生活台湾語
台湾語の発音
台湾語の基本音節は,子音・母音・声調の3要素によって構成されます。 1.母音 台湾語の母音を学習する前に,まず母音とは何かと言う事を把握しておきましょう。母音とは,言葉が口から出るまでの間に,いかなる障害物にも妨害される事なく作られる音です。つまり,母音の共通点は,日本語の「アイウエオ」の様に,ストレートに声を出す事です。また,それぞれの母音が違うように聞こえてくる理由は,口の開き方や舌の位置が異なるからです。従って,母音も学習する時は,口の開き方,舌の位置を丁寧に観察し,忠実に真似るのがコツです。
【1−1 単純母音】 母音の数は,言語の気流によって違います。例えばアラビア語は3母音,日本語は5母音と言われており,台湾語は6母音と言われています。これら6個の母音を単純母音と名付けます。最初に,これらの単純母音の記号と発音要領を説明します。
【1−2 複合母音】 また,母音には,単純母音の他に,例えば日本語の「ヤ,ユ,ヨ」の様に,母音同士が結合して形成される複合母音があります。 台湾語には,複合母音が10個あります。 これらの記号と発音要領は次のようになります。
【1−3 促音母音】 その他,台湾語には北京語に見られない,促音母音があります。促音母音とは,母音の後に子音(p,t,k,h)が付いている母音であり,日本語の促音と同様に,詰まって発音されます。発音要領は次の通りです。 −p : 日報の「ニッ」の要領で,上唇と下唇を閉じてしまう。
【1−4 鼻母音】 以上述べた母音の他に,更に鼻母音があります。鼻母音とは鼻腔を通して発音される母音の事を言います。つまり,鼻から出す母音であり,台湾語には4種類の鼻母音があります。記号と発音要領は次の通りです。
【1−5 声化母音】 最後に,母音として機能する特殊な子音(声化母音)を説明します。声化母音とは,子音でありながら,それだけで音節を構成できる子音の事を言います。台湾語には,2つの声化母音があり,それらの記号と発音要領は,以下の通りです。
2.子音 日本語の「胃」や台湾語の伊“i”「彼・彼女」は,母音だけで言葉になっています。言い換えれば,母音だけで音節が構成されていると言う事です。しかし,どんなことばでもこのような音節はむしろ少ないのです。膨大な数の語彙を表現するためには,母音の前や後に,何らかのテクニックを加えて,発音する事になります。このテクニックが即ち子音です。例えば,日本語の「手」という言葉は,〔e〕だけでは「手」の意味をなさず,必ず〔e〕の前に〔t〕を付けて〔te〕にする事によって初めて「手」の意味が生じてきます。ですから,ある言語を勉強する時には,必ずその言語の子音を勉強しなけらばなりません。母音の学習と同様に,台湾語の子音を習う前に。まず子音とは何かと言う事,子音を勉強する時の注意事項について説明しましょう。 子音とは,言葉が口から外へ出るまでの間に,何かの障害物で邪魔されて作られる音です。例えば,日本語の「ア」と言う母音を舌先と歯茎で邪魔すると,「タ」のような音になります。「タ」の〔t〕が子音です。つまり,子音を観察するには,まず邪魔をする場所を観察する必要があります。この邪魔をする場所を調音点と言います。この調音点が異なると,たとえ同じ母音でも音が違ってしまいます。例えば,日本語の「タ」と「マ」がそうです。これは「タ」の調音点が舌先と歯茎であるのに対して,「マ」の調音点は上唇と下唇だからです。 ところで,もしも調音点が同じであるにもかかわらず,音が違うように聞こえたら,何を観察したら良いのでしょうか?このような場合には,「調音法」を観察すれば良いのです。例えば,「タ」と「ナ」は,調音点は共に舌先を歯茎ですが,音が違います。なぜならば,「タ」が口から音を出すのに対して,「ナ」は鼻から音を出すからです。台湾語の調音法は,日本語の調音法と同じです。まず日本語を通して,調音法の勉強をしましょう。 調音法は以下の5種類です。 【1.破裂音】 閉鎖音と言う人もいます。つまり,調音点が2点を完全に閉じてから,完全に開放する方法で,母音の邪魔をします。 例 : 日本語の「団地」の最初の子音 【2.摩擦音】 調音点の2点で狭い透き間を作って,そこから言葉を送り出す方法です。 例 : 日本語の「風呂」の最初の子音 【3.破擦音】 破擦音で始まり,破擦音で終わる方法です。 例 : 日本語の「血」の子音 【4.鼻音】 口から出すのではなく,鼻から出す方法です。 例 : 日本語の「猫」の最初の子音 【5.はじき音】 調音点の1点が,他のもう1点をはじく方法です。 例 : 日本語の「立派」の最初の子音 以上説明したように,子音を観察する際には,まず調音点を把握することです。その次に調音法を観察するのです。しかし,調音点と調音法が同じであるのにもかかわらず,もしも音が違うように聞こえたら,今度は「有気」か「無気」か,あるいは「有声」かを観察しなければなりません。例えば,日本語の「タ」と「ダ」の差,「パ」と「バ」の区別が,これに該当します。 ここで,調音点・調音法・有気。無気・有声の観点から,台湾語の子音を表にして整理しましょう。台湾語の子音は,17個の記号で表記されます。そしてこれらの子音を調音点によって分類すると,5種類に分けられます。また,調音法によって分類しても,5種類になります。 次に,子音の発音を,日本語の要領で説明します。
備考 : 台湾語のchi,chuは,それぞれ日本語のチ,ツに近い。しかし,台湾語のchは更に他の母音との組み合わせが可能。
3.声調 声調とは音の高さの変化の有様であり,台湾語の発音においては,重要な要素の一つでもあります。なぜ重要かと言うと,変化の様態が違うと意味が異なるからです。例えば,日本語の「ベー」を上がり調子で言うと台湾語の「迷う」と言う意味になり,高い音から下がり口調で言うと台湾語の「馬」と言う意味になってしまいます。従って,台湾語を勉強する時は,この声調を無視する訳にはいきません。そこでまず,促音母音を含まない音節の声調を説明します。
次に,促音母音を含む音節の声調を説明します。
第4声の声調記号は,第一声と同じく無記号ですが,両者の区別の仕方は次の通りです。第四声の場合,音節の最後に(p,t,k,h)の何れかの子音が必ず付いています。つまり,無記号で音節の最後がこれらの4つの子音以外の場合は,すべて第一声です。 それぞれの声調を図示すると,下図のようになります。 4.転調 【4−1 転調とは】 漢字が,それ本来の声調を捨てて,他の声調で発音される現象を転調と言います。 【4−2 どんな時,転調が生じるか】 一字が一語の場合には,転調しませんが,二次以上の単語の場合,最後の漢字以外はすべて転調します。また,単語と単語が構造上固く結ばれている場合にも,最後の漢字以外はすべて転調します。 【4−3 転調の法則】 第一声と第五声が第七声,第七声が第三声に転調します。第三声が第二声に,第二声が第一声に転調します。但し,台北では第五声が第三声に転調する傾向がありますので注意して下さい。 -h以外の促音母音を含んだ音節の場合は,第四声が第八声に,第八声が第四声に転調します。 -hの促音母音を含んだ音節の場合は,第四声が第二声に,第八声が第三声に転調します。 すべてまとめて一つに図に示すと以下のようにまとめられます。 【4−3−1】 既に述べた一般転調の他に,特殊な「仔 á 前転調」があり,次の点が異なります。それは,“仔 á ”の前の漢字が第三声である場合,第二声に転調するのではなく第一声に転調し,第七声であれば転調はしないのです。 【4−3−2】 “仔 á ”に関しては,更にリエゾンについて述べておかなければなりません。“仔 á ”の前の音節が鼻母音“-m, -n, -ng”である場合,“仔 á ”は“má, ná, ngá”と発音されます。また,“仔 á ”の前の音節が促音母音“-p,-t,-k”である場合には“-bá, -lá, -gá”と発音されます。 |