2011年6月22日10時30分
45年前、高度経済成長に浮かれる日本に警鐘を鳴らし、怪獣ブームを巻き起こした特撮ドラマ「ウルトラQ」がカラー化された。その名も「総天然色ウルトラQ」。実際の色あいを知る当時の出演者やスタッフの記憶も総動員し、伝説の番組が生まれ変わった。
■記憶・記録を総動員
ウルトラQは、ウルトラシリーズの第1作。特撮の神様と言われた円谷英二が製作総指揮をとった。1966(昭和41)年1〜7月の日曜夜にTBS系で放送され、平均視聴率は32・4%に上った(ニールセン調べ、関東地区)。
制作された28本はすべてがモノクロ映像。カラー化への期待が高まり、円谷プロを中心に08年、「ウルトラQ着色委員会」が立ち上がる。ハリウッドで実績のある会社と提携し、最新技術によるデジタル化とカラー化を進めた。
怪獣の色は、カラーグラビアが掲載された当時の雑誌などを参考にした。25種のキャラクターのうち、カラー資料が残っていたのは15体。残り10体は、実物を見ていた当時のスタッフから証言を集めた。日本の怪獣造形の第一人者である円谷プロの品田冬樹さんは「(背景の)土によくマッチする、オーガニックな色合いを目指した」と話す。
完成した「総天然色ウルトラQ」はDVDとブルーレイディスクで8月に発売。完全受注生産で怪獣の人形などがついたプレミアムブルーレイもある。
これに先立ち、デジタル化されて高画質になったモノクロ版が27日から、WOWOWで全作放送される。26日には1、2話を先行して無料放送する。(田玉恵美)
■「ブレザーは赤だった」 ヒロイン役の桜井浩子さん
カラー化に際して重要な役割を果たしたのが、ヒロインの新聞記者・江戸川由利子を演じた桜井浩子(65)だ。当時、身につけた衣装などをよく覚えていたからだ。
「自前のものが多かったからなの」と桜井は笑う。岩場で泥沼にはまるシーンの撮影。用意されていた靴を履こうとしたら、監督の円谷一が「ロコ(桜井)のでいいよ」。おかげで、ふんぱつして買ったベージュのスエードの靴が1日でだめになった。
このブレザーはグレーではなく真っ赤だった。このスポーツカーも赤だった――。映像を見ると次々に当時の風景がよみがえった。そんな制作秘話は、7月15日発売の自伝『ヒロコ ウルトラの女神誕生物語』(小学館)につづった。
「当時は映画の全盛期。ヒロインだと言われても、『映画じゃないもんね〜』という気分でした。今になって『Q』のすごさを感じます」