ファイバーの伝搬特性

ファイバー中を伝搬する光は幾何光学によって説明できる。ファイバーのコアの屈折率をn1、クラッドの屈折率をn2(< n1)、光の伝搬角をθとすると伝搬定数βは下式で表される。

伝搬定数β

ここでk0=2π/λは真空中の平面波の伝搬定数である。伝搬定数βのとりうる値の範囲はk0n2≦β<k0n1となる。導波モードの光の電磁界はほぼコア内に閉じ込められて伝搬するが、一部の光はクラッド層にしみ出すため、伝搬定数もコア内とクラッド内を伝搬する平面波による伝搬定数の中間値をとると考えられる。これを規格化したパラメータである規格化伝搬定数b

規格化伝搬定数b

と定義される。ここでΔは比屈折率と呼び、下式で定義した。

比屈折率差

また、『ファイバーの構造』で触れた導波路パラメータ(規格化周波数)Vは

導波路パラメータ

で定義される。ここでaはコア半径、dcoreはコア径、NAcoreはコアの開口数(NA:Numerical Aperture)を示し、下式で定義される。

NAcore

規格化伝搬定数bと導波路パラメータVの式を用いると、ステップインデックス(SI: Step Index)型ファイバーの分散関係の近似曲線は、規格化されたパラメータVbのみで書くことができる。基本(単一、シングル)モードのときは下式で表される。

導波路パラメータ最終

上式で表した規格化伝搬定数bをVパラメータで表すと下図のようになる。

導波路パラメータと規格化伝搬定数

図1 LP01、LP11、LP21の分散曲線

コア径dcoreを小さくするとVパラメータ値が下がり、伝搬可能なモード数が減少し基本モード(LP01)のみ残る。ステップインデックス(SI)型ファイバーであれば、コアの屈折率や波長を変えたとしてもVパラメータの値が変わるだけである。図1の横軸の値を変えて縦軸からbの値を読み取り、bの式から実際の伝搬定数βを求めることができる。伝搬定数βを求めることにより群速度や群速度分散を知ることができる。

次にファイバーの具体的な数字を入れて各パラメータを求める。

SI型シングルモードファイバー

  • Δ=0.3 %
  • n2 = 1.460
  • d = 6.5 μm

におけるλ= 1030 nmでのコアの屈折率n1、NAVパラメータ、規格化伝搬定数b、伝搬定数βを求めると以下のようになる。

  • n1 = 1.464
  • NA = 0.113
  • V = 2.249
  • b = 0.51
  • β= 8.9×106

SI型Ybシングルモードファイバー

  • Δ=0.95 %
  • n2 = 1.460
  • d = 2.8 μm

の場合は各パラメータは以下のようになる。

  • n1= 1.474
  • NA = 0.203
  • V = 1.735
  • b = 0.34
  • β= 8.9×106