【ウィーン樋口直樹】東京電力福島第1原発事故を受け、国際原子力機関(IAEA、151加盟国)の閣僚級会議が20日、ウィーンで開幕した。24日まで原発の安全対策を協議する。天野之弥事務局長は「事故に伴う社会不安に緊急に対応する必要がある」と強調し、世界中の原発を対象とした1年半以内の安全性評価の実施などを提案した。欧州連合(EU)が域内で行う原発のストレステスト(耐性試験)の「世界版」を目指す考えだ。
加盟国が地震や津波など自然災害を想定した原発の安全性評価を1年~1年半で実施。加盟国から事前に一括して了解を得たうえで、無作為に抽出した原発を対象にIAEAの国際的な専門家が相互評価「ピアレビュー」を加える。
天野氏は▽原発の立地や設計などに関するIAEAの安全基準を1年以内に見直す▽各国規制機関を完全に独立させ、日本で来年、07年に行われた安全性評価の追跡調査を行う▽世界的な緊急時への備えと対応システムを強化する▽IAEAの情報収集・提供能力を向上させる--ことも提案した。
一方、海江田万里経済産業相は「事故の徹底的な検証を踏まえ、最高水準の安全性確保の対策を講じ、今後の原子力政策の進め方を検討する」と決意を表明した。
IAEAの機能強化や国際的な原発事故の損害賠償の必要性などを盛り込んだ宣言を20日に採択した。IAEAへの強制力の付与には踏み込まない。天野氏は閣僚級会議の結果を踏まえ、今年9月のIAEA総会で行動計画を提示する。
毎日新聞 2011年6月20日 21時38分(最終更新 6月21日 1時25分)