磯村のよさは、積極的に攻撃に絡む動きだ。ケネディと玉田の間のスペースにうまく入っていく動きが自らの先制点、そしてPKをもらった3点目につながった。高く評価できる。
この日のグランパスはポジションを自在に変える流動性や、それによって生み出される連動性に欠けていた。全体的に選手同士の距離が遠いため、相手DFに思うように守られていた。グランパスらしい5、6人が絡むプレーというのは右サイドを攻めたボールが左サイドにまで回り、阿部のクロスで終わった後半14分の1度だけだった。
磯村自身も、サイドからの攻撃時に、藤本とともに前にいすぎて、ダニルソンが孤立していた。田中隼や阿部にパスが渡った瞬間には、前線で待つだけではなくパスを受けるために顔を出し、味方にパスコースを増やす動きが必要だろう。
ただ、短い間隔での試合が続くところで、こうして普段はベンチスタートだったりベンチ外だったりというフレッシュな選手が活躍するのは、磯村個人の自信となるばかりではなく、チームにとっても大きな力になる。リーグ戦で優勝を狙うためには、コンディションが悪いときに勝ち点「3」を取れるかどうかが大きな分かれ目になるからだ。特にレギュラーのほとんどが25歳以上というグランパスにあって、20歳の若手の躍動は意味がある。
中2日で迎える次節の浦和戦は、ダニルソンが累積警告で出場停止となる。ストイコビッチ監督が誰を代わりにピッチに立たせるかは、分からないが、磯村のように若い力が出てくるのか。楽しみにしている。 (元日本代表、グランパスMF・平野孝)
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