この非常時に国会会期の大幅延長は当然の話であるにもかかわらず、なぜ、ここまでもつれなくてはいけないのか。菅直人首相と民主党執行部の間ではようやく会期末前夜、延長は8月末までとすることなどで一致したが、与党内、与野党間の駆け引きばかりが続く姿にあぜんとする思いだ。東日本大震災の被災者、さらには国民が望むのはこんな国会ではない。与野党とも頭を冷やし、早くまともな国会に戻すべきだ。
菅首相が退陣時期を明確にすれば、野党は第2次補正予算案や赤字国債を発行するための特例公債法案などの審議に協力する、と岡田克也民主党幹事長らは首相を説得。これに対し、首相は本当にそれが確約されるのか、と疑念を呈する。一方、自民党や公明党は首相の早期退陣が前提との立場を崩さない--。
この間の堂々巡り状況を簡単に説明すればこうなろう。さらに事態を複雑にしたのは菅首相がここにきて再生可能エネルギー固定価格買い取り法案の成立に意欲を示し始めたことだった。
この法案は大震災発生直前に閣議決定された。東電福島第1原発の大事故を受け、当然、手直しが必要だろうが、私たちは法案の目指す方向性は評価したいと考える。
だが、成立させるためには相当の時間がかかると予想されるため、野党側は同法案を持ち出したこと自体、首相の延命策だと反発。首相も「菅の顔が見たくないなら早くこの法案を通した方がいい」などと挑発的な発言をし、事態を一層こじらせた。要するに双方、法案の是非論より、政局優先だった。
菅内閣に対する不信任決議が衆院で否決されてから3週間近く。「首相はいつ辞めるか」ばかりに与野党の関心が集中し、政治の停滞は目を覆うばかりだ。とりわけ、首相と民主党執行部のすり合わせにこれほど時間がかかるようでは、野党から「政権の体をなしていない」と批判されても仕方あるまい。
私たちは混乱だけを狙ったような今回の不信任案にはそもそも反対してきた。しかし、既に指摘してきたように一度、退陣の意向を表明した首相には限界がある。菅首相や民主党執行部はもっと早期に退陣時期と菅内閣に残された政策課題を明確にしておくべきだった。一方、野党も一歩踏み込んで協力すべきところは協力するとの姿勢を打ち出すべきではなかったろうか。
会期延長が22日正式に与野党で合意し決定できたとしても、かねて私たちが求めてきた大震災の復旧・復興のための与野党協調体制ができるかどうかも分からない。誰のための政治か。原点に立ち返ってほしい。
毎日新聞 2011年6月22日 2時31分