表彰式は静かに始まった。昨年まで大きな力を尽くしてくれたフェルクリン社シュレンベルガー氏が今年初め、突然亡くなったことに対する黙とうがささげられた。また、アメリカのペストリーシェフ・オブ・ザ・イヤーがエン・ミン・スーに贈られ、まず、ベストチームワーク賞がデンマークチームと発表された。
ベストチョコレートショーピースは、今年は韓国チームに贈られた。これまで2年間連続してベストチョコレートショーピース賞を受賞してきた日本チームにとって、大きな落胆となった。しかし、ベストシュガーショーピースで日本チームがアナウンスされ、一度壇上から降りた後、ベストデギュステーション部門の発表となった。
マイクを持つ、主催者のマイケル・シュナイダー氏はこう語った。「私の息子は、『パパ、味覚部門で一位になるチームがいつも優勝するよね』と言うのです。でも、それは絶対ではありません。では、発表します。今年の最優秀味覚賞は・・・」「チーム・ジャパン!」それは明らかに日本の優勝が決まった瞬間であり、そして、これまで多くの大会で日本は味覚部門が弱いと言われ続けてきたことへのリベンジの瞬間でもあった。味覚部門を担当した五十嵐は、これまでの国際大会での苦渋をやっと晴らすことができたと言えるのではないか。そのことは大きく飛び上がり、全身で喜びを表す彼の姿から感じることができた。
総合では3位アメリカチーム、2位イタリアチーム、そして日本が優勝という結果となった。WPTC5回目にしてついに総合優勝を成し遂げた日本チームであったが、3人のメンバーは「この大会はWorld Pastry Team Championshipといい、あくまでチームの戦いです。チームというのは3人だけではなく、多くのアシストをくれたすべての関係者のことで、我々だけでは絶対になしえなかった結果です。大会を支えてくれた関係者に加え、さらに日本で自分の不在を支えてくれているスタッフや上司、すべての皆さんにお礼を言いたい。」と、口をそろえた。
WPTCは2002年の第1回大会から5回目を迎え、日本チームを取り巻く環境も大きく変わった。会場にいるすべてのMOFや過去の大会の優勝者、材料ブランドの方々なども顔見知りとなり、アメリカ現地で多くのサポートがもらえるようになった。世界が狭くなったようにも感じられた。だがそれと同時に、どれだけ準備や練習を重ねても、全く終わりのないパティスリーの世界の奥深さも改めて感じさせられた。世界中から注目されている日本のパティシエ達がこれからどのように自分たちの世界を突き詰めていくべきなのか。多くのことをアメリカの地で実感させられた3人の選手は、優勝に浮かれる暇もなく、これから自分達がさらに突き詰めるべき道筋を考え始めたに違いない。
World Pastry Team Championship 2010
2010年7月5・6日 アリゾナ州フェニックス JWマリオット デザート&リッジにて
主催:キャリーマックス社
参加国:デンマーク、イタリア、日本、メキシコ、シンガポール、韓国、イギリス、アメリカ
優勝:日本 (山本隆夫、三宅善秋、五十嵐宏)
2位:イタリア(Diego Crosara, Davide Maliziat, Fabrizio Galla)
3位:アメリカ(Kaushik Chowdhury, Melynda Gilmore, Keith Taylor)
ベストシュガーショーピース:日本
ベストチョコレートショーピース:韓国
ベストデギュステーション:日本
ベストチームワーク:デンマーク
ペストリーシェフ・オブ・ザ・イヤー エン・ミン・スー
レポート:WPTCオフィス 上村