都内170カ所で放射線量を測ってみた
【政治・経済】
2011年6月17日 掲載
日刊ゲンダイ本誌が独自調査 弟1弾
●最高値は有明の2.91マイクロシーベルト
福島第1原発事故から3カ月余り。ついに、佐賀県唐津市内で採取した松葉から微量の放射性物質セシウムが検出された。県の環境センターは福島原発事故の影響とみているという。
予想をはるかに超えて、放射能は広がっている。となると、東京都はどうなのか。15日になってようやく、都は本格的な放射線量の測定を始めたが、日刊ゲンダイ本紙はそれに先立ち、23区内の200カ所以上で放射線量を測ってみた。
調査は今月12、13日。ガイガーカウンターを持ち、被災地取材も経験している取材記者3人と日刊ゲンダイ本紙編集部で一斉調査し、データを集計。その後、それぞれのガイガーカウンターで同じラジウムボールの線量を測り、誤差を修正して、表にまとめた。似たような値で場所が近い場合は削除し、最終的に170カ所のデータにした。
測定にあたりルールを統一するため、元立教大学理学部教授の佐々木研一氏にアドバイスを求めた。
「地表と1メートルの2地点で測定するのが一般的です。ちなみに、地表と1メートル地点の数値が2倍程度の違いであれば、その土地は均一に汚染されている。5倍程度違うようであれば、その場所の直下が汚染されていると考えられます。測定は、ひとつの場所でまず1分かざし、その後3分間で出た最高値、最低値、一番頻繁に出た数値から平均値を出すといいでしょう。普通に生活しているうえで被曝(ひばく)する可能性のある場所と、放射線量が集まりやすい場所を調べます。ポイントは、庭などの排水溝の出入り口、雨樋(あまどい)の最初に地面に触れるところ、道路であれば側溝。泥は乾いているほうがより事実に近い数字が出ます。また、公園の水のたまり場、粘土質が見えるところも測るべきです」
今回の調査方法と場所の選定は、このアドバイスに沿った。
●ホットスポットがあちこちに
さて、表を見ていただきたい。都内でも放射線量が高いのが葛飾区だ。水元公園では地上1メートルで毎時0.30マイクロシーベルト前後。東屋下の縁石では毎時0.74マイクロシーベルト。金町浄水場脇の民家の庭から車道側溝に水を流している排水口では、1.41マイクロシーベルトを記録した。
葛飾区役所は、区内数カ所の公園で地上1メートル付近の放射線量を測定。「毎時0.12~0.28マイクロシーベルトで健康に影響を与えるレベルではない」と“安全宣言”を出しているが、実際には、区の発表の最大20倍の放射線を放出する土があるのだ。
こうしたホットスポットは測ってみなければ分からない。ただちに健康に影響が出る値ではないにせよ、その値を知っておくことは大事だ。
「それなのに、保育園などで測定を拒否するところも目立ちました。江戸川区では春江第2児童公園の植え込み下の地面では毎時1マイクロシーベルト前後を記録。すぐ前にある区立保育園が心配になりましたが、区の許可がないと対応できないとかで、門前払い。記者の名刺すら受け取らなかった。江東区の有明コロシアム敷地内の排水パイプ下では、今回の調査で最大となる毎時2.91マイクロシーベルトを記録した。パイプに割れ目があったので、放射性物質を含んだ雨水が地面に直接流れたのでしょうか」(江東、江戸川、葛飾区などを担当したフリーライター・藤倉善郎氏)
文京、足立、荒川区などを担当したフリーライター・渋井哲也氏はこう総括した。
「地表上でもっとも高かったのは、足立区足立2丁目の民家。地上1メートルでは、0.12マイクロシーベルトだったのに、0メートルでは2マイクロシーベルトを超えて驚きました。荒川区の児童館近くの側溝も空間線量との差がハッキリ出ました。地上1メートルでは0.1マイクロシーベルトだったのに、地表では0.57マイクロシーベルト。子どもが遊ぶポイントだけに、今後も継続調査したい」
●文科省のデータよりも大きい数値続出
こうした地域と比較して、放射線量が低かったのが練馬、中野、杉並などの西部地区だ。
「西部の放射線量の数値は0.1~0.16マイクロシーベルトで全体的に低かった」(フリーライター・西牟田靖氏)
文部科学省は毎日、新宿区のデータを発表している。平均0.06マイクロシーベルト前後だが、実際はそれより多いところが大半なのだ。日刊ゲンダイ本紙は今後、調査を継続する。今回測れなかった郊外も測ってみたい。読者の情報もお待ちしています。
福島第1原発事故から3カ月余り。ついに、佐賀県唐津市内で採取した松葉から微量の放射性物質セシウムが検出された。県の環境センターは福島原発事故の影響とみているという。
予想をはるかに超えて、放射能は広がっている。となると、東京都はどうなのか。15日になってようやく、都は本格的な放射線量の測定を始めたが、日刊ゲンダイ本紙はそれに先立ち、23区内の200カ所以上で放射線量を測ってみた。
調査は今月12、13日。ガイガーカウンターを持ち、被災地取材も経験している取材記者3人と日刊ゲンダイ本紙編集部で一斉調査し、データを集計。その後、それぞれのガイガーカウンターで同じラジウムボールの線量を測り、誤差を修正して、表にまとめた。似たような値で場所が近い場合は削除し、最終的に170カ所のデータにした。
測定にあたりルールを統一するため、元立教大学理学部教授の佐々木研一氏にアドバイスを求めた。
「地表と1メートルの2地点で測定するのが一般的です。ちなみに、地表と1メートル地点の数値が2倍程度の違いであれば、その土地は均一に汚染されている。5倍程度違うようであれば、その場所の直下が汚染されていると考えられます。測定は、ひとつの場所でまず1分かざし、その後3分間で出た最高値、最低値、一番頻繁に出た数値から平均値を出すといいでしょう。普通に生活しているうえで被曝(ひばく)する可能性のある場所と、放射線量が集まりやすい場所を調べます。ポイントは、庭などの排水溝の出入り口、雨樋(あまどい)の最初に地面に触れるところ、道路であれば側溝。泥は乾いているほうがより事実に近い数字が出ます。また、公園の水のたまり場、粘土質が見えるところも測るべきです」
今回の調査方法と場所の選定は、このアドバイスに沿った。
●ホットスポットがあちこちに
さて、表を見ていただきたい。都内でも放射線量が高いのが葛飾区だ。水元公園では地上1メートルで毎時0.30マイクロシーベルト前後。東屋下の縁石では毎時0.74マイクロシーベルト。金町浄水場脇の民家の庭から車道側溝に水を流している排水口では、1.41マイクロシーベルトを記録した。
葛飾区役所は、区内数カ所の公園で地上1メートル付近の放射線量を測定。「毎時0.12~0.28マイクロシーベルトで健康に影響を与えるレベルではない」と“安全宣言”を出しているが、実際には、区の発表の最大20倍の放射線を放出する土があるのだ。
こうしたホットスポットは測ってみなければ分からない。ただちに健康に影響が出る値ではないにせよ、その値を知っておくことは大事だ。
「それなのに、保育園などで測定を拒否するところも目立ちました。江戸川区では春江第2児童公園の植え込み下の地面では毎時1マイクロシーベルト前後を記録。すぐ前にある区立保育園が心配になりましたが、区の許可がないと対応できないとかで、門前払い。記者の名刺すら受け取らなかった。江東区の有明コロシアム敷地内の排水パイプ下では、今回の調査で最大となる毎時2.91マイクロシーベルトを記録した。パイプに割れ目があったので、放射性物質を含んだ雨水が地面に直接流れたのでしょうか」(江東、江戸川、葛飾区などを担当したフリーライター・藤倉善郎氏)
文京、足立、荒川区などを担当したフリーライター・渋井哲也氏はこう総括した。
「地表上でもっとも高かったのは、足立区足立2丁目の民家。地上1メートルでは、0.12マイクロシーベルトだったのに、0メートルでは2マイクロシーベルトを超えて驚きました。荒川区の児童館近くの側溝も空間線量との差がハッキリ出ました。地上1メートルでは0.1マイクロシーベルトだったのに、地表では0.57マイクロシーベルト。子どもが遊ぶポイントだけに、今後も継続調査したい」
●文科省のデータよりも大きい数値続出
こうした地域と比較して、放射線量が低かったのが練馬、中野、杉並などの西部地区だ。
「西部の放射線量の数値は0.1~0.16マイクロシーベルトで全体的に低かった」(フリーライター・西牟田靖氏)
文部科学省は毎日、新宿区のデータを発表している。平均0.06マイクロシーベルト前後だが、実際はそれより多いところが大半なのだ。日刊ゲンダイ本紙は今後、調査を継続する。今回測れなかった郊外も測ってみたい。読者の情報もお待ちしています。