勝ち抜き戦。このトーナメント式は負けたらそれ以上試合が出来なくなてしまう。一回負けたら試合終了なので、遊びに来ている子供たちにとってはあんまりよろしくない形式の大会であったりする。
スイスドロー形式は、総当たり戦………とは少し違うな。勝ち抜き戦と総当たり戦の良い所だけを取った形式と言ったら認識的に正しいだろう。初戦に負けても勝ち続ける事が出来たら上位に入賞出来る可能性もあるし、勝とうが負けようが最後までゲームを楽しむ事が出来る。それに勝った者は勝った者どうし、負けた者は負けた者どうしで実力の近い者どうしでゲームが出来たりもする。
勿論デメリットも存在する。店の店員さん。まあ、運営の人だね。その人たちの負担がとてつもなく大きい事だ。無理もない。一人一人、対戦結果の集計をしたり、それによって次の対戦表を作ったりで……。相当ゲームのルールに精通している者でないといろいろと不備が起こるシステムである。
ちなみにこの店はスイスドロー式。まあこの店の店員さんはカードゲームにとても精通している人だし、公平なジャッジもしてくれる良識ある店員さんなので問題は全くと言っていいほど無い。




「それでは遊戯王OCGの公認大会を始めます。」




ジャッジ……店員さんがみんなに声をかけた。スコアシートを渡され、俺たちは席に着いた。対戦相手は宿命のライバル。名前をA‘(エー・ダッシュ)と言う。


どこかの配管工のおっさんのダッシュコマンドではなく、某格闘ゲームの主人公の名前をパロったらしい。名前が何とも読みづらい……いや書きづらいために、この者をこれから『スズキ君』と呼ぶ事にしよう。理由は特にない。あえて言うのなら、スズキと言う名前の人間は星の数ほどいるので都合が良いからである。まあ、とにかくこのスズキ君は俺のライバルであったのだ。戦績はほとんど互角。お金のかからない平和な公認大会ではあるものの、親しい者と当たるとなんだか闘争心みたいなのが芽生える。俺もまだ若いな。



「ふふふ。初戦からお前に当たるとはな、スズキよ。運が良いぜ。不戦勝とはよ~。」


俺はスズキをディスった。遊戯王に限らずカードゲームと言うのは相手との心理戦を楽しむゲーム。
心を揺さぶってやれば思いもよらないプレイングミスをしてくれる場合もある。しかし相手をディすったり、無意味な遅延プレイで相手の精神を揺らがしたりする行為はあまり褒められた行為ではない。
絶対に見知らぬ人にはやってはいけない行為………いや、それ以前に人としてのマナーに反するので決してやらないように。
しかし、俺とスズキは冗談を言い合える間柄なので問題は無い。ようは冗談を言うのなら相手を選べと言う事だ。


「……………」
「おいおい。だんまりかよ?」


スズキの様子がおかしい。普段はちょっと挑発すればすぐに突っかかって来るような単純な奴だったはずなのに……。


「―――ヤクモ。」
「あん?
「―――今日の俺は運が良い。不戦勝だなんてな。」
「な、なんだと!」

まさか、挑発し返してくるとは……!面白い!


「では、対戦相手のサイド、エクストラを確認次第、先行後攻を決めて始めてください。」

ジャッジの開始の合図が出た。



「「決闘(デュエル)!!」」





ライフ8000



スズキ
ライフ8000





「俺の先行!ドロー!」

先行はスズキ。この遊戯王OCGは先行有利がもはや鉄板と化している。この勝負、明らかに不利なのは俺。だが、俺の手札はまさに俺のデッキ最強中の最強の手札。

(ふふふ。これで俺の勝ちは動かない。)

俺の使用デッキは【真六武衆】。

恐らくは現環境において、最強クラスのデッキタイプに間違いない。
その最強クラスのデッキタイプが持ちうる最強の手札が俺の手札に揃っている。


(何をしてきても無駄と言うものだ。)


俺の手札は後攻のために5枚。

《紫炎の狼煙》×2枚
《六武衆の結束》×1枚
《六武の門》×1枚
《ハリケーン》×1枚

の5枚だ。

六武衆使いがこの手札を見れば、チート呼ばわりされてもおかしくない鉄壁必殺の手札である。

次のターンでモンスターを引かなければ、先行ダストシュートは効かなくなる。
どんなに伏せてもハリケーンですべて吹っ飛ばす事が出来る。
戦闘破壊が出来ないモンスターを伏せたとしても、門から《六武衆の露払い》をサーチすれば次のターンで破壊が出来る。
《ライトロードハンター・ライコウ》をセットしたとしても、《真六武衆シエン》の身代わり効果を使えば、シエンの破壊はまのがれる。
《冥府の使者ゴーズ》があるかどうかは相手のプレイングで何となく分かると言うもの。
一番うざったいのはリクルーターであるが、最近の流行デッキでリクルーターモンスターを3枚積みにしているデッキは少ない。精々2枚くらいのものだ。それくらいだったら、六武衆特有の超展開力で無理やり破壊してくれる。
次のドロー次第ではワンターンキルも出来よう。たとえ出来なくても、フィールドに《真六武衆キザン》が2体以上でるのは確実。ならばその2体で《インヴェルズ・ローチ》をエクシーズ召喚すれば、場はさらに強固なものとなる。

まさに鉄壁。

だが鉄壁と言ってもこの状況でライオウを出されてしまえばかなりきつい。
ライオウはデッキからのサーチ行為を出来なくする能力を備わっている。先行で出されたらかなり危うい。しかし、このスズキと言う男、ライオウ等と言うモンスターを出す可能性はほぼゼロと言っても良いのだ。
このスズキと言う男、『遊戯王を楽しむためのデッキ』では無く、『遊戯王を勝つためのデッキ』を使用するタイプの人間なのだ。

ライオウは決して弱くは無い。だがいかんせん、除去カードが豊富な今の環境、一単体モンスターとしての性能だけでは現環境を乗り切る事が出来ない。今の環境はデッキからのサーチ、墓地からの特殊召喚を繰り返してゲームを操る高速デッキが現環境の主流。ライオウは強力なモンスターに違いないが、専用のサーチカードがあるわけでもない。専用の蘇生カードがあるわけでもない。あくまでも単体モンスター。そんなモンスターが次から次へと出てくる現環境を乗り切れるはずが無いのだ。

このカードを使用するのならば、このカードを守りまくるカードを搭載した【メタビートデッキ】、【パーミッションデッキ】でなければならない。だか、これらのデッキは安定性が無く、一度劣勢に追い込まれたら立て直す事が出来ない。一枚のカードで場を巻き返すと言った切り札級のパワーカードが存在しないのだ。

決して弱いデッキでは無いともう一度言っておこう。実際にそれらのデッキに負ける場合もある。

弱いデッキでは無い。だが百戦百勝出来るデッキと言えばそうではない。それは環境が物語っている。スズキが使うデッキは限りなく百戦百勝に近い結果を残す事の出来るデッキ。よってライオウを出す可能性は限りなくゼロなのだ。


「ふふふ。スズキよ。俺の手札は教えても良いくらい最強クラスの手札だぜ。次のドロー次第ではワンターンキルも出来よう。はははは!!」

俺はすでに勝ち誇っていた。顔がニヤけていた。だってそうだろう?誰だって勝利を確信した場合は誰だって等しく油断するはずだ。まあ、油断は言いすぎではあるがな。

「―――ヤクモ。」
「なんだよ♪」
「こう言ってはなんだが………」
「なんだよ。早く言えよ!」

何ともうざったい。こう言う、意味深な事を言っておきながら焦らして話さない奴は基本的にみんなに嫌われると教えておいた方が良いだろうか?

そんな事を思っていた時だった。

「お前は、カードを一枚も引く事なく負ける!確実に!」

「な、なんだって!」


バカな!まだ先行ワンターン目だぞ!

コ●ミは先行ワンターンキルに関しては凄まじいまでの規制をかける。今の環境で先行ワンターンキルを成功させる事の出来るデッキがあるのか!?

「見せてやるぜ!ヤクモ!これが……これが俺のデッキだッッッ……!!俺は魔法カード《封印の黄金櫃》を発動!このカードはデッキからカードを一枚選択し、2ターン後のスタンバイフェイズに俺の手札に加える。」


万能サーチカード!だがしかし、それが手札に来るのは2ターンも後。どのカードを除外するのか分からないが、このターンで俺に勝利する事は出来ない。
そう言えば、少し前に《ネクロフェイス》が準制限で、それと《酒天童子》を組み合わせた【デッキ破壊デッキ】が流行した。しかし、それらのパーツは軒並み規制をかけられて今は構築事態が困難なはず。


ならば一体何を除外すると言うのだ?


「俺はこのカード、《超古深海王シーラカンス》を除外する!」

「な……そのカードはッッ!!」


《超古深海王シーラカンス》
魚族最強のモンスターカード。その特殊能力は、出したら勝ち思わせるほどのパワーを持っている。だがそれはあくまで召喚できたらの話。シーラカンスはレベル7の重量級のモンスター。二体分のリリースが必要なはず。それに除外しただけ。おまけに先行ワンターンではないか。何をする気なのだ!?



「俺はさらに手札を一枚捨てて、装備魔法《D・D・R》を発動!除外されているモンスター一体を自分のフィールドに特殊召喚する!」


「くっッッ!」


まずい。非常にまずい状況だ。



スズキ
ライフ8000
手札3枚
フィールド《超古深海王シーラカンス》



「シーラカンスの効果を発動!手札の《レベル・スティーラー》を墓地に捨てて、可能な限り自分フィールドに魚族モンスターを特殊召喚する!俺はこの四体を特殊召喚するッ!!現れろ!フィッシュボーグ・ガンナー!!オイスターマイスター!!!」


2種類の魚族モンスターが2体ずつスズキのフィールドに特殊召喚された。僅かワンターンで五体ものモンスターを召喚するとは……!


「俺はLv3のオイスターマイスターにLv1のフィッシュボーグ・ガンナーをチューニング!!集いし夢が希望と勝利に手を伸ばす、光さす道となれ!シンクロ召喚!可能性の力!アームズ・エイド!!」


「《アームズ・エイド》……Lv4のシンクロモンスターかッ!!」


「この瞬間、墓地に送られた《オイスターマイスター》の効果が発動。このカードは戦闘以外でフィールド上から墓地へ送られた時、自分フィールドにLv1のオイスタートークンを残す!」


全く相手の場のモンスターが減らない。


「俺は、Lv1のオイスタートークンにLv1のフィッシュボーグ・ガンナーをチューニング!集いし願いが、新たな速度の地平へいざなう!光差す道となれ!シンクロ召喚!希望の力・シンクロチューナー!フォーミュラ・シンクロン!!」


「シンクロチューナー……。」


その名の通り、シンクロモンスターのチューナーだ。


「フォーミュラ・シンクロンの効果発動。このモンスターがシンクロ召喚に成功した時、デッキからカードを一枚ドロー出来る。まだだ!まだ続くぜ!さらに俺は、このLv2のフォーミュラ・シンクロンにLv3のオイスター・マイスターをチューニング!神海に潜みし竜よ、人魚の謳声を力にし、空をも飲み込む大波を起こせ。シンクロ召喚!逆巻け、神海竜ギシルノドン!そして、墓地に送られたオイスター・マイスターの効果発動。トークンを一体、場に残す。」


「………………」

さすがに声が出てこなくなってきた。


「まだまだ!!俺の場にはLv1のオイスタートークンがいる。俺は手札の《ハリケーン》を墓地に捨てて、墓地のフィッシュボーグを特殊召喚する!Lv5のギシルノドンにLv1のフィッシュボーグをチューニング!氷結の地に眠りし虎王よ! 氷河を砕いて轟き吼えろ! シンクロ召喚! 孤高の魂、氷結界の虎王 ドゥローレン!!」



スズキ
手札2枚
フィールド
Lv7《超古深海王シーラカンス》
Lv4《アームズエイド》
Lv6《氷結界の虎王ドゥローレン》
Lv1《オイスタートークン》



「俺はシーラカンスの効果で墓地に送ったレベル・スティーラーの効果を発動。ドゥローレンのLvを1下げて、墓地から特殊召喚する!そしてドゥローレンの効果を発動!ドゥローレンは自分フィールド上の表側表示で存在するカードを任意の枚数だけ手札に戻し、戻した枚数×500ポイント、攻撃力をUPさせる!俺が戻すのはこの2枚!」


そして、スズキは自分フィールドのレベルスティーラーとアームズエイドの二枚を選択した。

「バカな!レベルスティーラーはともかく、アームズエイドはシンクロモンスターだ!手札に戻す事が出来ないため、ドゥローレンの攻撃力もUPしない。ただのアド損だぞ!」

「忠告ありがとう。しかしこれで良いのさ。もうすでにアームズエイドの役目は終わった……。」

「終わっただと?どういう意味だ!?」

「その答えはこうだ!俺は再び、墓地のフィッシュボーグの効果を発動。先ほど戻したレベルスティーラーを捨て、墓地から特殊召喚!Lv5となったドゥローレンにLv1のフィッシュボーグをチューニング!現れろ!二体目の氷結界の虎王 ドゥローレン!」

「ドゥローレンを素材にして、二体目のドゥローレンだとッ!!?」

「まだだ!俺は再び、墓地のレベルスティーラーの効果を発動!ドゥローレンのLvを1下げ、墓地から復活。そして、再びドゥローレンの効果でレベルスティーラーを手札に戻す!」

「これは……さっきと同じ……!」

「そうだ!墓地のフィッシュボーグの効果を発動。レベルスティーラーを捨てて墓地から特殊召喚。そして、再びLv5となったドゥローレンにLv1のフィッシュボーグをチューニング!現れろ!三体目の氷結界の虎王ドゥローレン!」

「三体目だと……!!」

もはやスズキが何をしたいのか俺には理解できなかった。ただいたずらにループを繰り返すだけ。しかし、ルール上同名カードは3枚以上入れてはいけない。だから、これ以上ドゥローレンを出す事は出来ないはずなのだ。
それにスズキのフィールドはさっきから何も変わっていない。ドゥローレンを三体出した事は驚嘆に値するが、フィールドアドバンテージは何一つ変わっていないのだ。フィールドにいるドゥローレンは一体のみ。


スズキ
手札2枚
フィールド
Lv7《超古深海王シーラカンス》
Lv6《氷結界の虎王ドゥローレン》
Lv1《オイスタートークン》



「俺はシーラカンスのLvを1下げ、墓地からレベルスティーラーを特殊召喚!」

「またかよ!」

「まだまだ続くぜ!そしてドゥローレンの効果!レベルスティーラーを手札に回収!そして、墓地のフィッシュボーグの効果!レベルスティーラーを手札から捨てて特殊召喚。Lv6のドゥローレンにLv1のフィッシュボーグをチューニング!世界の平和を守るため、勇気と力をドッキング!シンクロ召喚!現れろ!!パワーツール・ドラゴン!!」


「パワーツールだと!」

なぜだ。なぜここでパワーツールを出してくる!?


「パワーツールの効果!1ターンに1度、デッキから装備魔法を3枚相手に見せ、その内の一枚を手札に加える事が出来る。俺が見せるのはこの3枚だ!」

そしてスズキはデッキから三枚の装備魔法を俺に見せてきた。それを見た時、俺は愕然とした。

「こ、これは……。」


装備魔法 継承の印
装備魔法 継承の印
装備魔法 継承の印


だった。

「さあ、この3枚の装備魔法からランダムに選ぶがいい!」
「ふざけんな。どれも一緒だろうが!………このカードだ。」
「OK。」


そう言う事か………奴は……スズキは無意味にドゥローレンを三体も出したわけではない。こう言う事だったのか……!

くそ!


【継承の印】
装備魔法
自分の墓地に同名モンスターカードが3枚存在する時に発動する事ができる。
そのモンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。


いわゆる蘇生カードの一つ。今では禁止カードとなっている《早すぎた埋葬》を調整したかのような効果。
このカードの恐ろしい所は、バウンスする事によって無限にモンスターを墓地から蘇らせる事が出来る所。だがそのためには墓地に同名カードを3枚落とさなければならなく、非常に発動条件がきついカード。
しかし、奴の墓地にはドゥローレンが3体。しかもドゥローレンの効果は自分のフィールドに表側表示で存在するカードをバウンスする効果を持っている。

つまり……

ほぼ無限の《死者蘇生》と化したのでる。


「くくく!さあ、一方的な殺戮劇の始まりだぜ。装備魔法、継承の印を発動!墓地に同名カードモンスターが3体いる時のみ発動可能。そのモンスターを墓地より特殊召喚する!俺の墓地には3体の《氷結界の虎王ドゥローレン》がいる。よって、ドゥローレンを特殊召喚!」


また復活した。


「墓地にいるレベルスティーラーの効果を発動。ドゥローレンのLvを1下げ、墓地から特殊召喚!ドゥローレンの効果。《パワーツール》、《継承の印》、《レベル・スティーラ―》を手札に戻す!そしてレベル・スティーラーを捨てて、墓地からフィッシュボーグを特殊召喚!もう一回、レベルスティーラーの効果を発動。Lv5のドゥローレンのLvを1下げて墓地から特殊召喚!Lv4となったドゥローレンにLv1のフィッシュボーグをチューニング!現れろ!TGハイパーライブラリアン!さらに、継承の印を発動!墓地のドゥローレンを復活!」



スズキ
手札2枚
フィールド
Lv5《TGハイパーライブラリアン》
Lv6《氷結界の虎王ドゥローレン》(継承の印装備中)
Lv1《レベル・スティーラー》
Lv1《オイスタートークン》



「ドゥローレンの効果!継承の印とレベル・スティーラーを手札に戻す!そして、スティーラーを捨てて、フィッシュボーグを蘇生!ドゥローレンにフィッシュボーグをチューニング!もう一度現れろ!パワーツール・ドラゴン!ライブラリアン効果により1枚デッキからカードをドロー!」


「こ、これは……」


「気付いたようだな!そうだ!これがハイパーライブラリアンと継承の印とドゥローレンによる無限ドローコンボだ!」

ドゥローレン効果でスティーラー継承の印を手札にスティーラーを捨ててボーグ蘇生し、ボーグとドゥローレンでパワーツールを特殊召喚。そしてライブラリアンの効果でワンドロー。
さらに継承の印を発動しドゥローレン蘇生。パワーツール対象にスティーラードゥローレン効果でパワーツール継承スティーラーを戻す。

完璧な無限ループに入った。


「ははははは!!ドロー!ドロー!ドロー!ドロー!ドロー!ドロー!ドロー!ドロー!ドロー!ドロー!ドロー!ドロー…………………!」



何枚も何枚もドローしやがる!まさか奴の狙いはエクゾディア!?いや考えられん!しかし、これでは………


「…………ドロー!………ん?………フン、随分と下の方にいたようだな。」

何を引いたのだ?奴の反応からしてなにかしらのキーカードのようだが………。





スズキ
手札16枚
フィールド
Lv5《TGハイパーライブラリアン》
Lv7《パワーツール・ドラゴン》
Lv6《氷結界の虎王ドゥローレン》(継承の印装備中)
Lv1《オイスタートークン》





「俺は、永続魔法!《エレメントの泉》を発動!このカードは自分フィールド上のカードが手札に戻った時、500ポイントのライフを回復する!」

なぜここでライフ回復のカードを出すのか……奴のプレイングに見とれていた俺はとても大切な事を忘れていた。それを思い出したのは審判の一言。

「あと10分でエクストラターンに突入します。」

「なッッッ!!!」

そ、そうか……そう言う事だったのか!

奴の狙いは………エクストラターンによるエクストラウィン!

「サ、サレンダー!サレンダーだ!俺の負けだ!」

このままではマッチ勝負に負けてしまう!さっさと負けて二戦目から瞬殺するしかない。瞬殺できたら、三戦目は恐らくエクストラターンに入るだろう。その時はマジカルアンドロイドを1ターンで出して、エクストラターンに勝利するしか方法は無い。大丈夫。エクストラデッキにはアンドロイドは入っているし、六武衆ではLv5のシンクロが作りやすい。まだ、なんとかなる。


ところがだ……

奴は……

あのスズキは……


「サレンダー?………そんなの認めるわけねえじゃねえか!ヴァーカ!」

「な、なんだと!」

「遊戯王OCGのルールにサレンダーなんてルールは無いんだぜ?いや、あるにはあるが、対戦相手はこれを拒否する事が出来る。サレンダーしたくば、このマッチ勝負自体にサレンダーするしかないな!?きゃははははは!!!」

「く、くそおおぉぉぉ!!」


確かに遊戯王のルールでサレンダーは拒否する事が出来る。だが……ここまであからさまなTODは………

ん?

そうだ。遊戯王での遅延行為は反則行為とみなされるのだ。このスズキの行為は明らかな遅延行為。時間も時間。ジャッジに報告し、奴を反則負けにするしかない。いや、間違いなく反則なのだ。この勝負は間違いなく俺の勝利だ。


「ジャッジぃぃぃ!」


俺はジャッジを呼んであらかたの説明をした。間違いなくやつの行為は遅延行為なのだ。この審判なら公平な判決を下してくれる。そう信じていた。しかし、返ってきた言葉は………

「これはシロ。反則行為ではありません。」

シロと言いやがった!


「なぜです!奴の行為は明らかに無意味な遅延行為です。なぜ反則では無いのです!?」

当然、俺は審判に喰ってかかった。ところが返ってきた話は、とても普通で当たり前の事であった。

「遅延行為と言うのは無意味に無限ループを繰り返し、時間を潰し事。しかし彼のフィールドを見てごらんなさい。」
「フィールド………?」
「あの永続魔法《エレメントの泉》の事だよ。」
「エレメント………はッッ!!

そうか、…………そう言うことか………

「ライフ回復行為を無意味な遅延行為とみなすわけにはいきません。よってこの判決はシロで続行と言う事になります。」

そのためのエレメントの泉………。ドゥローレンと継承の印による無限バウンスでの無限回復コンボ………そう言う事だったのか。

「ようやく事態が呑みこめたようだな!ははは。さて、時間ももう終わるようだぜ。」

さっきのジャッジに説明していた事で時間がいつの間にか過ぎていた。ジャッジからの俺にとっては死の宣告を言い渡された。

「時間になりました。エクストラターンに突入してください。」


エクストラターン
制限時間の40分を過ぎた時点でマッチの勝利条件を両プレイヤーが満たしておらず、且つデュエルの最中である場合に発生するルール。

1.そのターンの終了までデュエルを継続する。
2.ターン終了時に勝敗が未決の場合、エキストラターンに突入する。
i.相手ターンから数え始めて、3ターン実施する。
ii.3ターンが終了した時点で、ライフポイントが多いプレイヤーをデュエルの勝者とする。
(エキストラターンが終了した時点でお互いのライフポイントが同一ならば、そのまま継続してサドンデスに突入する。
ライフをコストとして支払うケースも含め、ライフポイントの差が発生したとき、多いほうを勝者とする)
                                                                    遊戯王wiki参照


「さて、このままターンエンドと言っても良いのだが………万が一、いや、億が一の可能性を考えておこう。次のドローでエクゾディアを揃えられたら今までの苦労が無意味になるからな。」

これ以上、何をする気なのか?これ以上止めてくれ。エクゾディアデッキなんかじゃないよ。俺のデッキは六武衆デッキだ。

「俺は、墓地のレベル・スティーラーの効果を発動!ライブラリアンのLv1を1つ下げて墓地から特殊召喚。ドゥローレンの効果でレベルスティーラーを手札に戻す。これでエレメントの泉の効果でライフを500回復。さらにスティーラーを捨てて墓地からフィッシュボーグを特殊召喚!今の今まで生き残っていたオイスタートークンにフィッシュボーグをチューニング!現れろ、フォーミュラ・シンクロン。フォーミュラ・シンクロンの効果は使わない。デッキが危ないんでな。しかしライブラリアンの効果で1枚ドロー!」

何をする気だ!


「Lv4となったハイパーライブラリアンにLv2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!闇に魅せられた魔術師よ、生命を蝕む魔の嵐を巻き起こせ!シンクロ召喚!現れろ!マジック・テンペスター!!」


「そ、そのカードは……」


「そうさ!マジック・テンぺスターの効果発動!手札を任意の枚数捨てて、捨てた枚数一枚につき魔力カウンターを乗せる事が出来る。そして、魔力カウンターを取り外し、外した数につき、500ポイントのダメージを与える。俺が捨てる枚数は15枚!」

「15枚だと!」

「こいつ自身、シンクロ召喚に成功した時に魔力カウンターを一個のせるのでな。よってこのカードに乗っている魔力カウンターは全部で16個。」

「あ、ああああ………」

「覚悟しろ。マジックテンぺスターの効果を発動!魔力カウンターを外し、外した枚数1つにつき、500ポイントのダメージを与える!俺が外すカウンターは16個!よってお前に9000ポイントのダメージを与える!喰らいやがれ!!」


「ぐあああああぁぁぁぁぁッッッッッッッッ!!!!!!


ヤクモ
ライフ0
敗北



「これで俺とお前の戦績は俺の1勝2分けで俺のマッチ勝利と言う事だ。ふはははは!!」


奴のデッキは、先行ワンターンキルなんかでは無かった……。

先行でマッチ勝負を制する……まさに先行マッチキルデッキ!



「く、くそおおおぉぉぉ!!!!」







……………………………………





…………………




……



あれから幾日かの日々が流れた。

あれから一度も俺はカードを触っていない。一枚もドローせずに敗北した俺はデュエリストとしてのプライドをズタズタにされ、まるでスズキを避けるように行きつけの店を避けるようになった。

だが、これで良かったのかもしれない。

俺ももう大学生。遊戯王は素晴らしいカードゲームいであったが、いつまでも遊んでいる訳にはいかない。
もうすぐ就職活動が始まる。
遊戯王に触れる日々はもうやってこないのかもしれない。
だからこそ……
あの圧倒的な敗北は、俺にとってはある意味において好機であったのだ。

そう自分に言い聞かせ………

俺は遊戯王から卒業した……。






終わり











あとがき

いかがだったでしょうか?店の中でそんな厨ニみたいにシンクロ召喚時にセリフを叫んだり
悲鳴を上げたりはしていませんのであしからず。
それに未だに遊戯王をやってますしね。
このデッキはかなり有名なデッキらしいのですが、自分は知りませんでした。
スズキが使って初めて気付いたくらいです。
恐るべき、魚族デッキ……!
と言うか作った人がヤバい!

大まかな流れ自体はノンフィクションです。
ちなみに作者はCS等の大型非公認に出た事はありますが、ベスト8以内に入った事はありません。


実際の人物、施設。団体はすべてフィクションですがWWW

ここまで読んでくださってありがとうございました。



[28503] 暗黒界
Name: レギオン◆7da8aaa7 ID:748bbc6e
Date: 2011/06/25 00:55
注意書き

この物語はフィクションです。
大まかな出来事自体は本当にあった話なのですが、この世界事態はフィクションです。
現実の世界に似て非なる世界。
デュエリストたちは普通にシンクロ召喚のセリフを吐くし、ダメージを食らえばうめき声を上げます。
遊戯王OCGのカードを使用するため、
『これ、俺のデッキと同じだ!』
なんて事もあるかもしれませんが、あしからずです。










やあ、俺の名前はヤクモ。みんな覚えてるかい?
前回のお話で俺は遊戯王を止めた……なんて事を書いたけど、まだまだ現役なんだよ。中毒性が高すぎて止まらないよ。本当に……。
まあ、それは良いや。
そう言えば、18日の土曜日に【STRUCTURE DECK -デビルズ・ゲート-】が発売されたのはみんなもう知っているよね。
俺はもう三箱も買ったよ。僕が遊戯王を始めたのは最初のデッキは【暗黒界】デッキだったからね。思い入れはきっと他の人たちよりもあると思うんだ。
早速、暗黒界デッキを組んでみよう……
とは言うものの、自分はデッキビルダーとしての才能がほとんどないと言っても過言でなくてね。嫌な言い方をすれば、いわゆるコピー厨と言う奴なんだ。
結果を残したプレイヤーのデッキをネット上から検索して、そのまんまコピーと言った感じにね。
人によっては不快に感じるかもしれないけど、自分は他者のデッキをパクル、もしくはコピーする事については何にも感じたりはしない。むしろどうして人によっては不快に感じるのかが分からない。
CSや選考会が近く、デッキがばれたくないのにネット上に載せられた……なんていう理由ならまだ分かるよ。いや、むしろそう言った理由なら不快になるのは当たり前だ。


ただ、それ以外の人たちだ。


そう言った連中がコピー厨を嫌う理由は主にこんな理由らしい。

「どうだ~!勝ったぞ~!俺ツエ~!」
「ふん。優勝者のデッキのコピーじゃねえか。そんなデッキ強くて当たり前だろう!JK!」

他者のデッキをコピーして、俺ツエ~って顔をしている奴がむかつく。とか言う理由らしい。


でもあえて言わせてくれ。



…………アホか?



優勝者……まあ、強者だね。その人のデッキをコピーしたくらいで遊戯王で勝てるのなら誰だって苦労はしないよ。
そんな単純なカードゲームなら誰だって世界チャンピォンのデッキをコピーするに決まっている。
遊戯王というカードゲームはデッキ自体に相性というモノがあるし、その相性の差を埋める、対策するためにサイドデッキと言うルールが存在する。
そして、そのプレイヤーの行く店によって環境が全く変わり、サイドデッキの構築だって変わる。
遊戯王はデッキをコピーしたくらいじゃ勝てない。きちんとした戦略や戦術を立てて、相手の心理を読みとらなければ勝てないゲームでもあるのだ。伏せカード1枚で逆転なんてよくある話だしな。

まあ、とにかく、勝てる人間と言うのはデッキをコピーしたから勝てるのではなく、きちんとその時の戦術、戦略を考え、サイドチェンジも行い、対戦相手の心理を読みとったからこそ勝てるのだ。
それは紛れもなくデッキの力では無くプレイヤーの運と実力による勝利だ。


だから俺はこう言ったデッキをコピーする行為を批判する奴は、基本的に負け犬の遠吠えだと思っている。
完全なオリジナルのデッキなんてモノが存在するかどうかも怪しいしな。
そもそも日本人の気質は、元々あった存在をよりハイクオリティの存在に昇華させていく民族である。と、どこかのお偉いさんの学者さんが言ったくらいだしね。
コピーしたデッキを環境によって自分色に染め上げて行くのもまた遊戯王の楽しみ方の一つでもあると俺は思っている。




―――ああ、なんか話がそれちゃったね。ごめんごめん。何の話だっけ………



そうだった。そう……暗黒界のストラクチャーデッキの話だったね。俺は組んでみたいんだけど、生憎と組み方が分からない。俺が暗黒界に手を染めた時は、《冥府の使者ゴーズ》が無制限で《天使の施し》が制限だった時だったから……。
つい最近まで【魔轟神】といった親戚さんみたいなデッキタイプとの混合型が流行ったみたいだけど、どうもその親戚さん、【魔轟神獣】と言ったペットを使役して以来、暗黒界の住人の立場が無くなったらしいんだよね。
今回のストラクチャーデッキで大幅なパワーアップを果たした暗黒界ではあるが、暗黒界だけのデッキになるのか、魔轟神を加えた混合型になるのか。はたまた、主な主要カードだけ入れた一風変わったデッキになるのか。
こう言った組み方が無数にあるデッキと言うのは本当に組むのが難しいのだ。


まあ、俺が暗黒界に非常に興味を持っている事はこれで分かったと思うけど、これから話す物語はそんな暗黒界デッキに興味がある者が『なるほど。こう言うのもあるのか』等と感嘆の声を上げるような出来事なんだ。


この物語で俺は当事者じゃなかったから解説役になるのだけれども、解説役って何だか脇役みたいであんまり好きじゃないんだよね。でもクリ●ンみたいなキャラクターは大好きだ。


まあ、そんな事はどうでもいいから、まずは聞いてほしい。
そして知って欲しい。
遊戯王のデッキと言うのは本当にカードの無限の組み合わせが存在する事を。
先入観に惑わされてはいけない事を。
何事もいろいろと試さないと道が見えてこない事を。



これは近所の店の公認大会で起きた、とあるデュエリストの物語である。




…………………………………





…………………




……






近所のカードショップ

「行け!ガイザレス!ダイレクトアタックだ!」

「うあああぁぁぁぁ!!!」


Win ヤクモ!


公認大会前に俺は親友のスズキと共に、デッキの調整を行っていた。
今回使用するデッキは【剣闘獣】デッキ。かつて世界を制したデッキタイプであり、今なお人気のあるデッキの一つだ。

「いや、強いなそのデッキ。」
「剣闘獣だからな。除去カードを大量に入れているからお前の墓地BFとの相性がそれなりに良いんだろう。それにトラップスタンや盗賊の七つ道具もうまい具合に噛み合った。」
「全くだよ。トラスタはとても強い。だが一番強いのは………。」


そう言って、俺のデッキの中にあるカードを取りだした。


「このカードだろう。」
「ああ、そうだな。」

そのカードとは、魔法カード《ヒーローアライブ》

《ヒーローアライブ》
通常魔法
自分フィールド上にモンスターが表側表示で存在しない場合、
ライフポイントを半分払って発動する事ができる。
自分のデッキからレベル4以下の
「E・HERO」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

「《E・HEROプリズマー》と剣闘獣の組み合わせは昔っからある鉄板的なデッキだったからな。この《ヒーローアライブ》のおかげで1ターンでガイザレスを出す事が出来るようになった。いや、それどころか状況によっては1ターンに2回、ガイザレスを特殊召喚する事が出来る。ライフを半分支払う価値のあるカードだ。」

今はエクシーズ召喚と言うルールも存在する。このカードと他の剣闘獣カードがあれば2枚の消費とライフ半分でガイザレスを特殊召喚出来る。その後、ガイザレス効果を使って、ダリウスを特殊召喚し、もう一回ガイザレスを特殊召喚するもよし。エクイテでベストロを回収するもよし、ダリウスでエクシーズ召喚するもよし、ラクエル、ダリウスでヘラクレイノスを作るもよし。一度コンボが決まればかなりのアドバンテージを稼ぐ事が可能なのだ。


ちなみにこれはみんな知っていると思うけど、《剣闘獣ダリウス》ってさ、このカードがフィールド上からいなくなったら、蘇った剣闘獣はデッキに戻っちゃうのだけれども、このカードと他の剣闘獣でエクシーズ召喚した場合、ダリウス効果で蘇った剣闘獣はデッキに戻らない。
つまり完全蘇生を果たすんだよね。知ってた?俺はつい最近までしらなかったよ。orz


「ちなみにお前はガイザを守るカード……トラスタとか何枚入れてんだ?」
「そうだな。今は聖槍が3枚、トラップスタンが3枚、七つ道具が1枚だね。でも正直な話、七つはもう1枚あっても良い。むしろ、トラスタと七つの6枚体制でもいいかも。」
「大袈裟じゃね?」
「まあ、大袈裟かもしれないけど、リアルな話、もう1枚七つは欲しい。」


特にここの店では………


この店では環境が群雄割拠しているのだ。それもそうだろう。この店は大きなお客から小さなお客までやって来るとても人気のあるカードショップ。
大会の運営やジャッジも店員も充実しているし、最大40人も座れるなかなか優良なカードショップでもあるのだ。
そんなにお客さんが来るんならいろんなデッキがやってきてもおかしくない。
ネタデッキで挑んでくる客もいる。
少し前にみたネタデッキ………いや、アレをネタデッキと言うのは失礼だな。


少し前に【神炎皇ウリア】デッキで大会に出たお客さんがいた。
一言、素晴らしかった。
最近はいろんな罠モンスターが増えているから、ウリアも特殊召喚しやすくなったらしいし、《マジック・プランター》と言う手札交換カードみたいなドローカードも存在する。今では《安全地帯》だっけ?強力なモンスターを守る永続罠。ウリアのように毎回アドバンテージを稼いでくれるモンスターにはぴったりのカードである。
最近では【六武衆】デッキに入れようかとも思っているのだ。
ほら、真六武衆シエンって、ただ存在するだけでアドバンテージを稼いでくれるだろ?結構アリなんじゃないかと思っているんだ。


それにしても、【安全ウリア】と言ってみれば強そうな気もするのだが、実際に使ってみるとそうでもない。事故率が半端じゃないし、罠モンスターって妙に癖があるっていうか、使いづらいっていうか……。
まあ、俺が使えないだけなのかもしれないが、そのお客さんはウリアに選ばれたデュエリストみたいだった。まるでGXの理事長みたいに。
あれは見事なデュエルだった。周りから拍手喝さいが送られたものだ。


まあ、過去の話はもういい。今はこれから行われる公認大会についての調整だ。七つ道具の有無だったな。あれはどのデッキに対しても腐りにくいし、入れてても良いかな。と言う結論に達した。


そんな中、スズキが声をかけてきた。


「やはり、【暗黒界】デッキ、いるかな~?」
「そりゃいるだろう。」


今月の遊戯王の目玉商品だ。誰だって新しいデッキを使ってみたいモノだろう。
あわよくば、自分が一番最初の暗黒界での公認大会優勝なんて考えている奴もいるかもしれないな。


「暗黒界のメタってなんだろう?」
「う~ん………墓地主体の特殊召喚だし……無難に《転生の予言》や《異次元の隙間》じゃね?」
「安直だな。」
「安直で悪かったな」


だが、どう言ったデッキになるのか見当もつかない。まさか、いるかどうか、強いかどうか分からないのに《暗闇を吸い込むマジックミラー》なんてカードを15枚しか入れられないサイドデッキに入れるわけにもいかないし……。


「まあ、対戦してみたら考えようぜ。今日はお金のかからない公認大会なんだからよ。」
「そうだな。」



そう結論に達した時、お店の人が声を出して、お客に言った。

「これより、遊戯王OCGの公認大会を始めます。参加するお客様はIDカードをお持ちの上、こちらまで来てください!」


「お、始まったな。」

俺とスズキはいつも通りのサイドデッキを組んで、IDカードを持って店員さんの元へと行った。


その時だ。


「おーい!ヤクモ!スズキ!」


俺たちを誰かが呼んでいる。俺たちは、その声の主を探すと、そこには懐かしい顔があった。

「おお、タロウじゃねえか。」



タロウ
俺とスズキのデュエリスト仲間。最近では一緒にチーム組んで大会に出た仲でもある。
カードプレイングセンスは始めたばかりというのもあって、俺やスズキにはちと及ばないが、その蛮勇ともいえるような強気のプレイングは相手プレイヤーを瞬殺に追い込むほど。
ブラフをものともしない性格で、よく地雷に引っかかるが、それでも天性の運というのであろうか。
ここ一番にキーカードを引き当てるような主人公補正を持っているようなプレイヤーである。
得意技 『トップ・デーモン』


「懐かしいな。最近、リアルが忙しいとか言って大会に出なかったから……。」
「今でも忙しいさ。サークル活動しているからね。」
「リア獣、乙。」
「でも、今日は暗黒界デッキが初めて出回る日だからね。さすがにデュエリストとして環境の把握くらいはしておこうかなって。」
「ふ~ん………今日は何デッキ?」
「【ジャンクドッペル】だよ。昨日作ったばっかりだから、サイドに何入れるか未だに決まっていない。まあそれは今日の環境次第かな?今日は楽しむだけにするよ。」
「ふ~ん……俺たちもそんな感じだ。暗黒界と闘ってみたいな。」
「そうだな。」


まあ、そんな感じに懐かしい仲間と再会し、公認大会が始まったのだ。参加人数は最大40人中40人。つまり満員である。抽選とかはなかったらしい。運が良かった。



「では、対戦相手に一礼して、サイド、エクストラ、サイコロ、コイン、トークン等、使う物を提示して、先行後攻を決めてその場でお待ちください。」



俺たちは初戦では当たらなかった。
まあ、40人もいて初戦で当たったらむしろ凄いかも。

俺は対戦相手に一礼した。勝負前にはゲームであっても礼をする。デュエリストとして、いや人としての最低限のマナーである。
対戦相手の子は、どうやら中学生くらいだろうか?少し小さな子であった。しかし、油断は禁物。彼のデッキのスリーブは見事なまでに統一されていたし、綺麗な多重キャラスリーブであった。ちなみに東方のキャラクター、藤原妹紅。………渋いね。
対戦相手の強さは、スリーブで何となく想像出来ると言うもの。この子は間違いなく出来る。


「では先行後攻を決めましょう。ジャンケンとサイコロ、どっちが良いですか?」


こう言っては何だが、俺はジャンケンというのが苦手だ。相手と声を合わせなきゃタイミングがずれるし、こんな事を言うのは何だけども、大学生で良い大人の俺が中学生のような小さな男の子と仲良くジャンケンしている姿をあまり想像したくない。
こう言う、選択権を相手に与えると、どういうわけか相手は絶対にサイコロを選んでくれる。今まで一度もジャンケンを選ばれた事は無い。やはりジャンケンはタイミングもそうだけど、みんな恥ずかしいのだろうか?


「それじゃ俺から振ります。」


コロコロ……


サイコロを二つ振って、目の大きい方が先行と言う事になった。


「俺の目は………6と2で8ですね。」


なかなか良い数字である。


「それでは次は僕が振ります。」


コロコロ……

対戦相手のこの目は……


「2と3で5ですね。」


俺が勝った。むろん先行を貰う。



ところが、この対戦相手の男の子………


「すみません。ノ―カン、ノーカンって騒いでも良いですか?」


ざわ……ざわ……


この子……なかなかやるな。一瞬、顎と鼻が尖がって見えたのは俺の気のせいだと思う。


「ははは。ビール瓶を投げるよ。」
「それは勘弁。では後攻をもらいます。」
「じゃ、俺は先行ね。」

なかなかノリのいい子であった。こう言う子は憎まれ口を言われても好感を持てる。



「では、準備が整った所から開始してください。」


ジャッジの開始の合図だ。



「「決闘(デュエル)!!」」






………………………………






…………………





……




「剣闘獣ラクエルとインヴェルズ・ローチでダイレクトアタック!」
「うわあああぁぁ!!!」

20分くらいで決着がついた。

結果的に俺が勝った。対戦相手の子は【ラヴァル】デッキ。墓地アドバンテージを重視するデッキタイプである。ラヴァルにもいろんなデッキタイプが存在するが、彼のデッキは《フレムベル・ヘルドック》からの《ラヴァル炎樹海の妖女》を特殊召喚し、《ラヴァルバル・ドラグーン》を特殊召喚。そこから、《ラヴァル炎火山の侍女》をサーチ、墓地に落とし、圧倒的な墓地アドを取るタイプのデッキのようだ。
俺の知り合いには、ジャンク・シンクロンとドッペル・ウォリアーを入れた【ラヴァル】を使う奴がいた。そのデッキとは少し違うようだったが………

まあ良いや。とにかく勝った。他の者たちは………



「おっ……おーい。スズキ!どうだった?」


スズキも終わっているようだった。

「勝ったぜ。お前は?」
「俺も勝ったよ。相手は何デッキ?」
「六武衆デッキ。」
「………よく勝てたな。」


六武衆と墓地BFの相性の悪さはネタにされるくらい有名だ。
墓地BFだと単純にシエンが倒せず、魔法、罠を無効にする効果はかなり厄介なはずだが……。

「先行、終末ゼピュロスからの、ダストシュート、弾圧、ゴトバ、が決まればな……。二戦目は普通に負けたけど。」
「鬼畜だな。」
「普通だろう?」


そう言って、お互いの情報を交換し合った。


「やはり暗黒界はたくさんいるな。俺の右も暗黒界、左も暗黒界だったぜ。特に左の暗黒界はミラーでな。先行取った奴がいきなり手札抹殺を使ったよ。」
「うわぁ……ご愁傷様だな。」
「全くだ。」

暗黒界はたくさんいるようだ。暗黒界の門を使った型、魔轟神の型………とにかくたくさんいる。

「そうえば、タロウはどうしているだろう?見に行こうぜ。」
「ああ。」

もう時間は30分くらい過ぎている。大体のデュエリスト達は試合を終了しているのだが、タロウは未だに対戦者とにらみ合いをしている最中である。

「まだやっているのかな?」

状況が分からないので推測するしかない。

対戦相手は高校生、もしくは大学生だろうか?身長が低めで眼鏡をかけている。結構良い面構えだったりする。

対戦者のフィールドは………

(おっ……《暗黒界の龍神グラファ》だ。と言うと、タロウの対戦相手は【暗黒界】か!)

タロウのターンが回ってきた。引いたカードはジャンクシンクロン。いいぞ。墓地を見てみるとドッペル・ウォーリア―が落ちてるし、使ったかどうか分からないけど、墓地にはスポーアとバルブが落ちてる。使っていなければまだ何とかなる。

そう思っていた。

だが、そんな俺の友人を応援する俺の心の声援はタロウの対戦者の冷たい言葉が砕いてきた。

「魔のデッキ破壊ウィルス2ターン目です。引いたカードを見せてください。」
「………ジャンク・シンクロンです。」
「では攻撃力1500以下のモンスターなので墓地に送ってください。」
「くっ!!」

そう言って、タロウはそのままジャンク・シンクロンを墓地に送った。

「ターン……エンド。」

タロウの手札はすでに0。これ以上、何もすることが出来ない。

「私のターン!ドロー!私は、暗黒界の術師スノウを召喚。バトル!暗黒界の術師スノウでダイレクトアタック!」

「うぐっ……!!」

「これで止めです!暗黒界の龍神グラファでダイレクトアタック!!」

「わああああぁぁぁ!!!」


Winner ユウキ!


タロウが負けた。

「タロウ!」

まさかタロウが負けるとは思っていなかった。しかも暗黒界を相手に。
一応、言っておくが暗黒界デッキをバカにしている訳ではない。暗黒界は出たばかりのシリーズデッキなのだ。まだテンプレ化もしていない、まさに未知のデッキ。だと言うのに、あらゆる大会で結果を残している【ジャックドッペル】に勝利するなど、一体、どんな構築をしていたと言うのか!?


「まさか………お前が負けるとはな……。」
「一体、相手はどんな構築をしていたんだ?」

俺とスズキはタロウの情報が欲しかった。あのユウキと言うデュエリスト、他の暗黒界の使い手たちと何やら一味違うようなオーラを纏っていた。

「分からない。初手がフルモンでね。決して弱くは無い手札だったんだけど、先行で魔のデッキ破壊ウィルスとマインドクラッシュを食らって………。」
「噛み合っちゃったわけか……。」
「うん。」

ジャンク・ドッペルにそれは鬼畜である。まあ、ジャンク・ドッペルもグローアップやスポーアを投入したりするんだから人の事言えないんだけどね。

「ただ、あのユウキって人のデッキ。どうやら、ゴルドとシルバを入れていないみたいなんだ。うんうん。他にもベージとかも。」
「なんだって?」
「入れていた暗黒界はスノウとスカ―とグラファ位だったみたい。ああ、あとブロンも出されたな。」

彼の構築は暗黒界特有の召喚方法、【捨てて特殊召喚】と言った構築をしていないそうだ。暗黒界の動きはそう言うものだと先入観を持っていた俺たちにとってはかなり衝撃的であった。

「他には?」

他の情報も聞きたがったのだが………

「おっと、これ以上は教えないよ。」


なんて言われた。


「どうして?」
「不公平じゃないか。相手はお前たちのデッキを知らないんだぜ。そんなのずるいよ。暗黒界って分かっただけでもかなりのアドバンテージなんだからよ」
「むむ……。」

それを言われたら少し弱い。

「それに、お前たちが彼に負けたら、俺が負けたのはしょうがない事だって自分に言い訳出来るしね。」
「そっちが本音か。」
「僕だけじゃないさ。きっとそんな考え方を持っている人間なんていくらでもいると思うよ。」

根暗な奴だ。

「まあ、確かにあのユウキってデュエリストは俺たちのデッキを知らないんだから、不公平だよな。」

スズキが言う。

「まあ確かに……。」

思わず頷いてしまったが、奴らの言う事は尤もだ、それにこれはお金のかからない公認大会。もう少し平和に行くか。

「分かった。あのユウキってデュエリストと当たるかどうか分からないけど、当たったら絶対に勝ってお前の鼻をあかしてやるぜ!」

俺はタロウにそう言って、この話はここまでとなった。そして丁度、運営の戦績の集計が終わったらしく、二回戦に突入という形になった。





…………………………………





…………………





……




「真六武衆シエンでダイレクトアタック!」


「ぎえええぇぇぇ!!!」


ヤクモ 敗北


さっきはタロウたちにかっこいい啖呵をきってみせたのにこの様である。
さっきのユウキという人ではなく、違うデュエリストに敗北した。案外現実とはこういうものかもしれないな。


「ううう………負けちまったよ。タロウたちはどうだろう?」

本当に瞬殺だった。そのため俺たちが一番早くに終わったようだ。

「ブラックローズ・ドラゴンの効果。墓地の植物族を除外して、その裏モンスターを攻撃表示にして、その攻撃力をゼロにします。」

表側表示になったのはライオウだった。

「バトル。氷結界の龍トリシューラでライオウに攻撃。続いて、ブラックローズ・ドラゴンでダイレクトアタックします!………」


どうやら、相手のデッキは光デュアルだったようだな。ライオウを守備表示にしていたところを見ると、対戦相手は相当、やられまくっていたのだろうな。


「ありがとうございました。」


対戦相手に礼を言って、タロウはこちらに来た。


「どうだった?」
「負けたよ。シエンはやはり強いな。」
「当たり前でしょうに。」

タロウは勝ったようだが、スズキはどうだろうか?



…………………



「BF-アーマードウィングでダイレクトアタック。」

「ぎょええええ!!!」

無駄な心配であったな。

どうやら勝利したようだ。

タロウに勝利したユウキと言うデュエリストも順調に勝っているようである。

そんなこんなで俺は勝ったり負けたりの繰り返しの試合を繰り返し、タロウも勝ったり負けたりの試合を繰り返した。
唯一、スズキだけが全勝だった。

そして時間が過ぎて行った。

スイスドロー。五回戦目。

参加人数が40人位らしいから、そろそろ準決勝みたいなものだろうか?

階段とかも無いみたいだし……

俺とタロウはもうドロップしていた。十分に楽しんだし、そろそろ観戦を楽しみたいと言う理由。
スズキにいたっては、全勝中なので今のところドロップする理由がない。

そして、とうとうユウキ氏とスズキの一騎打ちが始まったのだった。


「ではスイスドロー、5回戦目を開始してください。」

審判からの合図だ。



「「決闘(デュエル)!!」」


ユウキ氏
ライフ8000


スズキ
ライフ8000




スズキとユウキ氏の一騎打ち!

「私の先行!ドロー!」

先行はユウキ氏。スズキはいきなり不利な状況に立たされたが、スズキの手札も決して弱くは無い。

「私は、終末の騎士を召喚!このモンスターが召喚に成功した時、デッキから闇属性モンスターを墓地に送る事が出来る!私が送るのはこのカード。暗黒界の龍神グラファ!」

ユウキ氏はデッキからダイレクトにグラファを送る戦法を取った。

「そう言う事か………。」

スズキが何か気付いたようだ。勿論俺も気付いた。
このユウキ氏のデッキは、ゴルド、シルバと言った事故要因のすべとを廃止し、最低限の下級暗黒界モンスターでコントロールしていくデッキ。

「私はカードを三枚伏せてターンエンド!」


ユウキ氏
ライフ8000
手札2枚
フィールド、終末の騎士
伏せ、3枚


「俺のターン!ドロー!スタンバイ、メインフェイズに入るが……何かないか?」
「特に……」
「ではメインフェイズを始める。優先権の問題で俺が先にカードを発動する。」

そう言えば、つい最近の出来事を思い出した。

黄泉帝とHEROの対戦を見学していた時だ。
黄泉帝のデュエリストが、スタンバイフェイズに黄泉ガエルを特殊召喚して、相手はそれを通した。そして、メインフェイズを開始した時、HEROのデュエリストがこう言ったんだ、。

「メインフェイズ開始時、罠カード、ヒーロー・ブラストを発動!墓地のアナザー・ネオスを手札に戻して、その攻撃力以下のモンスターを破壊します。黄泉ガエルを破壊!」

とか何とか言って……

メインフェイズ1に移行したら、優先権の問題でターンプレイヤーが先にカードを発動するのに…………。メインフェイズ開始時なんてタイミングに撃てる魔法、罠は無いのに………それを通しちゃって……結局負けちゃって………。優先権のルールはきちんと覚えていた方が良い!絶対に!


「俺は終末の騎士を召喚!……召還無効は?」
「特に無し。」
「ではその効果で俺も闇属性モンスターを墓地に送る。俺はBF-精鋭のゼピュロスを墓地に送る。そしてゼピュロスの効果!400ポイントのダメージを受けて、終末の騎士を手札に戻し、墓地より復活!現れろ!BF-精鋭のゼピュロス!」

ユウキ氏はその召還も通した。どうやら召還反応型の罠系ではないようだ。スズキは、ユウキ氏の伏せが、召還反応型で無いと思ったのだろう。

「俺はさらに、BF-疾風のゲイルを特殊召喚!このカードは、自分の場にBFがいる時、手札から特殊召喚できる!」

よし!いいぞ!これでLv7のシンクロモンスターが呼べる。この状況でブラックローズを特殊召喚して、場をリセットすれば、スズキの圧倒的のアドバンテージだ。


「それはちょっとまずいね。………ゲイルの特殊召喚時、速攻魔法発動!《暗黒界に続く結界通路》!墓地のグラファを復活!」

「な、なんだと!?なぜこのタイミングで!?」

スズキは驚いたようだが、ユウキ氏からすれば当たり前のプレイングだったのかもしれない。ブラックローズが特殊召喚を許してしまう今のこの状況、発動出来るカードを発動しておこう。、と思ったのか?だがこのプレイングは、スズキの判断をさらに強固なものとした。


(間違いない。あの伏せカードに召還反応型のカードは無い。)


「俺はゲイルの効果を発動!グラファ攻守を半分にする!」

「その効果にチェーン!罠カード!《闇のデッキ破壊ウィルス》を発動!」

「な……そ、そのカードは!」

「このカードは攻撃力2500以上の闇属性モンスターをリリースして、相手フィールドと手札の魔法か罠のどちらかを破壊する………私は、罠カードを選択!」

「くっ!!」

スズキの手札にあった、《神の警告》《王宮の弾圧》《激流葬》が纏めてふっ飛ばされた。

「手札は………終末の騎士、闇の誘惑、BF-暁のシロッコ……ですか。」

スズキの読み通り、ユウキ氏の伏せカードは召還反応型では無かった。だが、この状況は………。


「俺は……Lv4のゼピュロスにLv3のゲイルをチューニング!現れろ!ブラックローズ・ドラゴン!」
「召還無効は無い。」
「ではブラックローズの効果。すべてのカードを破壊する!ブラックローズ・ガイル!!」
「了承。終末の騎士と、伏せカードのサイクロンを破壊する。」
「ターンエンド!」



スズキ
ライフ7600
手札3枚
フィールド0
伏せ0


単純なアドバンテージを考えるなら一応スズキの方が有利だ。だが、相手との心理戦が勝利のカギを握るカードゲームにおいて、ピーピングと言う効果は、凄まじいほどのアドバンテージをもたらす。
スズキの手札には闇の誘惑がある。このカードは手札交換カード。だが、今スズキはウィルスによってドローしたカードすべてを表示しなければならない。
手札交換カードは基本的にカード効果処理後に行うと言うのが遊戯王でのセオリーだが、今そのセオリーが逆にスズキを苦しめていた。

「私のターン!この瞬間、闇のデッキ破壊ウィルスの効果が1ターン経った事になります。」

あと2ターンだ。

「私は、暗黒界の狂王ブロンを召還。そしてブロンを手札に戻し、墓地からグラファを復活!グラファでダイレクトアタック!」

「うぐううッッッ!!!」

大ダメージだ。

「残りライフが4900で相違ありませんか?」
「あ、ああ。ない。」
「では私は手札を一枚伏せてターンエンド。」


ユウキ氏
ライフ8000
手札2枚
フィールド、暗黒界の龍神グラファ
伏せ、1枚


「俺のターン!ドロー!」
「闇のデッキ破壊ウィルスの効果!ドローしたカードを見せてください!」
「……ゴットバードアタックだ。
「ゴットバードアタックは罠カード。よってウィルス効果によって破壊!」
「くっ!」


「スズキ!」

思わず声をかけてしまった。ここまで一方的とは……

「大丈夫だ。まだ、大丈夫!」

スズキは何とかそう言うが、正直旗色は非常に悪い。

「俺はモンスターをセットして、ターンエンド。」

あのセットカードは明らかにBF暁のシロッコ。さすがにユウキ氏も気付いているだろう。

「私のターン!この瞬間、闇のデッキ破壊ウィルスの効果2ターン目になります。」

あと、1ターン。何とか耐えろ!スズキ!

「私は再びブロンを召還!バトル!暗黒界の狂王ブロンで裏守備モンスターに攻撃!」
「ぐ!」

暁のシロッコが破壊された!

「続いて、グラファでダイレクトアタック!」

「うわあああぁぁ!!」

「スズキ~!!」

もう後がない!あと一回グラファの攻撃を食らったらお終いだ。

「私はこれでターンエンド。」


ユウキ氏
ライフ8000
手札2枚
フィールド、ブロン、グラファ
伏せ1枚


スズキ
ライフ2200
手札2枚
フィールド0
伏せ0



「俺のターン!ドロー!」
「闇のデッキ破壊ウィルスの効果で手札を見せていただく!」
「俺がひいたカードは魔法カード《強欲で謙虚な壺》!ウィルスの効果は受けないぜ!」
「良いでしょう。」
「それじゃメインフェイズに入る。俺は強欲で謙虚な壺を発動!このカードはデッキの上から3枚めくってその内の一枚を手札に加える。その代り、このターンは特殊召喚出来ない。」
「良いでしょう。その発動に対してこちらは何もありません。」」
「それでは3枚めくる。」

ここで何かしらのカードを引かなければスズキは確実に負ける……。

一枚目、終末の騎士

駄目だ、少し遅い。

二枚目、死者蘇生
これも駄目、このターンは特殊召喚出来ないのだ。

三枚目……

ここで何かしら引かなければスズキは終わる。

三枚目……

「ブラックホールを引いたぜ!」


「おおお!!」

俺とタロウは思わず声を出してしまった。この局面で除去カードを引き当てるとは……。

「俺は魔法カード《ブラックホール》を発動!フィールド上のモンスターすべてを破壊する!」

「うぐ!」

ユウキ氏の場のモンスターがすべて破壊される。

「俺は、終末の騎士を召還。その効果でデッキから大杯のヴァーユを墓地に送る。このターンは特殊召喚出来ないからな……終末の騎士でダイレクトアタック!」


「うわああ!!」


ユウキ氏にはじめてダメージを与えた。

「これでターンエンドだ。」


ユウキ氏
ライフ6600
手札2枚
フィールド0
伏せ1枚


「いい気になるなよ!私のターン!ドロー!」
「この瞬間、ウィルス効果は3ターン目を迎える!よって、このターンでウィルス効果は終わりだ!」
「その通りだ。だが、それでも私の勝利は揺るがない。私は、暗黒界の術師スノウを召還。フィールドのこのカードを手札に戻し、墓地のグラファを復活!」

「また復活したか。」

恐ろしいモンスターだ。手札にあっても墓地にあっても強い。
しかもこの蘇生力はかつてのグリーン・バブーンの戦慄を思い出させる。

「グラファで終末の騎士に攻撃!」
「うわあああぁぁぁ!!」
「スズキ!」

ヤバい。もうライフが800しかない。これ以上はもう……

「私はカードを一枚伏せてターンエンド。」

スズキのターンだ。ライフ的にもう後がない。何を引けば勝てるのか?いくら倒しても奴の手札にはスノウのカードがある。あのカードがある限る、グラファは無敵だ。

スズキ
ライフ800
手札1枚
フィールド0
伏せ0


「俺のターン!ドロー!」

ウィルス効果が切れた今、相手に見せる必要もないし、今まで温存していた闇の誘惑を使う事も出来る。だが、それも次のドロー次第。

「俺は魔法カード、闇の誘惑を発動!デッキから2枚カードをドローし、闇属性モンスターを一枚、除外する!」

闇属性のカードを除外しなければ、手札はすべて墓地に行く。

「このドローにすべてをかける!デッキからカードを2枚ドロー!」

はたして……

「俺は、BF-大杯のヴァーユを除外する。」

よかった。闇属性モンスターをドロー出来たようだな。

「俺は墓地にいるBF-大杯のヴァーユのモンスター効果を発動!このカードと墓地のBFモンスターを除外し、エクストラデッキからそのレベルの合計と同じシンクロモンスターを特殊召喚する!俺は、ヴァーユとシロッコを除外!現れろ!BF-アームズウィング!」

少し遅かったが墓地BFデッキらしい動きになってきた。

「今更そんなカードが出て来ても遅い!俺のグラファの攻撃力は2700.攻撃力2300のモンスターに何ができる!」

ユウキ氏の言う通りだ。スズキは何を狙っているのだ。

「俺の墓地には、ゲイル、ゼピュロス、終末の騎士の闇属性モンスターが3体………。」

「ま、まさか……!!」

ユウキ氏の顔が蒼くなってきた。そうだ。この状況……墓地に闇属性が3体だけいる時のみ召喚可能のモンスターが………

数あるカードの中で行き過ぎた性能を持つカードはみんな禁止、制限、準制限と制限をかけられる。あのカードは制限モンスターの中でも、最強と言われるモンスター……。



「現れろ!ダーク・アームズ・ドラゴン!」

「く、まさか……ここで……!」


ダーク・アームズ・ドラゴン。
その性能は制限カードの中でも最高クラスのモンスター。
特殊召喚条件はあるものの、回数制限の無い破壊効果に属性的に恵まれている闇属性。
さらにその攻撃力の高さから、出したら勝てるとまで言わしめた、現環境の中でも最強クラスのモンスターの一体だ。


「この状況で……ダムドだとッッッ!!

ユウキ氏が驚くのも無理は無い。このデュエル、ユウキ氏の勝利は九分九厘決まっていたのだ。
だと言うのに、一回のドローですべてが逆転した。まさにデステニードロー!

「ダムドの効果発動!墓地の終末の騎士を除外し、右側の伏せカードを破壊する!」
「くっ!ミラーフォースが……」
「ダムドの効果!ゼピュロスを除外し、もう一枚の伏せカードを破壊!」
「チェーン発動!暗黒界に続く結界通路!墓地のブロンを守備表示で特殊召喚!」

ここで少しスズキは悩む。ユウキ氏の手札は1枚。それが暗黒界の術師スノウである事は分かっている。
そして、自分の墓地のモンスターはゲイルのみ。ゲイルを温存しておくべきか……。

「バトル!アームズ・ウィングでブロンを!ダムドでグラファをそれぞれ攻撃!」

「ぐあ!!」


スズキは墓地のモンスターを温存する事にしたようだ。

「カードを1枚伏せて、ダーンエンド。」


ユウキ氏
ライフ6500
手札1枚 (暗黒界の術師スノウ)
フィールド0
伏せ0

スズキ
ライフ800
手札0
フィールド ダムド、アームズ
伏せ1


見事なまでの大逆転である。この勝負はスズキが貰ったと、誰もが思った。だが、ここで俺たちは当たり前の事を忘れていたのだ。
スズキはデステニードローによって逆転を果たした。ならば、向こうも同じようにデステニードローをする可能性を。
そう言う可能性がある事を忘れて浮かれていたのだ。


「私のターン!ドロー!私は、《強欲で謙虚な壺》を発動!デッキの上から3枚引いて、その内の1枚を手札に加える!」


さっきのスズキと同じケース……スズキは息をのんでユウキ氏のドローを見守っていた。


「2枚目。ダーク・アームドドラゴン」


なかなかいいカードである。丁度、彼の墓地も闇三体。だが如何せん遅い。次にスズキが攻撃力1400以上のモンスターを出したら終わりだ。さすがにスノウをセットするわけにもいかないだろうしな。


「2枚目、暗黒界の斥候スカ―。」


現時点では意味の無いカードだ。
恐らく、彼のデッキには最低限の暗黒界しか入っていないのだろう。


「3枚目………。」


最後のカードだ。これですべてが決まる。


「……ブラックホールのカードを引いた!」


「なっ!!」

スズキから驚嘆の声が上がる。自分も引いたとはいえ、相手もこのタイミングで引くとは誰も思ってはいなかったのだから。
当然、俺もタロウも声が出なかった。


「ふはははは!!私にもどうやらデステニードローと言うモノがあるらしいね!ブラックホールを選択!」


一発で選択した。


「そして、すぐさま発動!魔法カード《ブラックホール》!場のすべてのモンスターを破壊!」


「うわ!!」


スズキのフィールドにいた、ダムドとアームズが破壊され、墓地に………マズイ!ユウキ氏の手札は……!


「私はさらに暗黒界の術師スノウを召還!」
「……召還無効、召還成功時は……ありません。」
「ではバトルだ!スノウでダイレクトアタック!」
「ぐおおおおおぉぉぉッッッ!!!」



「「スズキー!!」」


スズキの伏せカードはブラフで伏せた2枚目の《強欲で謙虚な壺》。この状況ではどうしようもなかった。



Lose スズキ





………………………………




…………………




……




その後、サイドチェンジを果たしたスズキだが、向こうも同じようにメタカードを入れ、それがうまい具合に噛み合ってしまった。
思うようなドローも出来ず、攻撃力2700という数字を単純に超える事も出来ず、スズキは2戦目も敗北した。


「暗黒界………強かったな。」
「ああ。」
「そうだな。」

俺たちがドロップしたと言う事もあって、スズキも3位以内に入れる可能性を蹴ってドロップした。


暗黒界の龍神グラファ
最初、テキストを読みとった時は《マスター・ヒュペリオン》のような分かりやすいパワーカードではなかったために、甘く見ていた。
このカードは間違いなく強い。
特に罠カード重視や、ライコウ等の伏せ重視を破壊する《暗黒界の雷》との相性も良く墓地にあっても手札にあっても強い。
そのくせ、その蘇生力はかつてのグリーンバブーン、いや、それ以上のしつこさだ。


確かに強いカードであり、暗黒界は強いデッキであった。

だが、それ以上に………


「あのユウキって人……強かったな。」
「ああ。強かった。」


暗黒界モンスターは手札から捨てられて特殊召喚するモンスターという先入観が強かった。単純に、取引、雷、レイヴン等で手札から捨てて特殊召喚するデッキとばかり……。
彼のデッキはそんな俺たちの先入観を完全に打ち砕いた形をしていた。
終末でダイレクトに落とした後、他の暗黒界モンスターや結界通路で蘇らせるデッキ。
単純かつ合理的。
レイヴンや取引、ゴルドやシルバなどのコンボ性をすべて捨てて、極限まで事故率を低くしたデッキ……。

そんな印象を持っていた。


「暗黒界………組んでみたいな。」
「ああ、そうだな。」


これまで培ってきた先入観は今回の大会ですべて砕かれた。

すべてカードにはいろんな可能性があるのだ。

どこぞの主人公ではないが、この世に本当に無駄なカードなんか無いのかもしれない。

だから、みんな。

先入観にとらわれず、インスピレーションが湧いたのならすぐに実行してみるんだ。

何事も試さなければ分からない。
強いのか、弱いのか。

ユウキ氏のデッキはそれを証明してくれた。

彼のように単純なコンボのみに目を奪われてはいけない。

そう、彼のデュエルを見て教えられた気がする。


「よし!それじゃ俺は来週は六武衆で出るぜ!安全地帯を3枚積みした六武衆を……!」

「おいおいヤクモ。暗黒界で行くんじゃねえのか?」

「俺にはまだあのデッキは早いよ。まだいろんなデッキのタイプが存在するみたいだし、少し待ってみようと思う。その内誰かが組むだろう。」

「待っても誰も現われなかったら……?」

「その時は俺があのユウキ氏のデッキを丸パクリして試合に勝つ。勿論、自分色に染め上げてな。」

「さすがコピー厨!」

「うふふ。褒めても何も出ないぜ。」

「それじゃ、来週の大会に向けて、カットピングだぜ!俺たち!」

「「カットビング~!!」」




そうして、今回の大会は終わったのだ。

今のこの時期は遊戯王OCGの群雄割拠の時代。

まだ見ぬデッキも多い。

元々あったデッキを環境に合わせ、改造し、自分色に染め上げる。

それが遊戯王の楽しい所でもある。

だから試そう。

いろんなカードを。

ゲームにおいても人生においてもやってみなくちゃ分からないんだから。

だから……




カットビングだぜ!俺たち!





終わり










あとがき

身内から結構高い評価を貰って続きをかけと言われたので書きました。
本来は1話読み切りだったはずなのですが、シリーズ化するかもしれません、
暗黒界強いですね~。
特にグラファ。アレのしつこさは異常です。デッキ破壊ウィルスとの相性も良く、
デッキによっては壊滅的なダメージを与えれるかもしれません。
この物語に出てきたユウキ氏。
彼のデッキは本当に私たちを驚かせました。何せ暗黒界が出た当日に披露したデッキでしたから。
他の暗黒界の使い手たちは、取引を使ったり、レイヴンを使ったりしたデッキで、前々からあったデッキなので、新鮮味に欠けてました。
そんな中の彼のデッキは本当に素晴らしかったです。
協力してくださった、身内の方々もありがとうございました。

少し、訂正。
俺のミスで、スズキはブラックローズを出さざるを得なかったのです。
本来なら、あそこでシンクロなんかしないのですが……
サーセン



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