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[28381] SUMMON NIGHT3 カルマ 逆行
Name: ディディエルゴ◆7df7c9f8 ID:1f83cacd
Date: 2011/06/18 03:40


血…

鮮血が舞う…

それを見て、認識している自分に気づく。意識が浮上している?

自分の意識などとうの昔に削除されたとオモッテイタ…

あれからドノクライの時間がナガレた?

3日?

1週間?

1年?

それとも…10年?

…ワカラナイ


痛い…ナニガ?
胸が…ナンデ?

視線を下げると自分の胸に一振りの剣が突き刺さってイタ。

アア…だからか…だから胸が痛くて、血が舞ってイルノカ。

寒い…顔をアゲタ。耳にキレイな音がヒビク。キレイな滝。そして舞い散るユキ…蒼氷の滝。オボエテル…あの日、ミンナデ見た光景…ミンナって?


「ごめんなさい…先生…」

声ガ聞こえル。懐かシイ?聞いたことガアル…?

目の前ニ女がいタ。見渡せばホカニモ人間が沢山イル。

目の前のオンナは剣を握っている。この女に刺サレタ?



ジャア殺サナイト…殺シテヤル






…マテ。このニンゲン、見たことガある?


懐かしい、デモ何かガチガウ…大きさ?記憶の中のアノコより大きくナッテイル…成長…アア…そうカ…

「アリー…ぜ…なの、かい?」

「っ…先生、意識が⁉」

女が驚きの声を上げる。その声に反応して周りの人間も駆け寄ってくる。

不思議なことに目の前の女をアリーゼだと認識した途端、意識がはっきりしてきた。

そのうえで改めて胸の傷を見る。これはもう助かりそうにない。

足の力が唐突に抜ける。自分を支えられず、その場に崩れ落ちる。


「そんな!あり得ない…レックスの人格は消去されている筈よ!だから今回の作戦に踏み切ったのに…これじゃあ、私がレックスを殺…」

「んなこたぁ今はどうでもいい!!先生の意識が戻ったんてんなら、何がなんでも救うんだ!ヤード、お前も来い!」

「はっ、はい!…盟約に応えよ!」


眼鏡の女が取り乱している。金髪の男が叫びながら自分の胸に手を当て何かしている…ストラか。銀髪の男がしているのは、召喚術。


アルディラ…カイル…ヤード。


「ダメです、ストラも召喚術も天使の奇跡すらもうけつけてもらえません!」

「なんで!なんで治療できないの!このままじゃレックスが…」

「心拍数、体温ともに低下が止まりません…もう、数分もちません…」

「クソっ!原因はなんなんだ!それが分からねぇと手の打ちょうがねえ!」

フレイズ、ファリエル、クノン、ヤッファ…


治療の手段を持たない仲間達もなんとか自分を救おうと必死になっている。

でも無駄だよ。

俺が一番よく分かってる。俺はもう助からないよ。

せっかくハッキリした意識が朦朧としてくる。ああもう長くないな。

とうとう座っていることすらできなくなり、その場に横たわる。

それでもみんなの顔を目に焼き付けようと顔を必死に動かし仲間を見ていると、側にアリーゼが腰を落とした。

「ああ…アリーゼ、立派に…なった、ね…とても、綺麗だよ…」

「あれから、20年たったんですよ、先生。もう私のほうが年上です」

そうか、そんなにたっていたんだ。

「軍人にはなれたの、かな…?」

気がかりなのはそれ。まだ教えたかったことは残っていたから…

「いいえ…私は軍人にはなれませんでした」

ああ、ごめん、アリーゼ…俺は先生失格だ。

「私、この島で先生をしているんです。貴方の跡をついで…」

…驚いたな。まさかそんなことになってるなんて…

でも…うん。嬉しいな…それは凄く、嬉しい。

「貴方とっ…ウッ…一緒にぃ、この島で!先生をやりたくて…一生懸命頑張ったんです!」

楽しいだろうな、きっと。

「先生!死なないでぇ!先生の意識が今戻ったのは奇跡なんです!だから!もう一度、奇跡でもなんでもいいから!帰ってきてください!」

アリーゼ、言ってること滅茶苦茶だよ。ああでも、その通りだ。奇跡でもなんでもいいから…

「みんなと一緒に…いたいなぁ」

「っ…」

みんなが辛そうな顔をする。やめてくれよ。みんなのそんな顔が見たくないから、俺は頑張ったのに。

「ああ、そんな顔させたのは…俺かぁ」

「先生…」

少し落ち着いたアリーゼが、手を握ってくれる。

「あったかいよ、アリーゼ」

この温もりを手放したくないなぁ。なんでこんなことになったんだろ?

「どうすれば…よかったんだろ?こんな結末、認めたくないよ…」

「レックス…お前…」

そして思い出す。みんなが言ってくれた言葉を…

でもその時の俺はみんなのその想いを踏みにじっていたんだ。

今なら分かる。どれだけ自分が身勝手なことをしていたか…

これは当然の結末だったんだ。自分一人でみんなを守っているなんて傲慢の、ツケ。

あの時しなければいけなかったのは、一人で無色の派閥を殲滅するこなんかじゃなくて…




「みんなに頼れば…よかったのかぁ…」




「ゴメン…皆。俺が…まちがっ…て、た…よ」






[28381] 第1話 異なる発端〜sealed memory〜
Name: ディディエルゴ◆7df7c9f8 ID:1f83cacd
Date: 2011/06/18 03:49


「ゴメン…みん、な…」


呟いた男に意識はない。どうやら眠っているようだ。



やがて覚醒を迎える。



「ん…んん…朝、か」

窓から差し込む光が眩しくて目が覚める。ベッドから体を起こし、伸びる。

「あれ…涙?」

目をこするとそこには欠伸で出たにしては多すぎる涙が流れていた。不思議な現象に首を傾げる。

「夢…のせいかな…」

根拠はないけど、そんな気がした。既に思い出せなくなっているが悲しいような、それなのに懐かしい…

そんな複雑な感情が胸に残っている。

「…思い出せないんだ、気にしても仕方ない。さて!今日はせっかくの休暇だ。天気もいいし、街にでも出ようかな」

行きつけの店で最近お気に入りの朝食でも食べれば気分も晴れるだろう。そしたら街をぶらぶらしよう。

軽く今日の計画を立てながら、レックスは部屋をあとにした。













「…レックスか、奇遇だな」

「あ、おはよう。ギャレオも朝食かい?」

「ああ、何度もお前にすすめられていたからな、きてみた」

店に入り、いつものカウンター席につこうとすると隣に珍しい人間がいた。

ギャレオ…レックスの上司。生真面目な性格でいつも敬愛する人間の側を離れない為、仕事場以外で目撃することは殆どない。

自分がすすめたとはいえ、彼がこういった所謂、カフェという場所にいることにおかしさを覚え苦笑する。

正直似合わない。

いつものメニューを注文し、横目でギャレオを見る。彼の巨体の所為で朝食のプレートがお子様用に見えてしまう…足りるのだろうか?

そんな視線を送っていると、ゴホン、と咳をつかれてしまった。どうやら表情から考えていることが伝わってしまったようだ。ゴメンゴメンと苦笑いしながら謝ると彼はまた食事を再開する。

食事の間、これと言って会話はなかった。しかし別に居心地が悪いわけではない。ギャレオといる時は大抵こんな感じだ。レックスが喋り、ギャレオはそれを聞いている。これがこの二人の付き合い方だ。




「ふう…美味しかった。ご馳走様」

ここ最近コレばかり食べているが全然飽きない。この店を知れて本当によかった…などと考えながらコーヒーを飲んでいると、食べ終わるのを待っていたのだろう。ギャレオが話しかけてきた。

「レックス、やはり考え直さないか?どう考えても俺よりお前の方が適任だ」

主語が抜けた問いかけ…そんなものつける必要もないくらい交わした問答だ。だから答えも勿論、いつもと同じ。

「そんなことないよ。俺なんかよりギャレオの方が向いてる、絶対にね」

レックスは目を閉じ、溜息をはきながら応える。

「俺は見た通り、考えることが苦手だ。できるのはこの体を使って戦うことだけ…頭の良いお前が副隊長として側にいた方が隊長の助けになるのは一目瞭然だ」

ギャレオも引かずに説得を続ける。


そう。レックスは以前、自分の仕事場、帝国軍海戦隊の所属する隊で副隊長に任命されたことがある。しかしそれを辞退したのだ。

レックスが副隊長を辞退した理由、それは単純に帝国に忠誠を誓えないから。


そもそもレックスが軍に入ったのは現地徴兵だった。隣のギャレオとは従軍のタイミングが一緒の同期。徴兵に参じた理由は自分の周りの人を守る力が欲しかったから。

当時とある戦争中、戦線がレックスの故郷に迫っていた時、故郷を守る立場にいたのがたまたま帝国軍だった。だからそこに入れば、自分も故郷を守れるという、若さ故の短絡的な考えの元レックスは軍の門を叩いた。


そして彼は「戦場」という環境において比類ない才能を発揮した。軍学校に通ったわけでもないのに、戦略、戦術、近接戦闘…そのどれもがエリートクラスと言っても過言ではないレベルだったのだ。まるで元から知っていたかのように…


かなりの被害は出たが、レックスは故郷を守ることに成功した。軍に入ったことは正しかったと喜んだが、やがて壁にぶち当たる。

とある任務で彼は「切り捨てる選択」を迫られる。よくある話。大の為に小を…

それは合理的にして正解。

10人を切り捨てれば1000人が助かる。

ならば切り捨てよう…それが軍人。


人の話や甘い予想である「遠い何処か」ではなく、自分の目の前で現実としてその選択を迫られた時、守る力の象徴だった帝国軍という理想にヒビが入った。

辞めようと思った。誰かを犠牲にしなければ任務を果たせない軍なんて…

辞めてどうする?1人で何が守れる?それならば多少の犠牲が出ようとも誰かを守れる軍にいた方がマシなんじゃないか…

宙ぶらりん…それが今のレックスの状態を正確に表した言葉だ。だから辞退した。こんな中途半端な者が人の上に立てば迷惑以外の何者でもないから。



「それでも、ギャレオがそこにいた方が隊の為になる…俺がそこに居たら、きっと皆を惑わせてしまうから…」

「…そう、か。難儀だな、お前も」

まだ納得はしていないが、一応この場は引いてくれたようだ。ギャレオは腕を組んで、目を閉じて唸る。

さっきとは違い、嫌な沈黙だ。凄く居心地が悪い。

なんとかこの空気を払拭しようとレックスは話題を変えた。

「あっ明日からの任務、なんかおかしな任務だよな。確か剣の護送だっけ?」

問いかけた途端、ギャレオに凄い睨まれた…まるで怨敵を屠ろうとせんばかりに。

「…レックス、任務の内容をこんな所で大っぴらに喋るんじゃない!誰が聞いてるか分かったものではないんだぞ!」

それもそうだ。話題を変えるネタに使っていいものではなかった…反省しないと。

それにしても…声を殺しながら怒鳴るなんて、ギャレオも凄い技を持ってるな。きっとビジュあたりの所為で習得した技なんだろうな…なんて邪推してみる。

「何でもかなり大きな力を宿した、所謂魔剣、という代物らしい。元は無色の派閥の物を運良く回収できたという話だ」

声のトーンを落とし、周りを見渡してからギャレオは説明してくれる。ただの剣だとは思っていなかったが、予想以上にきな臭い話のようだ。

「ギャレオはその剣、見た?」

興味本意で聞いてみる。魔剣なんてなかなかお目にかかれるものでない。

「いや、かなり厳重に外界とシャットアウトされている。きっと隊長も実物は見ていない筈だ。俺たちはただそれを護送するだけ…深く知る必要はない、ということだ」

…不満だな。護送するのは俺たちなのに、危険なのが分かり切ってるそれを詳しく知れないなんて、何かあった時どうするつもりなんだ?

顔を顰めるレックスを見て、言いたいことを察したのだろう、ギャレオは「仕方のないことだ」とレックスを宥める。彼も不満は持っているだろうが、レックスとは違い、軍に忠誠を誓っている為、顔には出さない。

「いずれにしろ今回の任務、ただの護送では終わらんかもしれん…お前もしっかり気を張っていろ」

そう言ってギャレオは席を立つ。レックスは空になった皿を見つめたまま、明日の任務のことを考え唸る。

「ここの朝食、お前の言うとおり、なかなか美味かったな。無事任務が済んだらまた来るとしよう。その時は俺が奢ってやる」

レックスが深く考えすぎているのを悟ったギャレオが気をきかせる。

その効果は覿面で、結構単純なレックスはすでに喜んでいる。さっきまでの難しい顔は何処かにいってしまったようだ。

「約束だぞー!」という言葉を背にギャレオは店を出ていった。明日の準備を手伝いをする為に。折角貰った休日だというのに、仕事熱心なことである。















朝食の後、レックスは計画通り街をブラついていた。計画というにはゆるすぎるが休日なんだから問題はない。

レックスにはあまり趣味がない。何故かと言われてもこれと言って理由はないがとにかく無趣味だ。そんな彼だが散歩は好きだった。歩くことも勿論好きだがそれ以上に困っている人がいるかもしれないというのが散歩する理由だ。

軍が自分の理想からかけ離れてしまっている。だからせめて自分の目の届く範囲は、という自己満足でしかないのは理解しているが、まぁ人を助けているのは事実だし…自己満足でもいいじゃないかと自分に言い訳して続けている。まぁ私服パトロールみたいなものだ。

今日も今日とて、散歩という名のパトロールを実施している。おばあちゃんの荷物持ちに、迷子の子供の親見つけ、etc……

「もう昼になっちゃったな…」

街は広い。実際小さいことばかりだが困っている人は沢山いる。不定期ではあるがそんな人達を助けているレックスは街の人から慕われている。赤い髪という特徴もあって目立つ。子供達からすればちょっとしたヒーローだ。

そんな彼だからちょっと歩くだけで人がよって来る。目的地がない時はいいが、ある場合は下手するとたどり着けなかったことがあるくらいだ。

昼食を食べようかな、なんて考えていた彼の目に新たな標的が映る。広場であちこち見渡しては困った顔をしている女性。当然放っておく筈もなく、レックスは女性に歩み寄り声をかける。

「あの、何かお困りですか?」

「ひゃう!」

いきなり声をかけられ驚いたのか、素っ頓狂な声を上げる女性。こちらに振り返り見上げてくる。可愛らしい人だな、と思った。

「えっと、あの…はい。実は困ってるんです。お店が見つからなくて…」

素直な性格なのか、隠すこともこちらを疑うこともなく事情を話す女性。そんな素直さに好感を持ち、自然と笑顔が零れる。

「ああ、それなら力になれるかもしれません、俺この街に住んで長いから。どんなお店ですか?」

「あの、参考書とか、教材を扱ってるお店、なんですけど…ご存知ですか?」

おずおずと尋ねてくる女性。うん、そういう店なら知っている。

「はい、分かりますよ。暇だから案内しますよ」

「あっ、ありがとうございます!この街広くて本当に困ってたんです」

結構切実な問題だったようで何度もお礼をいってくる。こういう人の助けになれることを嬉しく思う。だからだろう…

「俺はレックスって言います。短い時間だけど、よろしく!」

なんとなくこんな挨拶をしてみた。別に相手の名前を知りたかったわけではないのだが、女性は律儀に名乗りを返してくれた。








「こちらこそ、宜しくお願いしますレックスさん。私、アティ、て言います」


これが彼女と初めての邂逅だった。












アティとの邂逅から数十分後、2人はカフェテラスにいた。アティの買い物は無事終わり、そのお礼がしたいというアティと別にいいというレックスの数分のやりとりの後、レックスが折れ今に至る。

「へぇ、明日から家庭教師に」

「はい、そうなんです。でも初めての仕事だから緊張しちゃって…1番必要な参考書を用意し忘れちゃって。だからホントに助かりました」

テヘヘ、と笑うアティは年齢よりも見える。

「レックスさんは普段何をされてるんですか?今日は休日なんですよね?」

出会ったばかりだというのに人懐こい笑顔を浮かべるアティにつられて笑顔になりながら応えるレックス。

「見えないかもしれないけど、俺帝国軍人なんだ。今日は非番だから、私服だけどね」

それを聞いて目を見開くアティ。口に手を当てかなり驚いているようだ。彼女の態度を訝しんでいると、アティはポツポツとその理由を話し出した。



「実は…ちょっと前まで、私も帝国軍にいたんですよ」

……似合わない。今朝のギャレオよりも似合わないよ。と素直な感想を言おうとして、やめた。

どうやらアティにとって帝国軍のことは笑い話にできることではないようだ。さっきまでの笑顔がなくなっていた。

何でも軍学校を主席で卒業し、配属された陸戦隊の初めての任務で失敗し、それを理由に軍を逃げるように辞したらしい。

「あはは、ゴメンなさい。変ですよね、会ったばかりの人にこんな話…」

「いや…気にしないで」

あまり詳しくは話さなかったが、それだけが理由ではないように感じた…

その証拠にあからさまに元気がなくなっている。


だからその話はやめた。そして取り留めのない話をした。本当に取るに足らないことばかりを。次第に笑顔をとりもどしていくアティ。それからはとても楽しい時間になった。





「もう夕方ですね、なんだか時間がたつの、凄く早く感じますね」

「ああ、本当だね」

確かにとても楽しかった。でもほんの少しだけ、引っかかることがある。

「私達、なんだか他人じゃないみたいです!」

「…」

これだ。アティの言うとおり2人は凄くよく似ている、気がする。思考回路、とでも言うのか、考え方が似ていると言うよりも…同じなのだ。

まるで…そう、鏡に映る自分を見ているようなそんな奇妙な感覚に囚われる。

今朝の夢といい、なんだか今日は変だ。何かよくないことが起こる予兆だったりして…

「まぁ、なんの根拠もないんだけど…」

「?何か言いましたか?」

「うんん、なんでもないよ」

「そうですか?あっ、そろそろ帰りますね。明日も早いから…名残惜しいですけど」

そう言って帰る支度をするアティ。俺も今日はもう帰るかな、とひとりごちてそれに続く。明日はやいのはこっちも同じだ。

「今日は本当にありがとうございました!それに楽しかったです。お互い、頑張りましょうね!」

立ち上がり、意気込むアティ。

「もし、また何処かで会うことがあったらまたお話ししましょうね?」

「ああ、何処かで会えるといいね」

なんて叶う確率の低い約束を交わし、アティと別れた。実はこの後、再会はすぐにやってくるなんてこの時は考えもしなかった。当然だが。



「さて、いい骨休めもできたし、明日から頑張るかぁ!」


と大きな声をだす。胸に仕える根拠のない小さな不安を吹き飛ばすように。





そうしないと嫌な予感が現実のものになりそうな気がしたから…



[28381] 第2話 絡み合う発端
Name: ディディエルゴ◆7df7c9f8 ID:1f83cacd
Date: 2011/06/20 08:51





…ヨ…


…継…セヨ…


再ビ…


継承セヨ…


力ヲ与えエル代償二…


悲シミモ…憎シミモ…受ケ入レルト…


ソウ言ッタノハ…


オマエダロウ!!!


逃ガシハシナイ…


必ズ取リ込ンデヤルゥゥゥゥゥウ!!!

















任務は今のところ順調に進んでいる。朝一で港に集合し、滞りなくブリーフィングをこなし、船は定刻通りに出航した。

レックスの持ち場は魔剣の保管室の警備。隊長アズリア、副隊長ギャレオも同じだ。今回の任務の要である魔剣に何かあった際、隊の中で最も力のあるこの3人がその場にいないという事態を避けるためだ。

本来なら隊長、副隊長の2人でもいいのかもしれないが、そこにレックスも加わっているのはひとえにアズリアのレックスに対する信頼と、それと同じくらいの彼女のこの任務への警戒心の表れだった。






「ふう、今のところ何も起きませんね。天気もいいし、甲板は気持ちいいだろうなぁ」

窓の外の景色を眺めながら誰に向けるでもなく、レックスは呟いた。

「レックス、今は任務中だぞ。私語は慎め!」

まるで旅行の最中だと言わんばかりの気の抜けようをギャレオが咎める。

「あはは…すいません…」

バツが悪そうに苦笑いをしながら、指で頬を掻くレックス。つい口に出してしまった迂闊さを後悔するがもう遅い。「全くお前はいつも…」とギャレオは既に説教モードへ移行しており、これは30分コースかな、と諦めて大人しく説教を拝聴する。

「そこまでだ、ギャレオ。こいつがこんなのはいつものことだろう?今更説教したところで簡単に変わりはしないさ」

椅子に座り沈黙を保っていた隊長、アズリア・レヴィノスがギャレオを諌める。それでも「しかし、隊長…」と食らいつくギャレオ。暫しの間、両者見合うが、やがてギャレオが折れる。

その様子を見て、助かったぁ!ありごとう隊長、と安堵の息をつくレックス。ギャレオの説教は一度捕まるとホントに長いからなぁ。遠慮できるなら積極的に遠慮したい。

が、

「レックスも。お前の性格は把握しているが、ギャレオの言っていることが正しいのは事実だ。軍人たるもの、メリハリはキチンとつけなければならん。いや、これはむしろ人として当たり前の…」

世の中そう甘くはないようだ。さっきと言ってること違う!と心の中で叫びながらアズリアの言葉を聞くレックス。チラリとギャレオをみれば腕を組みながら何度も頷いている。フォローは期待できないようだ。

「聞いているのかレックス?」

「っ、はい!聞いてます!」

声に当てられつい敬礼してしまう。やれやれ、次からはもう少し気をつけよう…一言でこの長さの説教は割に合わないよ…

何故か敬礼したままの体勢で延々話しを聞かされるレックスであった。












そんなある意味平和だった時間を一つの怒声が遮る。

「そこの貴様!動くんじゃねえぞ、動いたら、問答無用でブチ殺す!」

部屋の外から程度の低いゴロつきの、お約束のような脅し文句が聞こえてきたのだ。

「ハァ…」

説教を中断し、3人揃って溜息を吐く。本当にゴロつきならいっそ楽なのだが、このゴロつきヴォイスは3人のよく知る声だ。言わば身内。この隊1番の問題児。名前はビジュ。

「ギャレオ…」

額に手を当て疲れたような声でギャレオを促すアズリア。大方迷った民間人にビジュがつっかかりでもしたのだろう、とあたりをつける。こういうことに関しては奴は信頼できる。

「…はい」

とこちらも気だるげに返事を返し、部屋の外に出るギャレオ。彼も状況の予想はついているのだろう。一々指示を仰ぐまでもないといった様子だ。

「あの、俺も行った方が…」

と扉へ向かおうとするレックス。ビジュは些か攻撃的すぎるきらいがある。虫の居所が悪いと相手が民間人だろうと平気で手を上げたりする。

「いや、お前はここにいろ。民間人が心配なのは分かるが、お前とビジュは相性が悪い…いや、あいつがお前を一方的に毛嫌いしているのか。今お前が出て行ったところで、火に油を注ぐ結果にしかならん」

アズリアに止められる。確かに彼女の言うとおりだ。レックスはビジュに嫌悪されている。その甘い考え方が癇に障るらしい。仲裁に入って成功したためしはない。


「不審者でさァ、副官殿。とっ捕まえて締めあげましょうか?イヒヒヒッ」

閉まりかけのドアから不穏な言葉が聞こえてくる。

「ッ」

さすがに見過ごせないと再び外に出ようとするレックス。しかしアズリアはそれを腕で制し、小声で「任せろ」と囁くと部屋の外に向かって

「よせ、ビジュ」

と制止の声をかける。すると外から「隊長殿…」と些かつまらなそうなビジュの返事が聞こえてくる。どうやら気が逸れたのを見逃さずギャレオが民間人に説明と退去を促してくれたようだ。

「お騒がせしてしまってごめんなさい」

と女性の声が耳に届いた。

「チッ、さっさと行きな!」

ビジュが舌打ちと共に言葉を吐く。徹底したゴロつき口調だ。本当に軍人なのか身内ながらに疑問に思う…まぁ何事もなくてよかった。何もしてない人を締めあげるなんて許されることじゃない。

と安心したのもつかの間、慌ただしい足音がこちらに近づいてきた。その尋常ではない慌ただしさにアズリアと目を合わせる…何か起こった。直感がそう告げる。頷きあい部屋を出ようとするが、それよりも早く少し焦り気味のギャレオが戻ってきた。

「何があった?」

アズリアが簡潔に問うと、すこし早口になりながら今聞いた話しを報告するギャレオ。

「ハッ、甲板にて見張りをしていた兵が、こちらに一直線に接近してくる不審な船を視認したとのこと。この辺りで他の商船と出くわす確率は低いことを考えると、おそらく…」

「賊、か」

アズリアの言葉に頷く。室内に緊張がはしる。さすがにレックスも表情を固くする。賊はほぼ確定だろう。それはいい、問題なのはそこではなく…

「単に積荷が狙いか、もしくは魔剣(コレ)…」

レックスの呟きに「ああ」と相槌をうつアズリア。そう、ただ積荷が狙いならば問題はない。そんな矮小な海賊如きに遅れを取る自分達ではない。

しかし魔剣が狙いだった場合、かなり不味い事態になるかもしれない。今現在、この魔剣の存在を知っているのは我々帝国軍か、元の持ち主である無色の派閥だけ。勿論大体的に情報が漏れてしまった可能性もあるが、時期的にそれはないだろう。

無色に劣っているなど思わないがこちらが不利なのは明らかだ。こちらには民間人がいる。彼らを守りながら魔剣も守護しなければならないのだが残虐性の強い無色が相手ではかなり厳しい戦いになるだろうと簡単に予想できる。

「どうしますか?隊長」

ギャレオが指示を仰いでくる。アズリアは目を閉じ、考えを纏める。やがて目を開き、副隊長であるギャレオに指示を飛ばす。

「…甲板に出る。敵に接舷されるのは時間の問題だ、だから甲板で食い止める。船内に入られると面倒だ。それと、民間人を船内に退避させろ。パニックが起こるからできれば賊の存在を知られたくないが、さすがに無理だろう。なのであえて隠さずに賊の存在を知らせ彼らにも予め警戒心を持たせておく、敵の侵入とパニックが重なれば手に負えん。行け、ギャレオ!部下への指示は任せる。私もすぐに向かう。レックス、お前は残れ」

敬礼し、急ぎ甲板に向かうギャレオ。

「隊長、俺は…」

残された理由は何となく予想できるが、問う。

「レックス、お前は此処に残り魔剣を死守しろ。全ての賊を甲板で食い止めるのは難しい。とりごぼしの処理を任せる。できるな?」

「っ了解!」

やはり予想通りだった。1番重要なポジションだ。しっかりこなさないと。

「最優先は魔剣の守護だ。分かるなレックス」

念を押すようなアズリア物言いに歯を食いしばる。

「クッ…は、い」

「お前は軍人だ。軍人なら私情ではなく任務を忠実にこなすんだ、いいな!」

言いつけ足早に部屋を後にするアズリア。


船内に賊が入る。それは賊と民間人が接触することを意味する。賊は恐らく無色。する必要のない殺生が行われる可能性が極めて高い。それよりも魔剣を優先しろと言っているのだ…納得できるわけがない。しかし、自分は軍人だ、従う義務がある。

「やっぱり、俺みたいなのは軍人には向いてないな…惰性で続けてきたけど、限界だな」

たった今思い立った訳ではない。以前からくすぶっていた考えだ。隊の人間は好きだけど、何年いてもやはり軍という組織に溶け込めなかった。潮時なんだ…

誰もいない部屋で独りごちる。




その時だった。



見ツケタ…

「!?」

ドアに目を向ける。誰もいない。部屋には自分一人しかいない。ならば外か。窓から外を見たが賊の船が接舷しま気配はない。

静かにドアへ近づき、勢いよく開ける。

…しかしそこに人影はない。

「空耳?」

部屋に戻る、無音。そんな場所ないが、誰かが隠れている気配もない。やはりそらみ…

久シイナ…伐剣者…

「誰だ!どこにいる!?」

空耳なんかじゃない!確かに聞こえた。辺りを見渡し、叫ぶ。

コンナ世界二逃ゲコンデイタトハ…

アノ女、忌々シイ…

ダガ…マァイイ…

結局、我カラノガレルコトナド不可能…

サア、伐剣者ヨ…我ヲ…手二取レ…



「何?何を言ってるんだ?前の世界?バッケンシャ?逃げる?…訳が分からない…」

姿なき声が語りかけてくる。しかも向こうは自分を知っている口ぶりだ。何か得体のしれない恐怖にかられる。関わってしまえば最後、また自分を失ってしまう気がする。

「また?なにがまたなんだ?俺は今何を思い出していた?」


ホウ…記憶ガ封印サレテイルノカ…

パニックなりそうな頭にまた声が響く。どうやらこの声は耳から入ってくるのではなく、直接頭に響いているようだ。


身勝手ナァァァ!

悲シミモォ!憎シミモォ!受ケ入レルト言ッタノハオ前ダロウ!

逃ガサン…逃ガサンゾォ!

サァ…手二取レ…ソシテ、再ビ…

継承シロ…


突然頭に響く声に憤怒の感情が混ざる。言ってることは相変わらず支離滅裂、意味不明だ。だがその怒りは確かに俺に向けらている…

「俺は何かを忘れているのか…それに手に取れって…」

声は手に取れと言った。この部屋で手に取れる物なんて…

レックスは振り返り、持ち運び用とはお世辞にも言えないまるで金庫のようなソレに目をやる。

「はは、大丈夫だ。鍵は隊長が持ってる…開く筈なんてな…」

開いた…幾重にも施錠され、挙句魔力的な仕掛けもあり、隊長以外絶対開けられないと豪語していた扉が1人でに開いたのだ。


一度継承シタコトガアルノダ…

何ヲタメラウ必要ガアル…

オ前ノ欲スル「守ル力」ガ、手二入ノダゾ?


「守る、力?」

声に耳を貸してしまうレックス。それは彼が最も欲している物。軍では手にすることのできなかった理想。


アア、守ル力ダ…欲シイダロウ?

頭がぼうっとする。思考に霞がかかったみたいだ。彼の頭の中で繰り返される「欲しい」という言葉。

レックスはゆっくりと剣に近づいて行く。まるで何かに操られるように。

「人を助けるための力が…手に入る…欲しい…継承しないと…俺は…守りたい…島の…みんなを…だから…継承…継承…また…継承…あの時みたいに…継承…消し去る力…」

意味不明なことをブツブツ呟きながら、とうとうレックスは剣を手にとってしまう。


紅く輝く剣を…


ソウダ…コレデイイ…オ前ガ最モ相応シイ…

継承ヲ始メル…

その声に反応するように、窓の外が暗くなってゆく。先程まで快晴だったのに何時の間にかドス黒い雲が空を覆っていた。


始マル…待チニ待ッタ…


雨が降りだす。


ハハハ…書キ換エ…


雷鳴が鳴り響く


消去…「あの!」…ナァ!…



腕を引かれる。そのせいでレックスが握っていた紅い剣が床に落ちる。その金属ともガラスとも言えない凄まじい音にレックスの意識が覚醒する。先程まで降っていた雨と雷がピタリと止まる。

「あっ…俺は…何を?」

呆然とするレックスに腕を引っ張っている青年が声をかける。

「あの、大丈夫ですか?大丈夫なら助けて欲しいんです!」

助けて、という言葉にレックスは即座に反応し、焦点を合わせて青年を見る。

「あ、ああ、どうしたんだい?助けてって?」

「はい、知り合いが!さっきの砲撃で、破られた壁の破片が刺さって!僕!治療のしかたがわからなくて!人を探してたら貴方を見つけて…軍人さんですよね?知り合いを助けてください!」

青年の言葉に衝撃を受ける。砲撃だって?いつ?なんで気づかなかった?さっきから何かおかしい…それに任務がある。ここを離れる訳には…

「いや!今はそれどころじゃない!」

強く頭を振って切り替える。今ならまだ助けられるんだ。迷ってる場合じゃない。罰なら後でいくらでも受けよう!

「わかった!治療用のサモナイト石を持ってるから直ぐに助けられるよ!案内してくれ!」

「あっ、はい!こっちです!」

走り出した青年の後を追うレックス。

誰もいなくなった部屋の床に転がっている紅い剣は鈍く輝いてる…











船内を走っている最中、レックスは改めて襲撃の事実を認識していた。砲撃による振動が激しい。ここまでくるのにかなりの数の着弾を確認した。接舷はもう間もなくだろう。


「ハァハァ…こっち、です!この階段を、ハァ、登った先、まっすぐ…」

何時の間にかレックスの方が先を走っていた。青年は極度の緊張と走り回った疲労で今にも倒れそうだった。

「あっ…」

躓き、とうとう青年は倒れてしまった。立ち止まり青年に駆け寄ろうとするが、止められる。

「僕のことはいいから!早く、知り合いの所に!早くしないとっ…死んじゃうよぉ!」

青年の悲痛な叫びにレックスは頷き、青年を置いて再度走り出す。

「君の知り合いを助けたら、直ぐにもどって来るから!そこでじっとしているんだ!」







「ちゃんと助けてあげてよね?だって可哀想じゃないか」

レックスが去ったのを確認すると、青年は何事もなかったかのように立ち上がった。

「君を部屋から連れ出す為だけに、僕に木片突き刺されちゃって…」

嘲るような瞳をレックスの走り去った方へ向ける。

「これで助からなかったら、可哀想すぎて目も当てられないよね?あはっははははははは!はははははははははか!」

狂った様に笑う青年。踵を返し来た道を引き返す。その際、青年の表情が悲しげなものになる。しかしそれは本当に一瞬で、次の瞬間には先程の、嘲るような笑顔を貼り付けていた。













「よし、もう大丈夫!君は助かるよ」

レックスの優しい声に、患者は頷き掠れた声で「ありがとう」と言ってくれた。患者を抱え、近くの部屋に入りベッドに寝かせる。これでこの人はとりあえず安全だ。

「おおおおおおおおおおおおおおお!」

その時、上から雄叫びのような掛け声が唐突に聞こえてきた。とうとう敵の侵入がはじまったのだ。レックスは患者にここを動くなと言いつけ、先程の青年の所へと急いだ。


しかし…

「いない…どこに行ったんだ?何処かの部屋に避難したのかな…とにかく探さないと…っ!」

金属音が周囲に響き渡る。剣と剣がぶつかり合う音だ。

階段の上から切りかかられたのだ。それをレックスは常人ではあり得ない反射で抜剣、体の前で横に構え防いで見せたのだ。その超反射に驚く敵、しかし一番驚いているのはレックス自身だった。

(無傷…あり得ない!致命傷を避けられれば御の字くらいに考えていたのに…)

それくらい今の不意打ちは完璧だった。それを無傷ですませてしまったのだ。

それにしても…とレックスは眼前の敵を見据える。

(完璧に不意をうたれといてなんだけど…あんまり強くない?無色じゃなくただの海賊だったのか?)

「はああああ!食らえ!」

いつまでも向かってこないレックスを怯えていると判断した敵が距離を詰めてくる。しかし、油断のないレックスにしてればそれは遅すぎた。特に焦ることもなく、突き出された刃物を持っている腕をを掴むと、円の力を利用して敵の勢いをそのまま使い、床に打ち付ける。上手く決まったようで意識を落とす敵。

(外は急に天気が崩れて、もはやあれは嵐だ。外のみんなは大丈夫なのか?…ええい、もう持ち場は離れたんだ!今更だ!)

レックスはまた走り出した。本来の持ち場とは逆、上の方へ…

剣は奪われてもまた取り返せばいい。でも民間人や仲間の命は奪われたらもう取り戻せないのだ、絶対に。









時間は少し遡る。レックスが怪我人を治療している頃、青年は魔剣保管室にたどり着いていた。部屋に入り、鍵をかける。

「…それにしても、さっきの兵、なんだったんだ?魔剣の魔力でおかしくでもなったのかな?」

保管室を見つけた後、中にいる人間をどう誘い出すか考えている時、偶然にも海賊の襲撃が発生した。これ幸いと怪我人を作り出し、いざ兵を誘い出そうと部屋へ戻ると、兵は魔剣を握って虚ろな瞳をしていた。一番の難関であった保管庫の鍵をものの数分でこじ開けて、だ。

「流石に焦ったな。なんせ、せっかく手に入れた夢を叶える道具が横取りされそうになってるんだもんな」

苦笑しながら床に落ちている剣に近づく。そして青年は剣を手にした。


ヨクモォォォ!


「!?」

突然の声に青年は驚き剣を落としそうになる。しかしなんとか耐え、動揺を落ち着かせると握る剣に目を向けた。

「何?剣のクセに意思があるのかい?あはは!流石は魔剣だね?」

小馬鹿にするように剣な語りかける。

ナゼ継承の邪魔ヲシタァァァ?

「継承?ふぅん…お前を使う為には何か条件でもあるのかい?ねぇ、教えてよ?僕はお前を使えるの?どうなのさ!」

嘲るような笑顔と態度は変わらないが、若干焦りが見え隠れする。

…ホウ、キサマ、適格者カ、アア、ツカエルゾ…

何の気まぐれなのか、剣は急にクールダウンし、青年の質問に律儀に答えたのだ。

「へえ、じゃあさ、僕に使われてよ。別にいいでしょ?ホラ、適格、者だっけ?それなんでしょ?僕は」

使えると分かり、焦りはなくなり尊大な態度で力を寄こせと言う青年。


…断ル。


「はぁ?」

しかし答えは否。取り付く島もなく問答無用で拒否。

「理由は?僕は適格者様だよ?使われる分際の剣風情が…生意気だね」

…自惚レルナ…

…適格者ハアクマデ候補…

伐剣者ノ足元ニモオヨバン…

故二貴様二ワレハ抜ケン…キサ…

「ふざけるなぁああああああああ!!」

魔剣の言葉を遮りありったけの声で叫ぶ青年。俯き、肩で息をする青年は追い詰められていた。それでも諦められないのか、両手で剣を握り自分の魔力を無理矢理剣に注ぎ込む。

ナ、バカナ!コードガ勝手二更新サレテユク!貴様ヲ認メロト言ウノカぁぁぁぁぉぉぉ!アリエン!ココマデキタノダゾ!アト一歩ノトコロデェェ!

注ぎこまれた魔力で歪な形の継承が進行する。止んだ雨や雷が再び降り注ぎ、外はもう嵐となっている。

「黙って僕を所有者と認めろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」



目を開けていられない程の紅い光が、部屋中を埋め尽くした。












「皆!無事か!」

レックスは甲板へと躍り出た。しかし視界に味方は映らなかった。天候は悪辣。豪雨によって視界が制限され、暴風によって音が遮られる。とてもじゃないが戦いなんてできたものじゃない。

「隊長ー!ギャレオ!」

それでもレックスは仲間を探す。こちら側にいなければ反対側にいる筈と、そちらへ向かおうとして視線の先に人影を見つける。明らかに帝国軍の物ではない服に気づき、警戒しながら近づくと、その人間はどうやら海を気にしているらしい。

「くそ!本当に飛び込みやがった!この荒れようじゃ助からねぇぞ!」

その男はどう見ても民間人ではなかった。いかにも海賊です!と言ういでたちにレックスは躊躇うことなく詰問する。

「お前が襲撃してきた奴らか!何の目的でこの船を襲った!」

激しく揺れる船の上でバランスを取るのは困難だ。それでもレックスはなんとか体勢を保つ。

「ああ?ちっ、こんなタイミングで帝国軍かよ。目的だあ?んなの、テメェのほうがよく知ってんだろ!お前らが横からかっさらってった剣だよ!」

海賊は煩わしそうに、そしてまだ海の中を気にしながら答える。

「何故海賊が剣のことを知ってるんだ?それに、他の帝国軍はどうした?」

剣を構え、ジリジリ距離を詰めながら言葉を放つ。

「まぁちょっとした野暮用ってやつさ…アレは誰かが所有していいもんじゃない。破棄する為に奪いにきたのさ。」

先程までの喧嘩腰は消え、真面目なトーンで襲撃の理由を話す、海賊。剣の詳細を知っている?

「あんたのお仲間についてはしらねぇな。部下に任せてあるからな、その辺に散り散りになってんじょねぇのか?」

しかしすぐにまた喧嘩腰になり、こちらを挑発してこようとする。その間、やはり海の中を気にする海賊。一体何を気にしているんだ?

「何をそんなに気にしている?海の中がどうかしたのか?」

問うと海賊は苦虫を噛み潰したような表情になり、頭を掻く。

「…子供が1人、落ちた。んでその保護者の女が追いかけるように飛び込んだんだ。助かる可能性は低いが、できる限りのことはしてやりてぇ」

「なっ!こんな嵐の中に!?助けないと!」

そう言って剣を捨て手摺に駆け寄り海を覗く…駄目だ。こんな荒れた海で人を探すなんて無理だ。どうすればいい?何か…何かないか?

辺りに何か使えそうな物がないか見渡すがめぼしい物はない。そもそももし道具があったとしても肝心の二人が見つからなければ、どうしようもない。

「諦めるしか、ないのかっ!」

「おい!あんた、あぶねえ!」

思考に囚われていると背後から声がかかる。振り返ろうとするが、一際大きな揺れが起こり、足を掬われる。体勢が崩れ、床に尻餅をついてしまう。衝撃に一瞬視界が暗転するが頭を振り、無理矢理目を開ける。

「あっ…まずい」

目の前に迫っていたのは…タル。回避はもう不可能。

衝撃。勢いのついたタルに衝突され、いとも簡単に吹っ飛ばされる。床に全身をぶつけ、意識が朦朧としてくる。


(ごめん…隊長…ギャレオ…みんな…)


仲間達を見つけられなかったことが悔やまれるが、意識はもう持たないようだ。最後に見えたのはこちらに駆け寄ってくる、よく映える金髪だった…





「お頭ぁ!剣は見つかりませんでした。それにこの船、もうもちません。戻りましょう!」

俺が帝国軍人の脈を取り、まだ生きてることを確認していると1人の部下がやってきた。

「剣は回収できなかったか…チッ、厄介なことになったな。仕方ねぇ、引き上げるぞ!」

そう言って赤髪の兵士を担ぎ上げる。それを見て部下が「そいつ連れて帰るんですか!?」と驚きの声を上げる。

「仕方なねぇだろ。目の前で伸びちまったんだし、この船はもう沈みそうだし、ほっといたら目覚めが悪りぃだろ…」

そうして海賊達は引き上げて行った。目的の剣が二本とも、適格者の手に渡ってしまったとに気づけないままに…












「あははははははははは!ようやく大人しくなったね。ホント、面倒な剣だよ。」

沈みそうな船の一室で、青年は高笑いしていた。手に紅の剣を携えて。

「ふふ、これでやっと僕は…」

淋しそうに笑うと、青年は剣を逆さまに持ち勢いよく自分に突き立てた。

「っ、ガハァ!ははははははは…これでやっと…グッ」

血を吐きながら嗤う。剣を抜き、床に倒れる。そして満足そうに目を閉じ、やがてくる待望の瞬間を待つ。





「おい、なんだよっ、なんなんだよ!なんで!なんで、なんでなんでなんで!」

しかしその瞬間は来なかった。それどころか気づけば青年の体は傷一つ残っていなかった。青年は鬼のような形相で剣に詰め寄る。

「どういうことだよ!キルスレス!お前の力があれば!こんな呪いくらい!」

…オ前ガナニヲシタイノカ知ランガ、ワレハ経緯ハトモカクオ前ヲ認メタノダ

うるさい!そんなのどうでもいい。知りたいのは理由。

適格者二エラバレタ以上、ワレハ絶対二オ前ヲ殺サセナイ…何ガアッテモナ



「何だよそれ。それじゃ僕は更に不死身になったってわけだ…あはははははははっははは!」

床に座りこんだ青年の腰の辺りまで海水は浸水してきている。そんな中で青年は壊れたように嗤う。もうどうでもいい。とんだピエロだ!笑うしかない。

「ねえキルスレス。不死身になった僕はもう神にでもなれるよねぇ、ははは。なってみようかぁ、だって、誰にも僕は殺せないんだろぉ?はははは」

…イヤ、マダオ前ハ神二ハナレナイ

…ナゼナラマダシャルトスガ残ッテイル

…アレヲ砕ケ…ソウスレバ、神ニデモナンデモナレバイイ






「…それ、どういうこと?」







[28381] 第2話 新たな仲間
Name: ディディエルゴ◆7df7c9f8 ID:1f83cacd
Date: 2011/06/22 11:30




「来るなあああああああああ!」

遺跡の中、1人の男が咆哮する。その男の姿は異常。

色素の抜けた白い長髪。
髪と同じか、それ以上に白い肌。
瞳孔がありえないくらい開いている碧の瞳。
手に握る剣は瞳と同じ碧の輝きを放っている。
剣と手は完全に同化していて、そこから碧の筋が幾重にも伸びており侵食は顔にまで到達している。

「先…生?」

近づくのを止められた少女が瞳に涙を溜めながら、男を呼ぶ。

「もう、みんなとは居られない…殺してしまうから…俺はもう、笑えない…」

悲しげに告げる男。

諦めるなと、何かある筈だと、周りは言う。しかし男はそれには取り合わず、自分の言葉を続ける。

「頼みがあるんだ…」

その言葉に周りの人間はみな黙る。理解したのだ…もうどうにもならない。これは…彼の最後の頼み…

「悲しみも、憎しみも、全部俺が持っていく。俺が受け止める。だから…」

本当に最後の男の笑顔…それはいつものように周りに安心を与えるものではなく、儚げで、物悲しい笑顔…

「俺の代わりに…笑っていて?」

「先生ー!!」

少女の叫びが虚しく響く。男は人間離れした跳躍で仲間の元から去る。

男が、少女が、仲間が望んだ未来は…絶たれた…



「サヨナラ…」













「ん…」

「お、やっとお目覚めか?」

すぐ側から声が聞こえる。どうやらベッドに寝ているようだ。

「ここ…は…」

身体中が酷く痛んで、喋ることすら苦痛を伴うがなんとかそれだけ口にする。目を開ければ、自分を覗きこんでいる金髪が目に映った。

「ここは俺の船だよ。覚えてねぇか?お前さん、俺の目の前で気ぃ失ったんだ。んで、放っとくわけにもいかねえから連れて来たって訳だ」

…思い出した。そうだ、自分は船の上でヘマをやらかして気を失ったんだ。その所為で結局海に落ちたという人を助けることもできなかった…

「おい、あんた大丈夫か?」

金髪の男が心配そうにこちらを見ている。悔しさに顔を歪めているのが、どうやら苦しそうにしていると勘違いしたようだ。

「ああ、大丈夫。体はなんともないよ。それよりも…」

レックスはゆっくりと体を起こし姿勢を整え、男の目を見る。急に起き上がったレックスに男は少し警戒心を剥き出しにする。それを感じ取ったレックスは苦笑してしまう。まぁ仕方のないことだ。自分は帝国軍、相手は海賊。こうして助けてくれたことさえ奇跡みたいなものだ。だから伝えないと…

「助けてくれてありがとう。君のおかげで命拾いしたよ」

レックスの素直な感謝の言葉。かけられた男は目を丸くして口をあけたまま固まっている。怖いのはそのいつでも殴れます!と言わんばかりに構えられている拳だ。

「くっ、ははははは!そうか!いや、そうだよな!俺が悪かった!」

急に笑いだす男。その突然の笑い声に驚いて今度はレックスが目を丸くしてしまう。自分としては敵同士だと言うのに当たり前のように助けてくれた男に感謝の気持ちを伝えただけなのだが…何が面白かったんだろう?首を傾げるレックスに「悪い悪い」と謝る男。ようやく笑いが収まったようだ。

「礼を欠いてたのは俺の方だ。帝国軍ってだけで、今あんたのことを警戒しちまった。助けられたら礼を言う。当たり前のことを俺は忘れちまってたぜ…」

苦笑しながら頭を掻く男。

…まだ少ししか話してないがこの男がいい人なのがよく分かった。じゃなきゃこんなこと言えないよ。

「いや、気にしないで。敵同士だったのは事実なんだ…警戒するのは当たり前だよ。それより、俺はレックス、一応帝国軍所属…よろしく!」

軽い自己紹介をして男に手を差し出す。これも何かの縁、知り合った以上やはりこういうことはやっておくべきだよね。

「おう!俺はカイル、この海賊一家の元締だ!よろしな!」

気持ちのいい笑顔で握手に応じてくれるカイル。その爽やかさはレックスの頭の中の海賊のイメージとは遠くかけ離れていた。










「じゃあこの島が何処なのか、それすら分かってないんだ?」

「ああ、今仲間が2人、船を降りて島を調べてる所だ。船も壊れちまって航海はできねぇしな、まぁ漂流して餓死するよかマシってとこだな」

あれからカイルに今の状況を説明してもらった。

あの嵐からもう3日たっていること。
ほとんどの乗組員は散り散りになってしまったこと。
船の操縦はできなくて2日程漂流して昨夜、この島に漂着したこと。
そして明けて今日、とりあえず船の周辺の調査を始めたこと、などなど…

自分が置かれている状況は概ね理解した。だから次はあの船のこと…どうなったのか予想はつくが、それでも聞かずにはいられなかった。

「カイル、あの船…いやあれに乗ってた他の人は、どうなったか…知ってる?」

聞いた途端、カイルは悲しげに顔を伏せ首を横に振った。やはり助かったのは自分だけのようだ。

「…遠目に沈んだのを確認した。できるだけ助けたかったんだが、部下達もほとんどいなくなっちまってこの船をを沈めないように保つのが精一杯だった…すまねぇ」

船を襲ったのは確かにカイル達だ。でも船が沈んだのは嵐、自然災害の所為だ。カイルが謝ることじゃない。そう言おうとして、あることに気づく。

あの嵐…不自然じゃなかったか?あの日はあんなに晴れていたのに…いくら天候の変わりやすい海だからってあれは異常だ。そしてあの場にはその異常を起こしても違和感のない物が存在していた…もしアレが嵐を起こしたのだたとしたら、持ち込んだ自分達帝国軍の所為ということになる。

「どうした?レックス」

急に黙り込んだレックスに声をかけるカイル。その声で現実に引き戻されたレックスはカイルの目をまじまじと見つめる。彼はあの剣のことを知っている様子だった。船を襲ったのも剣が目的だったようだし…

ずっと気になっていた…あの剣に触れてから、自分じゃない自分が流れ込んでくる、そんな、言ってる自分もよく分からない現象に遭遇している。自分はあの剣を知っている…のかもしない。少なくとも剣の方はこちらを知っていた。彼なら、この疑問に答えをくれるのだろうか?

「あのさ…あの魔剣なんだけど、あれは一体なんなんだ?カイルは何であの剣のことを知っているんだ?どこまで知っているんだ?」

気付けばそんなことを聞いていた。気になるんだ…あの剣のこと。関わりたくない…でもあれは自分にとって、とても大切な物…のような気がする。

「ああ、あれか。まぁこんな状況になっちゃ、今更隠す必要もねぇか。いいぜ、話してやるよ。あれはな…」

カイルの言葉を遮るように、扉がノックされる。カイルはそれに「おう!入いんな」と応えると、はい、と声がして扉が開かれる。

「カイルさん、どうですか?彼の様子は…あっ…よかった、どうやら目が覚めたようですね」

 入ってきたのは銀髪で長身の男。物腰柔らかい印象を与える笑顔でこちらへやってくる。「ほんの数分前にな」とカイルが説明する。そしてレックスにこの男が自分の傷を癒したということを教えてくれた。

ヤード、というらしいこの男はこの海賊一家の客分で、彼の依頼で今回の船襲撃を敢行したとのことだ。

「あの魔剣は、誰かが所有していい物ではありません。どこか人の手の届かない所へ破棄する為に、私が持ち出したんです…」

しかし、と悔しそうに顔を歪めるヤード。

「追手との攻防で剣は私の手を離れ、帝国軍に回収されてしまったのです」

「ちょっと待って!じゃあヤードさんはもしかして…無色の派閥!?」

話を聞いてその結論にたどり着く。あの魔剣が無色の物だということは知っていた。持ち出したということは彼はやはり…

「ヤードでいいですよ…」と苦笑する彼。そしてフォローするように口を挟むカイル。

「あの魔剣を使って近々とんでもねぇ実験が行われることになってたらしい。んで、色々あって派閥を抜けるつもりだったヤードは、その計画を潰す為に魔剣を持ち逃げしたって訳だ」

逮捕するか?とカイルは冗談混じりで言う。その際、目は笑ってなかったが…

そんなことしないと、意思表示を示しこの話を終わらせる。剣について知っている人間がいるのなら、聞きたい事がある…いや、聞かなければならないことが…

「ヤード、あの魔剣は一体何?俺、あの剣に語りかけられたんだ…継承がどうとか…って。ヤードは剣にしたのか?」

全ては話せなかった。あまりにも荒唐無稽すぎて。剣が自分のことを知っていた事、握った時何か、あり得ない筈の記憶、のような物を幻視した事だ。

「剣が喋る?そんな筈は…いやしかし、それくらいあの剣なら…」

どうやら思考の海浸かってしまったようだ。何かを呟きながら目を閉じてしまった。しかし彼の様子から、剣が喋るという事は知らなかったようだ。

(剣の声を聞く為には、何か条件があるのかな?)

そうかもそれない…だがそれならその条件とは何だろう?自分は特別召喚術ぎ得意という訳ではない。無色の物なのだからその辺りが条件になりそうな気がするんだが…

「おーい、お二人さんよ。2人していつまで黙り決め込むつもりだ?」

「はっ!」

カイルの言葉で意識を浮上させる。お互い少し恥ずかしそうに頬を掻いて見合う。

「すいません…ですが、私が剣を所持していた際はそんなことはありませんでした。派閥の記録にもそういうことは…」

「そう、ですか…」

派閥さえ知らない剣の特性…あれは一体何だったんだろう。





























「…おい、ヤード。どうやらお客のようだぜ」

お互いの情報をあれこれ交換していると、唐突にカイルがそんなことを言い出した。ヤードは静かに立ち上がり、そっと窓から外を眺める。

「あれは…はぐれ召喚獣。それもかなり多い…」

「まっ、やっぱ楽な留守番ってわけにゃいかねぇか…行くぞヤード!」

これ以上船を壊されでもしたら修復ができなくなってしまう。それを防ぐ為、彼らは部屋の外へ向かう。そんな彼らを当然見過ごせる筈もない。

「カイル、余ってる剣はある?」

2人はこちらを振り返り、目を丸くしている。いや、驚くことじゃないだろう…

「今度は俺が、君たちを助ける番だ!」

力を込めて告げる。別に助けられたから助けるわけじゃない。俺が助けたいから、だから助ける。

「スカーレルのなら予備はある筈だ…レックス!お前、短剣は扱えるか?」

頷く。武器は一通り訓練した。本当なら片手剣がいいのだが、今は贅沢は言ってられない。

カイルは足早に部屋から出て行った。それを見送り、ヤードはこちらに問うてくる。

「有り難い申し出ですが、宜しいんですか?貴方は帝国軍…」

「それは今は関係ないよ。こんな状況なんだ…助け合わないと」

遮りこちらの意思を告げる。ヤードはしばらくこちらをじっと見ていたが、
やがてやがて柔らかく微笑む。

「ありがとうございます。では、詠唱のフォロー、お願いしますね」

「ああ、任せてくれ!」

そこへカイルが戻ってくる。おもむろにこちらへ投げらられた短剣を危なげなく掴み、感触を確かめる。

「どうだ?」

戦えそうか?というカイルの無言の問いに頷きで返す。

それを見てカイルは不敵に笑う。両の拳をぶつけ、声をはりあげる。

「よっしゃあ!あのはぐれどもに誰の船に喧嘩売ったのか、思い知らせてやろうぜ…」

2人の顔を見渡して気合を入れる。2人もその視線に答えるように力強く頷く。カイルは満足そうに笑う。



「行くぞぉ!!」







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