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@the現場

【@the現場】

市議報酬 日当か月額か

2011年06月19日

 ◆対馬の市民団体、条例改正請求

 対馬市の市民団体が、市議の報酬を月額制から日当制に変えるよう条例改正を求めている。福島県矢祭町議会が3年前に日当制を導入しており、対馬市議会の動きも注目される。議員の仕事はボランティアか、生活費を稼げる専門職か。議員の働きをどう捉えるかで、報酬をめぐる意見は分かれている。

 団体「お金がかかるは言い訳」
 市議「今もボランティア同様」

 対馬市の男性市議(43)は15日夜、3泊4日の三重県への「出張」から戻った。「日当制ではやっていけない。今でさえ支出の方が多いのに」。前日、市民団体「対新会」が財部能成市長に条例改正を直接請求した。本会議や委員会、市主催行事、議長が認めた活動などを勤務日とし日当3万円を支給する内容だ。

 市議は、対馬の漂着ごみ問題について学会報告した今回の「出張」に、交通や宿泊などで10万円ほど使った。5月も国土交通省や経済産業省への要望で上京した。いずれも議会が認めた活動ではないため、出費は持ち出しという。

 スポーツ大会や老人クラブの集まり、冠婚葬祭にもよく顔を出す。対馬は南北に長く、市議が住む最北端の上対馬町から南部の厳原町までは約75キロ。乗用車で往復し、ガソリン代に月3万円近く費やす。

 市議の月収は議員報酬28万8千円、政務調査費1万円。父(70)と食品会社を経営しているが、従業員3人に給料を支払うと、利益はほとんど出ない。所得税、年金の掛け金などを払い、生活費に充てられるのは約5万円。1期目で次の選挙資金も心配だが、貯金もない。「ボランティアに等しい。日当制なら、金持ちしか議員をやれなくなる。それで庶民の気持ちを代弁できますか」

 一方、対新会の友納徹代表(61)は「政治家はお金がかかるというのは言い訳」と言う。勉強に身銭を切るのは当然。冠婚葬祭に通うのは「能力に自信がない証拠」。日当制なら本当にやる気のある人が手を挙げるのでは、と考える。

 対新会は2007年、議会のチェックを始めた。人口は10年で約6千人減。公共事業は激減し農業や漁業の衰退も目立った。だが、07年度に議員が提案した議案は2件。島の重要政策に関わるものではない。

 08年12月にも、今回と同じ条例改正を直接請求したが、全会一致で否決された。財部市長は「議員活動に支障を及ぼす懸念がある」と月額制妥当の立場だった。今回も反対の議員が多いと見込まれるが、友納代表は「エコが叫ばれる時代、経費の節約に励み『省エネ政治』を訴える議員がいてもいい」と話す。

 対馬市を除く県内20市町の議会事務局に聞いたところ、日当制が議論のテーマになった議会はない。ただ、すべての議会が定数の削減か月額をカットしており、議員報酬が見直しの対象となっている。(花房吾早子)

《山梨学院大の江藤俊昭教授(地域政治論)の話》
■活動を公開し 住民が評価を

 議員報酬は立候補の意欲に影響を与える。多様な層から議員が出るには、ある程度生活できる給料が必要だ。住民はどこまで議員の仕事を知っているか。額だけ見て「高い」と指摘していないか。議会は活動を積極的に公開し、住民は責任を持って評価する。それが翻って、議員が反省する機会となるはずだ。

 ◆議員報酬をめぐる全国の動き 

 福島県矢祭町議会が08年、全国で初めて日当制を導入した。鳥取県江府町でも同年、住民団体が条例改正を直接請求したが、議会が否決した。熊本県五木村議会は10年、成果主義を採用した。毎月の基本給に質問や議会改革への取り組みなど貢献度に応じ額を加える。福島県会津若松市議会は08年8月〜10年12月、市民も交え報酬を見直した。市民から要望や相談を聞く時間も政策につながれば公務とし、年間169日の活動で770万円を上限額と決めた。

 ■対馬市議の年収
※政務調査費、条例が認める交通費と手当は除く
※議長や副議長などの役職がない場合

<現行の月額制>
議員報酬 28万8千円×12カ月=345万6千円
期末手当 101万9520円(6月と12月の合計)
→年収 447万5520円

<対新会が提案する日当制>
議員報酬 3万円×40日=120万円
期末手当 なし
→年収 120万円
※福島県矢祭町の日当制に習った計算

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