臓器売買:容疑の開業医ら逮捕へ 見返り1000万円

2011年6月23日 15時0分 更新:6月23日 15時25分

臓器売買疑惑の構図
臓器売買疑惑の構図

 慢性腎不全と診断された開業医の男が、生体腎移植を受けるための腎臓を提供してもらう見返りに暴力団組員らに現金1000万円を渡したとして、警視庁組織犯罪対策4課は23日、臓器移植法(臓器売買の禁止)違反容疑などで開業医ら5人の逮捕状を請求した。臓器移植を巡る不正の摘発は、06年の宇和島徳洲会病院事件以来2例目。暴力団関係者の関与が明らかになるのは初めてで、移植医療の現場に深刻なダメージを与えることは必至だ。

 日本移植学会の倫理指針で生体腎移植は原則親族間に限られるため、開業医は元組員と養子縁組を偽装し、板橋中央総合病院(東京都板橋区)で手術する手はずを整えたが、組員らと金銭トラブルになり、直前に手術を断念。その後、別の人物を臓器提供者(ドナー)として他の病院で手術を受けたとされる。

 逮捕されるのは、東京都江戸川区でクリニックを経営する開業医の男(55)▽開業医の妻(48)▽飲食店店員の女(37)▽指定暴力団住吉会系組員(50)▽ドナー候補だった元同会系組員(47)。

 捜査関係者によると、開業医と妻は09年10月~10年4月、元組員が腎臓を提供する謝礼として、仲介役の組員と女、元組員の3人に6回にわたって計1000万円を供与。同年1月には元組員と養子縁組したとする虚偽の届け出を江戸川区役所に提出した疑いが持たれている。

 開業医は05年ごろから腎不全を患い、腎移植を受けようとした。しかしドナーが見つからなかったため、09年夏ごろ、知人だった飲食店店員の女に相談。女は同居していた組員を通じて元組員を紹介したという。

 開業医は結局、元組員をドナーとする移植手術を断念したが、臓器移植法は臓器提供の対価としての金銭授受やその約束を禁じており、実際に手術が行われなくても違法になる。罰則は5年以下の懲役か500万円以下の罰金。

 生体臓器移植を原則として親族間に限っている日本移植学会の倫理指針には、ドナーが養子の場合の特別な規定はないが、学会によると、養子は親族とみなされる。宇和島徳洲会病院事件を受け、学会は倫理指針を強化し、公的証明書による親族確認や金銭授受がないかのチェックを徹底するよう定めた。各病院は倫理指針などに基づいて移植のルールを定め、手術の可否を判断している。【川崎桂吾、前谷宏】

 ■宇和島徳洲会病院事件■

 06年10月、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で生体腎移植を受けた患者の男(当時59歳)と内縁関係だった女(同)が、「義理の妹」と偽ってドナーとなった女(同)に現金30万円と新車を提供したとして、臓器移植法(臓器売買の禁止)違反容疑で逮捕され、97年の同法施行後、初の逮捕者となった。男と内縁の妻は、懲役1年、執行猶予3年、ドナーも罰金100万円の有罪が確定した。親族確認が不十分だった病院の管理体制も問題になった。

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