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福島第1原発:東電が政府側に渡した文書の全文

 東京電力が政府側に渡した汚染水遮へい壁に関する文書の全文は次の通り。

 ◇

 平成23年6月13日

 東京電力株式会社

 福島第1原子力発電所地下バウンダリの基本仕様について

 平成23年5月17日にお知らせした「『福島第1原子力発電所・事故の収束に向けた道筋』の進捗(しんちょく)状況について」にもとづき、当社福島第一原子力発電所において、海洋への汚染拡大を防止する観点から、地下水の遮へい工法について検討をすすめているところです。地下水の遮へいの構築については、中期的課題と位置付けておりますが、このたび、早急に対策工事に着手するために必要な、地下バウンダリ構築にあたっての基本的な考え方と基本仕様を示すことにいたしました。

添付資料

・別紙:地下バウンダリの基本仕様について

 ◇地下バウンダリの基本仕様について

1.基本的な考え方

○東京電力(株)は、これ以上海を汚染させないために、地下水の遮水について万全の対策を講じる。

○この一環として、地下バウンダリの具体的な設計に着手する。なお、設計がまとまり次第、統合対策室の承認をいただいた上で、対策エ事に着手する予定である。

2.地下バウンダリを設置する目的

○地下を通じた放射性物質の拡大による海洋汚染を防止すること。

○高濃度の滞留水がこれ以上海洋に流出させないために「後追いにならない備え」とすること。

3.地下バウンダリの基本仕様

○遮水範囲

 1~4号機原子炉建屋およびタービン建屋の周りに遮水壁を構築する。範囲は図-1において赤線で示す部分を基本とし、他構造物の干渉等を考慮して適切な範囲を設定する。

○遮水壁の仕様

 遮水壁は、基本的にスラリー連壁とし、難透水層の深さまで到達させる。海側については、遮水壁の施工性を考慮して、はじめに鋼管矢板等を設置し、その内側を一部埋め戻した上でスラリー連壁を構築する(図-2)。

○その他

 遮水壁内の汚染水を揚水(回収)し、外界へ放出されるリスクを低減する。また、雨水等の浸透を避けるために地表面をフェーシングする(図-2)。

4.課題

 今後、福島第1原子力発電所の安定化に向けたさまざまな対策工事と調整を図りながら、基本仕様をベースに以下の点について、より詳細な検討を継続的に進めるとともに合理化を図る。

○他のエ事、構造物との干渉箇所の調整及び対策

○揚水による汚染水の回収・処理の低減のための揚水計画の最適化

○配置計画の最適化

○遮水壁の構造の最適化

○工程短縮

以上

 ◇「地下バウンダリ」プレスについて

 (1)地下水の遮へい対策は、馬淵補佐官のご指導の下、『中長期対策チーム』にて検討を進めてきているが、「地下バウンダリ(発電所の周りに壁を構築し遮水するもの)」は現在、最も有力な対策と位置づけ。ただし、対策費用は現状不確定であるものの、今後の設計次第では1000億円レベルとなる可能性もある。

 (2)今回の検討の過程で、政府側から国プロジェクト化の示唆(当初は国交省予算)があり、その前提で、設計着手と工事着工の前倒し案が浮上。ただし、現状では、担当府省がどこになるかも含め、国プロ予算の具体化に目途が立っているわけではなく、経産省(原子力政策課)でも最近になり検討を始められたとの認識。

 (3)こうした中で、速やかにプレス発表をすべきとの馬淵補佐官のご意向を踏まえ、14日の実施に向け準備中であるが、工事の実施を前提とするプレス発表をした場合は、その費用の概算および当社負債の計上の必要性についてマスコミから詰問される可能性が高い。

 (4)また、現在、22年度の有価証券報告書の監査期間中であり、会計監査人から、当該費用の見積もりが可能な場合は、その記載を求められる虞(おそれ)が高い。しかし、極めて厳しい財務状況にある現下で、仮に1000億円レベルの更なる債務計上を余儀なくされることになれば、市場から債務超過に一歩近づいた、あるいはその方向に進んでいる、との厳しい評価を受ける可能性が大きい。これは是非回避したい。

 (5)したがって、馬淵補佐官のご意向を踏まえ14日にプレス発表とする際には、次のスタンスで臨むことについてご理解をいただきたい。

 (1)今回は「実現可能性調査」としての設計着手であり、着工時期や費用は今後の調査・設計次第にて不明であること。

 (2)費用負担のあり方(国プロ化)は、令後の検討の中で別途判断されていくものであること。            以上

 ◇「福島第1原子力発電所における地下水の遮へい工法の検討状況」の主なQA

Q.いつから着工する予定(見込み)なのか。

A.設計の検討結果次第にて現時点では不明。

Q.今年度中の着エはあり得るのか。

A.(設計の検討の結果次第にて)現時点では何とも言えない。

Q.早く着手しなければ地下水や海水の汚染が拡大するのではないか。

A.発電所敷地の地下水は山側から海側に流れている。ただし、流速は遅く(5~10cm/日)、仮に敷地地下に微量に汚染した水が浸透し、その地下水が海に向かって流れたとしても、時間的猶予(沿岸に到達するには1年以上)はあると考えている。

Q.1年後には対策を打つのか?

A.地下土中をゆっくり水が流れる際に、土壌に吸着される核種もあり、沿岸に到達する地下水が汚染されているか否かも含めた評価検討が必要。

Q.費用はどの程度か。

A.設計の検討結果次第にて現時点では不明。

SQ.概算でも言えないのか。10億円レベルなのか、数百億円レベルなのか、それ以上なのか。

SA.設計の検討ではさまざまな工法を検討するし、基本仕様そのものの見直しもあるかもしれないので、現時点では何とも言えない。

Q.費用について何らか計上すべきではないか。隠れ債務ではないか。

A.費用負担については、国のプロジェクト化も含め、国の直接的な負担の可能性について、政府に相談してきているところ。概算も不明であり、またその費用負担のあり方も今後の検討事項のため、当社の費用として計上すべき段階でない。         以上

2011年6月20日

 

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