定員割れ、合格率低下…形骸化する法科大学院「予備試験」が抜け道に
法科大学院の入学者減に歯止めがかからない。今春は前年度より12%減で4年連続で過去最少を更新。特に法学部出身者以外の入学者が激減した。司法試験合格率の低迷が主な要因だ。今年からは法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格が得られる「予備試験」も始まり、専門家からは「司法制度改革の目玉だった法科大学院の形骸化につながりかねない」との声も漏れる。(田中充)
■低下続く合格率
法科大学院は「暗記中心」とも批判された旧司法試験から、幅広い教養や柔軟な思考力を身につけた法律家の養成を目指した新司法試験に切り替わるのに合わせ誕生した。新司法試験を受けるためには、法科大学院の修了が必要となる。
会社員を経て平成21年度に入学した弁護士志望の東京都内の男性(37)は来春に修了し、新司法試験を受験予定だ。「結局、合格するには試験に受かるための暗記中心の勉強がすべて。交渉能力など実務的な経験も身につけたいが、まずは受からないと…」と打ち明ける。
文科省によると、23年度の法科大学院の受験者は、募集停止している姫路獨協大を除く73校で2万509人。入学者は3620人で初めて4千人を割り込み、ピーク時の18年度の5784人から約4割減少。59校で定員割れとなった。
人気低迷の背景にあるのは司法試験合格率の低下だ。新司法試験は開始した18年の合格率が48・3%だったが、昨年は25・4%まで下落した。「法科大学院が乱立気味。すべてが高い教育の質を持ち合わせているかと言えば微妙だ」と法曹関係者は打ち明ける。
新司法試験では、法学部出身者以外の法曹界入りも期待されたが、今春の法科大学院の入学者は、法学部出身者向けの2年コースが前年度比8人減だったのに対し、それ以外の人向けの3年コースは494人の大幅減となった。
■暗記中心へ回帰懸念
こうした中、法科大学院修了者以外にも新司法試験の受験資格を与える「司法試験予備試験」が今年5月に全国8会場で実施され、6477人が受験した。
予備試験は、経済的な理由などで法科大学院に通えない人の受験機会を確保するために導入された。5月の試験は民法、刑法などの短答式で、7月の論文試験、10月の口述試験に受かれば、新司法試験の受験資格を得られる。予備試験導入に伴って、併存してきた旧司法試験は終了した。
予備試験の受験資格に年齢や学歴の制限はない。法科大学院の現役学生も受験可能で、合格すれば法科大学院修了と同じ資格が得られる。
「新司法試験の合格率の低下で、そもそも学生が法科大学院に魅力を感じられない」と断言するのは受験指導校「伊藤塾」の伊藤真塾長。「予備試験を目指す学生が増えても不思議ではない」と、予備試験が“抜け道”となる可能性を指摘する。
立命館大学法務研究科(法科大学院)教授の松宮孝明研究科長は「予備試験の合格者が増えれば、旧来型の暗記重視の試験対策に回帰してしまう。経済的な事情が予備試験実施の理由ならば、法科大学院に通う際の支援制度の拡充で対策をとるべきだ」と懸念している。
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