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震災後の東北企業アンケート 経済復興はまだら模様

仙台港では国際コンテナの取り扱い業務が再開され、経済復興に向け弾みがつくと期待される=8日、仙台市宮城野区

 河北新報社が東北の主要企業を対象に行ったアンケートで、震災後の主力事業の需要について「増える」「減る」「分からない」が3割前後で拮抗(きっこう)した。業種によっても見方はばらつきが出ており、東北の経済復興はまだら模様となる可能性がある。
 全体の需要見通しはグラフの通り。「増える」「どちらかといえば増える」の合計は36.2%と最も多いが、「減る」「どちらかといえば減る」も計30.5%あった。「分からない」も同じような割合となり、先行きに対する企業の「迷い」もうかがえる。
 業種別では建設・住宅が復興需要を当て込み、「増える」「どちらかといえば」が計42.9%に上る。「分からない」も42.9%あり、一部ハウスメーカーは「消費者には収入減による警戒感もある」などの理由で「減る」とした。
 金融機関は「減る」は1行だけ。「増える」「どちらかといえば」が計50.0%、「分からない」は44.4%だった。「増える」とした宮城県の銀行は「運転資金需要は既に増加している。ただ津波被害が甚大な地域では、復旧・復興にかかる設備資金需要には至っていない」と説明する。
 これに対して減少を見込む企業が多いのは食品・外食で、「どちらかといえば」との計で60.0%に上った。百貨店・スーパーも計41.7%で、スーパー各社は「被災による利用者減」(岩手県)や「消費マインドの冷え込み」(秋田県)を理由に、個人消費の落ち込みを懸念する。
 サービス・情報では自粛ムードや原発の影響を受けているホテルや旅行業など、観光関連で先行き不安が広がっている。
 製造・非製造別で見ると、非製造は「増える」「どちらかといえば」が計38.8%で最多。製造は「分からない」が44.0%を占めた。ただ省エネ、復旧工事の関連企業などは増加を見込む傾向にある。

◎「ビジョン策定早く」最多

 東北の経済復興のため優先すべき施策は何か。アンケートで9項目の選択肢から最大3項目を選んでもらったところ「復興ビジョンの早期策定」が全業種で最も多く、企業も政府や自治体の対応の遅れを危惧している。
 それぞれの項目を選んだ企業の割合はグラフの通り。全ての業種で半数以上がビジョン策定を挙げた。旅客輸送・運輸とエネルギーの2業種は全社が選んだ。
 2番目に多い「インフラの強化」は、業種によって優先順位に差があった。旅客輸送・運輸と総合・専門商社、建設・住宅の3業種はいずれも、ビジョン策定と同率でトップ。金融機関、食品・外食はそれぞれ11.1%、30.0%にとどまった。
 「復興特区の創設など規制緩和」を優先項目に挙げたのは、専門店・小売りで50.0%に上る。金融機関や製造業では上位5項目に入らなかった。
 金融機関は「債務帳消しなど被災企業への直接支援」「融資・信用保証制度の拡充」がともに55.6%を占め、この2項目を重視している。宮城県の信用金庫は自由記入欄で「融資の返済猶予が増加傾向にあり、二重債務も大きな問題。末端の顧客まで支援できる解決策を示してほしい」と求めた。
 自由欄ではこのほか「(エネルギーや食料生産などを)地域で完結できる東北経済のシステムを構築すべきだ」(宮城県の百貨店)との指摘や、「産学官と金融が連携を強めることが不可欠」(同県の製造業)といった意見も寄せられた。


2011年06月12日日曜日


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