2011年4月30日
装いを一新して5月4日に生まれ変わるJR大阪駅で、1世紀以上も親しまれてきた「噴水小僧」と「旅立ちの鐘」が戻る場所を失っている。新しい駅にはおしゃれな待ち合わせスポットが次々と誕生。明治生まれの名物たちは、このまま永眠してしまうのか。
噴水小僧は高さ1.2メートルの銅像。JR西日本系列の交通科学博物館(大阪市港区)が預かり、薄暗い倉庫にある木箱の中で眠っている。頭上に持ち上げたハスの葉から水が噴き上がる仕掛けになっているが、7年余りも使われていない。
駅の改修工事で2004年3月に撤去されるまで、中央コンコースにあった人工池のまん中に鎮座し、池の周りは大勢の人たちでにぎわっていた。
「友人と待ち合わせようと思っても、混みすぎて会えないほどの人気スポットでした」。博物館の学芸担当、高井洋文課長(58)は小僧の全盛期を振り返る。「駅のシンボル。行き場がないなら、常設展示したいくらいです」と、サビが浮いた像の顔をなでた。
「小僧」といっても、もう110歳のおじいさんだ。1901(明治34)年の駅舎建て替えに合わせ2体造られ、正面玄関を挟んで東西に配された。もう一体は、40(昭和15)年に中央コンコースに移されたときに、どさくさ紛れに行方不明になったままだ。63年には旧国鉄が、歴史・文化的に重要として「準鉄道記念物」に指定している。
もう一つの名物、旅立ちの鐘(高さ48センチ)は、1874(明治7)年の初代大阪駅の開業時から列車の出発合図に使われたといわれる。昨年11月まで中央コンコースにあり、待ち合わせの目印として利用客に重宝されていた。いまは大阪駅の倉庫に保管されている。