日経スペシャル「ガイアの夜明け」 3月1日放送 第457回 新幹線がやって来た!~進化する超特急 その光と影~
今年3月、北は青森から南は鹿児島まで、ニッポン列島が新幹線でつながる。全線開通する九州新幹線と、去年、新青森駅まで全線開通した東北新幹線。 これまでも新幹線の延伸に合わせて、多くの地方都市が「街おこし」に躍起になってきたが、今回はスケールが違う。JR、地元自治体、そして地元企業の力が入っている。 人口が縮小し、国内消費も長期低迷する中、“新幹線ビジネス”は新たな起爆剤に なりうるのか?新たに走る新幹線を使い、魅力ある「旅のプラン」を作る旅行会社や、 「悲願」にかけた地元企業たちの熱き取り組みを追う。 いっぽう、世界に冠たる技術の結晶であるニッポンの「新幹線」。今回、東北新幹線は 将来、時速320キロを予定する国内最速の新型新幹線「はやぶさ」を導入する。番組では、デビュー前から「はやぶさ」の走行試験の模様を独占取材してきた。最近では、海外への「新幹線輸出」も取りざたされているが、最新技術に加え、日本初の車両サービスも提供されるという、「次世代新幹線」の実力とはどれほどのものなのか?人口減少時代を迎えるニッポンで、新幹線ビジネスが直面する、光と影を追う。
去年の12月4日、東北新幹線が八戸~新青森駅間が開業。八戸以北に、新幹線が開通した。来年3月5日には、東京~新青森駅間を約3時間10分で結ぶ新型車両・E5「はやぶさ」が登場。国内最速320キロを誇る、新幹線がデビューする。(320キロでの走行は2012年度末を予定)新幹線の最高時速アップは15年ぶり。この新型新幹線、国内最速にも関わらず、低騒音。低電力、そして乗り心地も向上している。そこには、ニッポンの最先端の鉄道技術が注ぎこまれていた。たとえば新型新幹線は、パンタグラフが1つだけ…。省電力、低騒音の新幹線初の技術が投入されている。現在、試験走行は終盤に入り、営業開始までテスト走行が続けられている。また、ハヤブサには「グランクラス」というグリーン車のワンランク上の車両も登場。新幹線史上、初めての「おもてなし」があるという。果たしてその実力とは?
地方に新幹線を開通させて、それでおしまい…という従来の発想ではなく、地域の特産物、観光資源などの掘り起こしを、JR東日本は地元企業と連携。「地域再発見プロジェクト」と称して、JRが自ら地方の中に入り込んで、町おこしをする。こうした取り組みは、JRとしては初めてだという。今までは、新幹線を通して、集客の企画は地元や他業種任せだった。JR東日本は運輸事業から脱却を目指し、「非運輸事業」に注力している。ルミネ、アトレ、エキナカ…。2017年度には、売上高構成の実に4割までにする計画だ。採算性の低いローカル線を維持するためにも、「非運輸事業」で稼ぎ新幹線が通る地元との「共存共栄」は、欠かせない。新青森駅ではなく、街の中心にある青森駅にこうした施設を作るのは、地域活性化に貢献するという大きな決意の表れなのだという。現在、エキナカなどで培ったセンスを持つチームが、こだわりの素材と、味にはうるさい地元の寿司店などを探しだし、都会からの観光客にも買ってもらえるような商品にするよう、 企画指導に入っている。JR東日本が、ヒト、カネを出して薦める地方密着プロジェクト。開業後しばらくたって新幹線の「利用者減、赤字…」という轍を踏まないために、地元に入り込んで奔走するチームを追う。
3月12日に全線開通する九州新幹線。新大阪から鹿児島までを一気に結ぶ。そこで、高齢者を得意とする旅行代理店「クラブツーリズム」は3月中旬以降に東京から九州まで新幹線で横断する珍しい旅行ツアーの開発に乗り出した。すでに、日本列島を新幹線で横断するツアーを販売し売れ行きも好調。「飛行機嫌い」「時間や金にも余裕がある」高齢者にニーズがあったのだ。新商品の開発を任命されたのは、入社5年目の福原聡一(27)さん。新たな観光地域やホテルを探しに九州へと乗り込む。しかし・・タイミング悪く起きた相次ぐ鹿児島での火山の噴火。「客離れ」も懸念される。風評被害がとぶなか客を呼ぶ商品を作らないといけない・・。果たして福原さんは、どんなツアーを作るのか。
九州新幹線開通に再生をかけた町がある。熊本県北部に位置する「玉名市」。 この玉名市に新幹線の停車駅「新玉名駅」」ができる。開業すれば博多から玉名市までは、約30分で結ばれる。玉名市は、古くから温泉で栄えた町。しかし、三井・三池炭鉱が閉山してからは、人は減り、全盛時には40軒以上あった温泉旅館はいまや11軒。町からは活気が失われた。「この町に再び元気を」そう意気込む男性がいた。温泉旅館「竹水苑」の草村幸寛専務(43)。「これ以上、温泉旅館を減らしたくはない。新幹線停車をきっかけに町を再生したい」。「新幹線開通は100年に1度のチャンスなんです」町の再生のため草村さんが目につけたのが、玉名市で多く採ることができる「薬草」だった。草村さんは、新幹線開業に合わせた薬草を使った旅館料理の開発に勤しむ。そうした中、市や地元の人々も草村さんに協力。新幹線開通を機に町が「薬草」で一致団結し始めた。