2011年6月17日3時1分
東京電力福島第一原子力発電所の事故による福島県民への放射線の影響について30年以上にわたって見守る福島県の調査案の概要が、わかった。7月上旬にも空間線量が高い地区の住民代表を対象に、先行的な予備調査を始め、内部被曝(ひばく)も含めた被曝線量を実際に測るとともに、問診票での被曝線量の推計も出す。
住民の放射線影響評価をめぐり、長期間に及ぶ大規模調査は世界でも初めて。
予備調査の概要は、今月18日に、実施主体の県や関係省庁の担当者のほか、放射線医療の専門家らが集まる健康管理調査検討委員会で決まる見通し。
予備調査は本調査の準備に加え、県民の不安を和らげるのがねらい。県は調査を始める前に、検査内容に限らず、住民の疑問に答える説明会を開く。
県民健康管理調査案によると、予備調査で実施する被曝線量の測定は、飯舘村や浪江町など空間線量が高い地区の少なくとも計約100人の住民が対象。内部被曝も含めた全身の被曝線量がわかるホールボディーカウンター(WBC)検査や放射性ヨウ素がたまりやすい甲状腺の検査、体内に放射性物質が入ったかどうかをみる尿検査などを行う予定だ。
対象者は、子どもが含まれるよう配慮して、各自治体に選んでもらう方針。ただ最終的に約100人にとどまるかは流動的だ。
検査を受ける県民には、3月11日から約2週間分、毎日、分単位でどの場所にいたのか、屋内、屋外、車内にわけて問診票に記入を求める。屋内の場合は放射線の透過率が違うため、建物が木造か鉄筋コンクリートかも記してもらう。こうした行動記録と、それぞれの場所にいた日時の空間線量をもとに、専門家が一人一人の被曝線量を推計。実測値と比較する。
問診票では、家庭菜園で採れた野菜や果物、自宅で飼育する家畜の乳、井戸水などをどれぐらい摂取したかも尋ねる。女性には妊娠や授乳の有無も質問する。
県は7月末をめどに予備調査を終え、遅くとも秋には本調査に移る計画だ。まず全県民の約203万人を対象に、県外の避難者も含め、問診票を郵送などで届け、行動調査などで個別の被曝線量の推計から実施する。
詳しい健康調査を全県民に実施するのは物理的に難しく推計被曝線量の比較的高い住民などに限定して行う方向。項目は尿や血液の検査、喫煙など生活習慣の調査、こころの健康度評価などが検討されている。子どもの甲状腺がんの有無を調べる検査も実施する方針。得られた情報は福島県立医大にデータベースを構築し少なくとも30年にわたって経過を見守る計画だ。
詳細調査の対象外の県民でも、心配なら健康相談や心のケアを受けられるような窓口の整備も検討する。(大岩ゆり、林義則)
福島第一原発事故により放たれた放射性物質は今後の動きは。対策はどうするのか。チェルノブイリの事故と照らし合わせて考える。