スパコン 7年ぶり世界一獲得

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日本の理化学研究所と富士通が共同で開発している次世代スーパーコンピューターが計算速度の世界ランキングで1位に選ばれました。
日本のスパコンとしては、7年ぶりの世界一獲得です。
政府の事業仕分けでは、いったん予算計上の見送りに近い削減と判断されたこの次世代スパコンの開発について、神戸放送局の小久保峰花記者が解説します。



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スーパーコンピューターの世界ランキングは年2回発表されているもので、20日にドイツで発表された、ことし上期のランキングでは、日本の理化学研究所と富士通が神戸市で開発を進めているスパコンの「京」が計算速度で1位に選ばれました。
これを受けて、神戸市中央区のポートアイランドにある施設では、報道陣に整備が進む施設内部の様子が公開されました。
最終的には864台のコンピューターの入った箱が連結されることになっていますが、これまでに、すでに全体の86%に当たる744台が連結されて、広いフロア一面にぎっしりと並べられています。
わずかな水滴やほこりが機械に入っても動作に影響が出るということで、訪れた取材陣も土足厳禁で、スリッパに履き替えて汗をタオルでぬぐい、施設内に入りました。
さらに携帯電話の出す電波でコンピューター機器が誤作動するおそれもあるとして、施設内では携帯電話の使用が禁止されるほどの気の使いようでした。



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「京」は、その名のとおり1兆の1万倍に当たる1京回という世界最速の処理能力を目指しています。
まだ整備段階にも関わらず1秒間に8162兆回の処理能力を達成して、去年1位だった中国製のスパコン「天河1号A」の性能を3倍以上上回って1位になりました。
日本のスパコンが計算速度で世界ランキングの1位を獲得したのは平成16年以来、7年ぶりとなります。



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「京」は、総予算1100億円余りの国家プロジェクトとして開発が進められましたが、おととし行われた政府の事業仕分けでは、「莫大な開発費用に見合った成果を出せるのか」などと厳しい意見が相次ぎ、いったん予算計上の見送りに近い削減と判断され、科学界などから猛反発を受ける事態となりました。
さらに、3月の東日本大震災では、協力会社が被災して開発作業が危ぶまれる事態にも陥りましたが、こうした幾多の試練を乗り越えて今回の栄冠につながりました。



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ただ、「京」は一度に多くのコンピューターを動かすため、年間で最大90ギガワット時と一般家庭2万5000軒分にも上る大量の電力が必要です。
この夏は電力不足による節電が求められることになりそうですが、「京」にはガスタービンによる自家発電機能が備えられていて、最大で70%の電力を自家発電で賄うことができるため、電力会社から節電の要請があったとしても対応は可能だということです。
今回、「京」は圧倒的な成績で世界ランキング1位を獲得しましたが、しれつな競争が続く次世代スーパーコンピューターの開発とあって、次回、11月に発表されるランキングでは「京」と同程度の能力を持つと言われるアメリカのスパコンなど、各国で開発が進むスパコンがどの程度の順位まで上がってくるかが注目されます。



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「京」は、来年11月の本格稼動を目指して整備が進んでいて、今後、地震や津波など大規模な災害による影響の予測や、太陽光発電などに用いる新材料の開発などの分野での活用が期待されています。
理化学研究所計算科学研究機構の平尾公彦機構長は、「非常にしれつな争いなので、来年の本格的な運用開始まで『京』が世界一でいられるかは分からない。しかし、世界でも最高性能のスパコンであることは間違いない。『京』を使ってどんな成果を出すかが重要であり、社会にきちんと貢献していきたい」と話しています。

(6月21日 19:15更新)

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