原発

文字サイズ変更

福島第1原発:1号機のベント「失敗」 弁開放は未確認

福島第1原発1号機のベントの経過
福島第1原発1号機のベントの経過

 東京電力福島第1原発1号機の水素爆発の直前に行われ、成功したとされる格納容器の圧力を下げるための「ベント」(排気)が、実際には失敗した可能性が高いことが分かった。ベントのためには弁を開けなければならないが、東電関係者は「十分に開かなかった」と証言、東電本店も「弁開放は確認できていない」と述べた。専門家も「データから、いったん開いた弁が閉じたと読み取れる」と指摘している。

 1号機の原子炉建屋内にはベント実施前から水素がたまっていた疑いがあると専門家は指摘しており、ベントの「失敗」が爆発に直接結びついたのかは不明。だが、国際原子力機関(IAEA)に7日提出した政府の報告書には「ベント成功」と記載されており、事故調査・検証委員会で議論となりそうだ。

 東電などによると、1号機では3月12日午前0時6分、格納容器内の圧力が上限値(427キロパスカル=約4.2気圧)を上回る600キロパスカルに達し、吉田昌郎所長がベントの準備を指示。政府も午前6時50分、原子炉等規制法に基づくベントを東電に指示し、午前9時ごろから作業が始まった。

 ベントでは格納容器内の水蒸気や水素ガスが、底部にある圧力抑制プールから配管を通り、空気の圧力で弁を開放するAO弁(建屋地下1階)、通常は電動で作動するMO弁(建屋2階)を通過し、排気筒から建屋外に放出される。AO弁には小弁、大弁と呼ばれる二つの弁があり、どちらかが開けば水蒸気は排気筒へ向かう仕組み。

 東電は午前9時15分ごろ非常用のハンドルを手動で回しMO弁を25%程度開けることに成功。同9時半ごろ小弁の開放を目指したが、付近の放射線量が高く手動での作業を中止し、同10時17分、中央制御室から機械操作で小弁開放を試みた。

 この直後の同10時半、建屋外の放射線量が一時的に急上昇し、放射性物質が放出されたとみられるが、30分後には元の数値に低下。一方、格納容器の圧力は下がらず、ベントの効果を確認できなかった。このため午後2時ごろ、協力会社から借りた仮設の空気圧縮機(電動空気入れ)を使い、大弁に空気を送ることで弁を開放する作業に切り替えた。

 その後、格納容器の圧力は作業直前の755キロパスカルから530キロパスカルまで下がり、午後3時ごろに東電は「午後2時半にベント成功と判断」と発表。経済産業省原子力安全・保安院も追認した。

 しかし、東電関係者は「弁の開放は十分ではなかった」と証言した。圧縮機による作業では空気の圧力不足で大弁が全開に至らなかったといい、弁の開放を示す計器「リミットスイッチ」にも変化はなかった。また、格納容器の圧力は午後3時ごろ下げ止まり、同3時36分の水素爆発まで上昇に転じていた。

 東電は「圧力が低下したので成功と判断した。大弁の開放は確認できていない」と説明。原子力安全・保安院は「ベント成功の判断をしたのは東電で、政府として言及していない」と釈明するが、政府はIAEAへの報告書に「東京電力がベント成功と判断した」と記載し提出している。【杉本修作、町田徳丈、池田知広】

毎日新聞 2011年6月24日 2時30分(最終更新 6月24日 3時37分)

PR情報

スポンサーサイト検索

6月24日福島第1原発:健康調査 県民203万人に30年間実施
福島第1原発:1号機のベント「失敗」 弁開放は未確認写真付き記事
福島第1原発:1号機のベント「失敗」 問われる説明責任写真付き記事
6月23日福島第1原発:2号機原子炉格納容器に窒素を注入へ
福島第1原発:原子力賠償審に和解仲介機能 官房長官発表
福島第1原発:開閉表示誤り、汚染水が素通り写真付き記事
福島第1原発:東電社員の父持つ小6の手紙 全国から反響写真付き記事
6月22日福島第1原発:浄化処理また中断 濃度、想定まで下がらず写真付き記事
福島第1原発:安全委、原発指針抜本改定へ 見直し着手
福島第1原発:「首相聴取も」事故調・畑村委員長写真付き記事
福島第1原発:土壌処理費用を福島以外も負担 文科省通知
福島第1原発:IAEA調査団長 原発の安全に「情熱を」
福島第1原発:注水量減らし汚染水発生抑制 1、2号機写真付き記事
福島第1原発:飯舘村役場、福島市で業務開始写真付き記事
福島第1原発:汚染水、新移送先を検討 月内あふれる恐れ
6月21日福島第1原発:空の庁舎、怒りこらえ 飯舘村役場最後の日写真付き記事
福島第1原発:「福島で暮らしてみなさい」東電社長へ知事写真付き記事
福島第1原発:地下ダム計画文書 東電が作成を認める
福島第1原発:小名浜港カツオ初水揚げ中止 風評被害懸念
福島第1原発:東電が測定値訂正 二重扉開放後の線量写真付き記事

原発 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド

毎日jp共同企画