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[政治]ニュース トピック:主張
【主張】原発再稼働 首相は誠意をもって語れ
東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で、定期検査の完了後も運転できない原発が増えている。海江田万里経済産業相は、原子力発電所が立地する自治体に対し、健全な原発の再稼働への理解と協力を求めた。
国が全国の電力会社に指示していた安全対策の実施状況を確認した上での要請だ。だが、自治体の反応は硬い。強い反発の声さえ上がっている。国への不信感が強いためだろうが、先進国の姿には程遠い秩序の喪失ぶりといえる。
定期検査後の原発は、国による安全性の確認を経て運転を再開できると法律に定められている。それが通用しない状況は、諸外国にとって理解不能と映るだろう。
ウィーンでは、今回の事故から原発の安全性向上への教訓を引き出すことに主眼を置いた国際原子力機関(IAEA)閣僚級会合が始まった。国によって事情は異なるが、多くの国が安定したエネルギーを原子力に求めている。
日本の原発の安定的な運転継続は、事故国として、世界の原発利用国に対する責務でもある。
電力各社が講じた安全強化策には、水素爆発の防止措置も含まれる。先にIAEA調査団が日本政府に示した一項目だ。同調査団は津波の過小評価も指摘したが、これについては既に非常用の電源車の配備などを終えている。
その他の安全対策もIAEA調査団の指摘に即している。にもかかわらず、自治体の長の多くが原発の再稼働に背を向ける姿勢はいかがなものか。
「脱原発」は耳に心地よく響くかもしれないが、現実を顧みずに直進すれば「貧エネルギー社会」に突き当たる。電力不足で経済や社会の機能が停滞すれば、東日本大震災の復旧・復興の致命的な障害ともなりかねない。
安全対策の適正実施が国によって確認されたことで、健全な状態で停止中の原発の再稼働に向けての手順は、おおむね整った。
欠けているのは、菅直人首相の誠意であろう。事故後、国民の間に原発への不安感が増したのは、首相の場当たり的な言動によるところが大きい。インターネット対話で、再稼働の方針を追認するだけでは不十分だ。
中部電力浜岡原子力発電所を止めたときと同等の意気込みで、停止中の原発の再稼働の必要性を国民に語りかけてもらいたい。
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