小説家になろうに載せている合作です。
正式な題名は「キモオタが厨二的能力と魔王(お荷物)を得て魔王(設定だけででないっぽい)を倒すため異世界へ旅立ったようです
」・・・長いですね
なろうに合わせて改行してます(すいません)
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「きゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
―――耳の鼓膜が破れそうなくらい大きな悲鳴。 学生服を染める真っ赤な血。
昼間の学校では決してありえない光景だった。
「き……きじ……ま……!!」
皮が斬られて中身が見えてしまっている右腕を左手で押さえ、土谷克樹は眼の前にいる狂者を睨む。いや、敵と言った方が正しいのだろうか。
「……死ねよ!」
そこで、意識はプツリと途絶えた。
あの惨劇からもう二年が経つ。思い出したくも無い、逃げている方が楽だ。
テーブルライトも何も点いていない暗い室内で唯一光を放っているパソコン。
モニターにはARPGゲームのメニュ画面が表示されている。もう涙が枯れてしまい、泣くことすらできない。
二年前、俺は通っていた高校である事件を起こした。
自分が悪いわけではない。機械の進化で自然と起こってしまった事件。
人にナイフを、銃を、凶器を向けても何とも思わない人間で溢れかえっているこの世界のせいで、事件が起こったのである。
そのときの俺は所謂イジメられっ子という奴だった。
頼りない、もやし体型とひょろひょろした容姿からきているのだろう、ある日突然「弱虫」やら「ひょろメガネ」と言われてからかわれ始めたのである。
喧嘩は弱い、成績も悪いで何も言い返すことはできず、イジメはどんどんエスカレートしていった。
そして事件の日、俺はある喜びを得た。
家庭科の授業で裁縫を褒められたのである。イジメグループではない男子生徒や女子生徒にわいわい言われて少し照れくさかった……が。
それが引き金となってイジメグループのリーダー来島公の怒りが爆発。
俺は昼休みに廊下でさらに恐ろしいイジメを受けたのである。
名を、「ターン」と言う。
俺を回して、ナイフを近づける。そして俺が回る力だけで俺の服を切り裂くというものだ。残酷、デスゲーム。そのような単語が相応しいだろう。
そして、ターンが始まり俺の学生服がだんだんと切り裂かれていった。
女子生徒の「うわ……」や「やめなよ」という声。男子生徒の「はは……」、「もっと斬れ!」などの笑い声。……そこに先生が割って入った。
「やめなさい」と。「退学にされてもいいのか」と。
だが、それがさらに来島の怒りを買い…………
そこからは、思い出したくもない。
斬られた右腕には糸で縫ったあとが残っている。
事件後、俺は逃げた。
引き篭もり、自分と同類である人たちと一日中チャットをするだけの毎日が始まる。
親は自殺する可能性があると思っていたか、何も言わなかった。
そして―――現在に至る。
18歳。本当なら高校三年生。逃げて、逃げて、逃げまくった俺はキモオタ系の引き篭もりと化している。
どこまでも偽ることができ、自分を裏切らない楽しみが入ってくるゲームや仮想世界。
そこに足を踏み入れた俺はでれなくなっていた。
いや、逃げる気なんてない。
自分はこの世界で生きる。そしてこの世界で死ぬ。
現実世界じゃない仮想世界でだ。
「ふぅ……」
キーボードを打つ両手を休め、デスクとセットの椅子に背中を預ける。
流石に疲れがでてきたか……。
徹夜三日目、勿論集中しっぱなしだったので食事も一切取っていない。
ARPGオンラインゲーム「ディアソルサーガ」。
新しくサービスが開始されたこのゲームに今、俺はどっぷりとはまっている。
綺麗な3Dグラフィック、数え切れないほどのスキルや魔法。
有名ゲーム会社「KONU」が開発した今一番流行っているネットゲームだ。
ストーリーに沿っていくのではなく、戦闘を楽しむ。
レベルが上がっていくのではなく、使える技や魔法の数が増える。
発案者のユニークな発想から創り出された大傑作。
そして俺はこの三日間徹夜し、ようやくユーザーランキング第五十位になったのである。
瞼は少し気を抜いただけで閉じてしまうほど、手にはほとんど力が入らなくなっていた。
……睡眠をとろうか。なあに、すぐ追い抜かれるわけじゃないさ。
思い、俺はバフっとベッドに倒れ込んだのだった……。
――眼が覚める。
だが眼に映る天井は黒でなく、輝かしい白色をしていた。
起きて周りを見渡すと、顔の辺りに雲、白の空が広がっている。
……夢か。天界のようなところに来てしまったな。
一瞬で状況把握。キモオタだから不思議な世界のことがよくわかる。
最近、何故か奇妙な夢を見ることが多かった。
……熟睡できていないわけではないようだが、少し気になってしまう。
「どうするかな……」
どうやら今回の夢は強敵らしい。自分の手を見たりしても中々覚めてくれない。
最後の手段だ、と頬を抓ろうとした
―――そのとき、脳に流れてくるような声が聞こえてきた。
{ここは夢の中などではない、現実じゃ}
「――!?」
透き通るような、女性の美声。
どこか古い口調で、おだやかな雰囲気がある。
――っ!?どういうことだ……?
今まで夢の中でこんなにはっきりと声が聞こえたことなんてない。
それに……夢の中で「夢じゃなく現実」というのは明らかにおかしい。
驚き、再び辺りを見渡す。だが、いくら探しても人っこ一人いなかった。
{探しても無駄じゃ、わらわは姿を消しておる}
「姿を消す……というのは?」
額から頬、頬から顎へと冷や汗が伝っていく。
体中が軽く痙攣しているのは自分でもわかる、異常だ。
{姿を消す、ということは……}
「…………いやちょい待て」
急に痙攣がピタリ、と止まる。
展開がおかしい、なんだこれは?キモオタ思考に戻れ俺よ!
…………ウィーンガシャウィーンガシャ、チーッン!
よしOK。改めて考えてみよう。
まず、俺はどこにいるか……A,夢じゃない現実の天界らしき場所
声について、脳に流れる感じ、美声、姿がない……もしかして……
「……映画撮影中か?」
{違う}
だめだ、瞬殺だった。
もういいや、訊いてみよう。クイズじゃないんだから。
{ここは神の聖域じゃ}
「はぁ……」
{そしてわらわは神、姿を消すのは自分の力じゃ}
「………………アニメ中毒患者ですね、わかります」
「違うわい」
またしても瞬殺。せっかちな人だ、全く……最近の若者(?)は。
しかし……どう考えても映画撮影にしか思えないんだが。
声は特殊効果、場所はセットだと考えればぴったり合うし。自分、動揺しないし。
……証明させようか。
「じゃあ……俺にオーラか何か纏わせてみろよ、成功したらここが神の聖域だと認める」
やっぱり金の方がよかったかな。
言うと、{う~ん……}という唸り声が脳に響いてくる。
やはり無……
{よし、やってやる!}
マジですか。どんだけクオリティ高い映画をつくろうと?
そして、次の瞬間にパッと体が発光した。
―――まぶしっ!!
思わず、眼を瞑って俯く。
……が、効果は無い。完全に眼を瞑ることなどできず、(ってか光に負け)眼に激痛が走った。
「うぎゃあああああああああああああああああ!!!」
SMプレイより辛いことをされている。
光の眼つぶしがここまで破壊力あるとは思わなかった……油断対敵。
{どうだ!これが神の力だ!!!}
大きく脳に響く声。
うるさっ……ってか眼が、眼があああああああああああああああ(眼→あ?)!!!
{というわけじゃ……}
「はぁ……」
どこかへ向かって正座し、申し訳なさそうな声を出す。
状況を説明しよう、一言で言うと異世界トリップ前だ。
……まぁ俺だけが異世界に行くわけじゃないらしいけどね。
なんか神(の声)が俺たちのいた現実世界を削除して恐竜世界作るらしい。
で、現実世界の住人は全員RPGファンタジックワールドにお引越しというわけだ。
つまり、三日徹夜したネトゲのランキングとかも全て消える。
乙ですた。
…………了承できるかっ!!!!
「……ファンタジックワールドに現実世界のもの全てを移すというのは……」
{無理、不可能、諦めて田舎へ帰れ}
もうすぐ田舎消されるんですがどうすればいいですか?
普通の簡単にチートもらえたりする異世界トリップならいいさ。
それならどんなに楽か。
……この神の場合、そのまま人間を移すだけだろうな。
職業データとかも全てパー、年金制度もなさそうだからすぐに死ぬ人でてきそうだ。
まぁそこらへんはどうでもいいんだけど。
目的……A、何とか普通じゃない異世界引越しをする。できればチート欲しい。
方法……A,会話で上手くもっていく。
とにかく普通の商人(または死人)とならない異世界引越しがしたいといけない。
……くそっ!俺のランキング!
「先生、もっと詳しい説明してくれませんか?」
{先生言うな。まぁ……とりあえず説明するべきじゃな…………パンフレット作らないといかんな……」
あれ?最後らへんなんかボソッて……。
{えーまーあれじゃ。魔界と王国が対立し合ってるけど実際ほとんど戦争の予感しなくて平和で暮らしてる……みたいな}
それ勇者とかいります? ってか適当に作りすぎじゃ?
ツ○ール使ってますよね? しかも製作時間二分でしょ? どうせ。
……ちょっとこういうありきな状況にでる疑問点をついていこうか。
「質問ですが……作った世界に細かなブレとか起きません?一気に人間を移動するんですから……」
何で敬語なんだろ。
{まぁ確かにバグは起きるな……}
ほらー! 絶対この人ツ○ール使ってるよ。
……プログラミングでもしてるのか、こいつは。
人間のお引越しも切り取り→貼り付けみたいだ。
……そこをつくか。もういいや、普通じゃなければ労働的なことでも
「ワタクシにそのバグ修正を任してくれませんか?」
{う~ん……}
神(の声)は唸り声をだす。あともう一押しなのは言うまでもない。
ってか人間に上手いこと言われる神ってなんだよ!
「恐竜世界の製作に取り組みたいんですよね?」
{あーもういい。OKOK、チート欲しいんじゃろ?}
バレてたのか……。適当な態度はいったいなんなんだ。
思った瞬間、パチッという指を鳴らす音と共に手袋、ディスプレイ……
………………両手に手錠をはめられた一人の男が目の前に現れた。
正直コメントできないものが一つあるんだがどうすればいいだろうか。
ちなみに手錠男はしゅんとして俯いている。
「……順番に説明してくれ……ださい、デカブツ(手錠男)は最後で」
{まず手袋について。それをはめて力込めると想像したものが全部でてくる。チート装備じゃ。次にディスプレイじゃが……世界の説明じゃな}
言って、神(の声)は再びパチッ、と指を鳴らす。
正直言わせてもらうと俺は指を鳴らせない。スカッって音がする。
音とともに、ディスプレイに地図が浮かび上がった。
∞形で左が黒、右が緑色に塗りつぶされている。
山のでこぼこなどがないのでおそらくペイ○トで書いたのだろう。
……せめてS○Iくらい使わないか?
ってかパソコン使いすぎ。
{左が魔界、右が王国じゃ、はい終了ー}
「……」
適当すぎて何もいえないのは自分だけだろうか。
もし自分だけならこの世界(あれ?ここどういう世界?)はいかれている。
そして、手錠男が最後に残った……。
{こいつは悲劇の魔王でな……}
あれ!?なんかイメージと違う事情持ち!?