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[28485] ストライクウィッチーズ・あなざぁすとぉりぃ
Name: バートC◆898a604f ID:3d0d965c
Date: 2011/06/22 05:53
初めまして、バートCと申します。
ストライクウィッチーズの短編集みたいなものを描いていきたいと思います。
オリキャラは無しで、メンバーは二期の501の面子、設定はアニメ遵守でいきます。キャラはまんべんなく出していきたいです。たぶん戦闘はほとんど無く、のんびりとしたお話になるでしょう。お茶でも飲みながら読んでください←

小説の経験はあまり無いので駄文になるかもしれませんがよろしくお願いします~



[28485] ~上司命令は絶対~編
Name: バートC◆898a604f ID:3d0d965c
Date: 2011/06/22 08:46
「あーあ、別にこんなとこ一人で来ても楽しくないんだけどなー」

 ロマーニャの街をぶつぶつと文句を呟きながら歩きまわっている一人の少女がいた。パーカーに白タイツという出で立ちの彼女の名前はエイラ・イルマタル・ユーティライネン。第501統合戦闘航空団に所属している立派なウィッチである。基地内での位は中尉。年齢は15歳というのだから大したものだ。

「これからどうしようかなー」

 そんな彼女が白昼堂々意味もなくロマーニャの街を優雅に散歩できるかといえばそんなことはない。なぜならこの地域はまだ、ネウロイと呼ばれる謎の存在に日々脅かされているのだ。それなら尚更、彼女が昼間にこんなところにいるのはおかしい。

「歩きまわるのも疲れたし喫茶店にでも入ろっと」

 ロマーニャの街は昔ながらの歴史ある景観で有名であり、歴史的建造物を見るためにここを訪れる観光客も少なくない。観光客が多いということは街も活気があるということで、喫茶店やレストランは沢山ある。そういった店の多くは観光客をターゲットにしており、地元の人々が通うような店は少ない。だがエイラは歴史的建造物を見に来た観光客でも、ロマーニャの美味な料理を味わいに来たグルメマニアでもない。
 パーカーのポケットに手を突っ込みながらエイラはある喫茶店へと入っていった。どこにでもありそうな何の変哲もない喫茶店である。この店に何度も来たことがあるという訳でもなく、ただ単に歩き疲れたので紅茶でも飲もうという魂胆だ。

「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか?」

 観光客で賑わう喫茶店に入ると、ウェイトレスが足早にエイラ中尉の元にやってきた。
ウェイトレスは女性で、愛想のいい笑顔を浮かべている。

「ああ、後店内でよろしく」

「店内でよろしいんですか?分かりました」

 ウェイトレスは少し不思議にそう言うとエイラ中尉を店の中へ案内する。今日は日差しが強い、云わば真夏日。一般的に欧州の人々はそんな天気の良い日には外で肌を焼きたがるのである。だがエイラは日光に弱い。彼女の白く綺麗な肌は日に当たるとすぐ真っ赤にやけてしまう。暑いのに長袖のパーカーを着ているのもそのせいであろう。
そんなことから店内に客は少なく、エイラは窓際のソファーの席へと案内された。この店の人気の席といったところだろうか。二つの席が向かい合って用意されているが、今日のエイラに連れ人はいない。

「では後ほどご注文を伺います」

エイラにメニューを手渡すとウェイトレスは一旦席を外した。そしてエイラは柔らかそうなソファーにボフッと座り込む。歩き疲れていたせいか、心地よさそうにソファーに身を委ねている。そして手渡されたメニューに大ざっぱに目を通し、ウェイトレスが来るのを待った。
中尉ともあろう人間がこんな時間に喫茶店とは職務放棄もいいところだ。普通の会社員なら一発で退社になってもおかしくない。しかし彼女がここにいるのには理由がある。実は、昨日ネウロイとの戦闘がありエイラ中尉はそれを見事に撃破した。そしてその後、始末書のような物を短く書き留めなければいけないのだが、彼女はうっかりそれを怠ったのである。軍の上層部から指摘があり第501統合戦闘航空団の隊長、ミーナ中佐が小言を言われる羽目になった。上層部は何かとそういう細かい部分にケチをつけることが多く、ミーナ中佐もそういうことは何度も経験がある。後ほどエイラはミーナ中佐の部屋に呼び出され、軽く注意を受けた。エイラはとくに落ち込む素振りもなく部屋を出ようとしたが、ミーナ中佐がその寸前に彼女にこう告げたのである。

「エイラさん、あなた最近休暇を取ってないでしょう?明日に休暇を上げるから久々にロマーニャの街で買い物でもしてきたらどうかしら」

とくに外出が好きでもないエイラは最初はそれを断ったが、ミーナ中佐の、「これは上司命令よ」との一言でしぶしぶ街へ行くことになったのである。買い物といっても特に買いたいものがあるわけでもないエイラは親友のサーニャを誘いに彼女の部屋へと足を伸ばした。我ながらいいアイデアだと思っていたに違いないだけに、サーニャにその誘いを断られたのはさぞかしショックだったことだろう。残念ながらサーニャは今日、ストライカーと呼ばれるウィッチ達が使用する兵器のメンテナンスの用事が入っていたのだ。どうしても立ち会わないといけないらしく、サーニャも非常に残念そうな表情を浮かべていた。また、他のメンバーもいつ襲ってくるか分からないネウロイへの警戒のため基地に残らなければいけなく、結局一人で出かけることになったのだ。

そんなわけで、エイラはウェイトレスに紅茶とショートケーキを頼み、黙ってそれを待っていた。他人から見れば、目を閉じて席に座っている彼女は居眠りをしているかのように見えるが、これでも一応考え事はしているのだ。もちろん昨日犯したミスのこと……ではなく、サーニャ中尉のことだ。もし今日、サーニャとロマーニャの街を散策できたならどれほど嬉しかったことだろう。どんな店に行っただろうか、遺跡でも見に行ったのだろうか。考えても考えても脳裏に浮かぶのはサーニャのことだけだ。
うんうんと唸り始めたエイラを、わずかな客とウェイトレスが怪訝そうに見つめる。

「そうだ!」

閉じていた目をパッと開き、何かを思いついたように目を輝かせる。その目の輝きはいたずらっ子が何か楽しいことを思い浮かんだ時のそれと同じだ。
彼女は急いで立ち上がり、店の出口へと駆け出した。そんな彼女の姿を、紅茶とショートケーキの皿を乗せた盆を持ったウェイトレスと観光客は、ポカーンとした表情で見送る。
 今のエイラは自分が頼んだもののことなどもう忘れていた。

「サーニャにお土産買ってやろう!」

 自然と笑みがこぼれるエイラ中尉、足の疲れも何のその。駆け足でケーキ屋へと向かう。さきほど街を歩き回っていた時見つけていたケーキ屋だ。何かの出来事にサーニャが絡んだ時のエイラの行動力には目を見張るものがある。

10分ほど走ると目的地にたどり着いた。ショーウィンドに並んでいる可愛らしいケーキを見ようと人が集まっているのが遠目に分かる。後でエイラが知った話によれば、ここはかなり有名な店だそうだ。半ば息をきらしながらエイラはそのケーキ屋への扉を開ける。中もかなり多くの人でごったがえしており、ケーキを買うためにはしばらく列に並ぶ必要があるらしい。

エイラは列に並びながら、店の中にいる人々を吟味し始めた。多いのが子供連れの客とカップルで、一人で来ているのは彼女ぐらいだ。皆楽しそうに笑顔で談笑しており、店の中は騒がしい。
おもむろにエイラは視線を床に落とした。何も見たくない、というのが今の彼女の心境だろう。もしここにサーニャが一緒にいたら……とまた考え始めてしまったのだ。ふと、エイラは目頭が熱くなるのを感じた。

「次のお客様、どうぞー」

店員の声で彼女はハッと現実に引き戻される。気づけば自分の前にいた列はなくなっており、自分の番が来ていた。

「あ、えっと……これとこれ」

 ガラスケースの中にある2つのケーキを指差し、店員にお金を手渡す。ありがとうございます、の一言と共に、ケーキが入れられた箱の入っている、デザインが綺麗な紙袋を手渡された。
 外に出ても、こんな時間に一人でぶらぶらしているのは自分ぐらいしかいないことに気付いたらしく、エイラの表情はますます暗くなる。さきほど目を輝かせていた時と正反対だ。

「もう帰るかな……」

いつしか時刻は15時半。基地までは車で一時間程度で、その車との待ち合わせの時間は16時だ。そろそろ頃合いである。
肩を落としながらエイラ中尉は待ち合わせの広場へと向かう。思えば今日何をしていたのか、そんなことばかり考えているのだ。
広場は街の中心にあり、迷わずにそこへは到着した。

その広場に集まっているのも2人以上のグループで過ごしているのが大半であった。ここでも皆楽しそうに午後のひと時を過ごしている。そんな様子を横目で見て、エイラは迎えの車に足早に乗り込んだ。そしてすぐさま座席で不貞寝を始めた。よほど一人でいるのが寂しかったのだろう、目にはうっすらと涙を浮かばせている。彼女の気付かぬ間に車は基地へと出発した。



「……中尉、エイラ中尉!」

眠っていたエイラ中尉は運転手の男の声で起こされた。どうやら基地へ到着したらしい。
彼女はタッと車を降り、とある場所へ走った。涙が零れるのも気にかけずに、全力で階段を駆け上りその場所へとたどり着く。そう、エイラ自身とサーニャの相部屋に。扉をぶっきらぼうに開け、彼女は中へ転がり込むような勢いで部屋へ入った。

「エイラ……?」

 静かに嗚咽するエイラ中尉の姿を、サーニャ中尉は驚きながら見つめる。もうメンテナンスは終わったらしく、サーニャ中尉は部屋の掃除をしていたらしい。箒を掃く手を休め、どう声をかければいいのかと迷っているらしい。

「サ…サーニャ!」

 ケーキの紙袋を放り出してエイラ中尉はサーニャ中尉に抱きついた。細身のサーニャはバランスを崩しながら、驚きの表情を浮かべる。

「どうしたの?街で何かあったの?」

 心配そうにサーニャが言うが、エイラは黙ってサーニャの背中に手を伸ばしていた。もちろん、「寂しかったんだ」なんて恥ずかしくて言えやしないのだろう。サーニャは自分の胸に顔をうずめるエイラを不思議そうに見つめていた。




 





「おいミーナ、エイラがさっき帰ってきたらしいぞ」

 所変わり、ここはミーナ中佐の部屋。この基地のメンバーの中で、ミーナ中佐に敬語を使わずに話すことのできる人間は、本当の意味ではこの坂本美緒少佐だけであろう。彼女たちもまた、昔ながらの親友である。坂本少佐はミーナ中佐の部屋に丁度、軍からの書類を持ってきたところらしい。

「あら、そうなの」

 それを聞いたミーナ中佐はクスッと笑う。

「今日はエイラ、休日で街へ行っていたんだってな?」

 坂本少佐の問いにミーナ中佐は悪戯っぽくこう答える。

「ええ、これで少しは懲りてミスも少なくなってくれるといいわね」

「ん?どういうことだ?」

何も分かっていない坂本少佐を横目にミーナは書類の山へと立ち向かうのであった……

The End.


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