【社会】笑顔を幸せを奪った戦争許さない 祖母の悲しみ、13歳が詩に2011年6月24日 09時58分 「祖母が持つ1枚の写真、忘れられない笑顔」−。沖縄県の戦没者追悼式で23日、浦添市立仲西中学校2年の嘉味田朝香(かみだともか)さん(13)が平和の詩「幸せの一枚」を朗読。教師だった祖母と教え子との集合写真を題材に、多くを語らない祖母の顔から戦争の傷を想像した。 小学3年のころ、家族から戦争の話を聞く宿題で、嘉味田さんは祖母翁長(おなが)豊子さん(85)の家に急いだ。祖母が無言で棚の奥から取り出したのは古びた写真。沖縄戦直後とみられ小学生20〜30人と笑顔で納まっている。 「大切な生徒たち、みんなどうなったの」。嘉味田さんの問いに顔をしかめる祖母。長い沈黙の後、答えた。「どうして戦争なんかするのかねー。戦争さえなかったらみんな幸せだったのに」 沖縄戦で学校を失い、砂浜に文字を書く青空教室もした祖母。戦後の混乱を生きてきた祖母の心の傷に触れた気がした。 児童の笑顔は一見、幸せそう。だが戦争が子どもたちの愛する家族や夢を奪ったのではないか。「戦争の傷痕は体や建物だけではない、心の傷もまた沖縄に残る戦争の傷痕。祖母もその一人」と詩に託した思いを語る。 頭上を飛ぶ米軍機の騒音を聞くたび、今もどこかで戦争が起きていると感じるという。「戦争がなくなることでこの写真は本当の幸せの一枚になる」と、戦争根絶への意思をタイトルに込めた。 ■平和の詩 全文 「幸せの一枚」 私の祖母が持つ一枚の写真 何年も経つけれど 忘れられない笑顔 忘れられない言葉 小学生の頃 先生がだした宿題 家族から戦争の話を聞いてくること 急いででかけた 祖母の家 祖母は何も言わず 棚の奥から 一枚の写真を 取り出した 古びた写真に写る 子どもたち 満面の笑顔の男の子 勝気そうな女の子 おとなしそうにはにかむ笑顔 豪快に口をあけた笑顔 たくさんの笑顔 一人一人の目は 未来を見つめ キラキラ輝いている 「この人だぁれ?」 真ん中に写る女性を指さし 祖母に尋ねる 祖母は寂しそうに笑い 「わたし」 一言だけ答えた 一人一人の顔を 愛おしそうに 懐かしそうに 指でなぞるように 眺めながら 時が止まる 「この子たちは?」 ふたたび祖母に尋ねる私 「おばあちゃんの生徒たち」 「大切な大切な生徒達」 「みんなどうなったの?」 祖母は答えなかった ずっと黙ったままだった 幼い私にも 祖母の深い悲しみが 深い苦しみが 痛いほど伝わった 長い沈黙のあと 祖母は 「どうして戦争なんかするのかねー 戦争さえなかったら みんな幸せだったのに…」 私はもう一度写真を見た みんな笑っている 幸せそうに笑っている 愛する家族がいたはずだ たくさんの夢があったはずだ 大人になるその日を夢みていたはずだ その笑顔を 幸せを 奪った戦争を 私は許さない 絶対に許せない 祖母は多くを語らない 私はあれ以来 あの写真を見てはいない 祖母の家に眠る一枚の写真 それにこめられた祖母の思い もう何年も経つけれど 忘れない 私はずっと忘れない 私たちが忘れない限り 平和は続くだろう だからこそ 忘れてはいけない この地には たくさんの笑顔が たくさんの夢が 眠っていることを (中日新聞) PR情報
おすすめサイトads by adingo
|