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東日本大震災:福島第1原発事故 東電、汚染水遮蔽壁の設置費公表せず 債務超過懸念

 東京電力が福島第1原発事故をめぐる地下水の汚染防止のための遮蔽(しゃへい)壁(地下ダム)の設置に関し、設置費用が1000億円レベルになるとの見通しを立てながら、公表しない意向を政府に伝えていたことが分かった。政府と東電の費用負担が明確でない中、東電が費用計上すれば債務超過に陥りかねないことを懸念したためだ。抜本的な汚染水対策の先送りとの批判の声も出てきそうだ。

 東電が政府側に渡した文書は13日付で、遮蔽壁の基本仕様などが図面を添付して説明されている。「『地下バウンダリ』プレスについて」という遮蔽壁の記者発表に関する文書もあり、発表に臨む際の東電の対処方針が5項目にまとめられている。記者との主な想定問答もあり、14日を発表予定日としていた。

 記者発表の文書によると、東電は、以前から地下水汚染の防止策を検討しており、「最も有力な対策」と指摘。「今後の設計次第では1000億円レベルとなる可能性もある」と見通しを立てた。しかし、東電はすでに11年3月期の連結決算で1兆2473億円の最終赤字を計上。このため、「仮に1000億円レベルのさらなる債務計上を余儀なくされることになれば、市場から債務超過に一歩近づいたとの厳しい評価を受ける可能性が大きい」と債務超過についての強い懸念を指摘。その上で、記者会見で「着工時期や費用は今後の調査・設計次第で不明」との立場で臨むと政府に伝えている。

 同時に東電は、国と東電の費用分担がはっきりしていないことを強調。メディアからの「詰問」も懸念し、債務超過に陥りかねないとの危機的な認識が、抜本的な汚染水対策を先送りさせていた実態が浮き上がった。

 結局、14日に発表は行われず、17日の事故収束を目指す工程表改定の発表の中で「遮蔽壁の検討」という形で盛り込まれた。

 ◇急ぐ必要ない--保安院

 経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は20日の会見で「大規模な対策で費用もかかる。地下水脈などの状況を踏まえ十分議論してから実行するものだ」と述べ、対策を急ぐ必要はないとの認識を示した。

 ◇具体的設計まだ

 東電は20日午前の記者会見で「(遮蔽壁については)17日に説明させてもらった」との認識を示した上で、「どういった形で設けるか検討中。まだ具体的な設計まで行っていない」と答えた。

毎日新聞 2011年6月20日 東京夕刊

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