23日の沖縄全戦没者追悼式で、沖縄県浦添市の仲西中2年の嘉味田朝香(かみだ・ともか)さん(13)が、自作の詩「幸せの一枚」を朗読した。沖縄戦を風化させず、悲劇を繰り返させないとの思いを込めた。
「私の祖母が持つ一枚の写真 何年も経(た)つけれど 忘れられない笑顔 忘れられない言葉」
小学3年の時に学校の宿題で、祖母(85)に沖縄戦の体験を尋ねた。祖母は何も言わず、1枚の写真を嘉味田さんに見せた。
「古びた写真に写る 子どもたち 満面の笑顔の男の子 勝気そうな女の子」
祖母は小学校の元教員。写真の二十数人の子どもたちは、祖母の教え子たちだった。
「みんなどうなったの?」
嘉味田さんの問いに、祖母は長い沈黙の後で答えた。
「どうして戦争なんかするのかねー 戦争さえなかったら みんな幸せだったのに……」
つらそうな祖母の言葉と表情に触れ、嘉味田さんは、一見幸せそうにみえる写真に、祖母の悲しみが込められているのを知った。
「大人になるその日を夢みていたはずだ その笑顔を 幸せを 奪った戦争を 私は許さない 絶対に許せない」
戦後66年がたった今も、沖縄には多くの米軍基地がある。「戦争が終わったのに、なぜこんな広い基地が残っているのか」という疑問がある。しかし、一方で米軍普天間飛行場に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが新たに配備されるとのニュースも報じられる。日本は平和に見えても、世界のどこかで「戦争が続いている」との思いも募っていく。
「私たちが忘れない限り 平和は続くだろう だからこそ 忘れてはいけない この地には たくさんの笑顔が たくさんの夢が 眠っていることを」
世界から戦争がなくなった時に、子どもたちが笑う祖母の写真が、本当の意味で「幸せの一枚」になると信じている。【井本義親】
毎日新聞 2011年6月23日 13時28分(最終更新 6月23日 13時33分)