国内最大規模の情報資産プラットフォーム企業である株式会社パイプドビッツは、第三者機関として「AKB48 22ndシングル 選抜総選挙(以下、「総選挙」)」投票システムの納品や運用、QRコードやシリアルナンバーの発行、各チャネルからの投票集計などにより公平な選挙を支援いたしました。総選挙を滞りなく終結するために、舞台裏で繰り広げられた技術者の奮闘記をお伝えいたします。
「涙目になりましたよ。」―― 本プロジェクトのハード面、インフラ構築を担った、情報設備管理本部システム基盤整備部の武本は、プロジェクトのアクセス数目標値を始めて聞いた時、途方に暮れたという。
毎秒1万アクセス。その値は、武本が普段担当している既存サービスと比較しても桁が違った。いつものやり方では達成できない。
未知のオーダーに対して、インフラ構築の誇りをかけてベストを追求すべく気合いを入れなおした瞬間でもあった。
「正直、気合いを入れすぎた感があります。」武本はプロジェクトをそう振り返る。アクセス過多でも「落ちない」ために、ロードバランサ(負荷分散装置)はサーバー2台、Webサーバーは3台、DBサーバーは3台、それぞれのサーバー間での冗長化の調整にも心を砕いた。さらに、スタンバイ機、ファイルサーバー、計10台の専用サーバーをわずか1日で設置した。機器の到着からデータセンターへの設置まで「2週間」という短納期の間には、本社移転も重なり、新オフィスでの通信環境の調整など、想定外の業務も発生した。その中で、武本はインフラ構築に関するほぼ全てのタスクを1人で担当した。
「普段から、自社でサーバーを構築し、データセンターに設置してテストと稼動を確認しています。自社開発を強みにしているパイプドビッツのシステム基盤担当として、パイプドビッツの底力を見せたいという想いで取り組みました。」大量アクセスへの挑戦、正念場の武本を、その想いが支えていた。
そしてついにアクセステストの日。NRIセキュアテクノロジーズ株式会社が所有する専門の機器によるアクセステストは、時間との戦いだった。毎秒8,000アクセス、9,000、10,000…、アクセス数ごとに、まずは数分間だけ連続アクセスを行い、平均処理反応率を確認する。そして、すぐに微調整し再びアクセステストを行う。「決められたテスト時間内で、最もパフォーマンスが出るよう調整をしなければならなかった。」
調整を重ねた結果、毎秒1万アクセスを充分に処理できるパフォーマンスに達した。そして、ある回のアクセステストでパフォーマンスの向上が見られなくなった。ついに、回線の帯域が限定要因という状況になったのだ。限界といえるパフォーマンスに達成した瞬間だった。ちなみに、回線の帯域の影響を軽減するために、1台のサーバーに絞って、テキストのみのサイトにしてアクセステストを計測した結果、実に毎秒5万5千アクセスを処理できたという。
武本が構築したインフラに支えられた総選挙投票システムは、今回の総選挙のアクセスを、処理しつづけた。
「パイプドビッツでは24時間の監視は当然ですが、(アクセス処理に関して)相当、余力を残してます。」と武本は胸を張る。